「大雨が降りやすい時間帯」について、時間帯に注目した豪雨の傾向とその原因を、「線状降水帯」という言葉の名付け親の研究者に聞きました。

今年発表された、論文「Interannual and Diurnal Variations in the Frequency of Heavy Rainfall Events in the Kyushu Area, Western Japan during the Rainy Season​」。九州の豪雨について書かれたものです。

著者は、気象庁の研究機関「気象研究所」の加藤輝之(かとう てるゆき)さん。注目したのは、豪雨が発生する時間帯でした。

気象研究所 加藤輝之さん

気象研究所 台風・災害気象研究部 加藤輝之部長(豪雨は)明け方から朝にかけて多い。午後の時間帯に比べると2倍以上、発生頻度が多い結果となっている」

アメダスのデータを使って加藤さんが分析した、梅雨時期の集中豪雨の発生頻度を見ると、九州では午前4時から9時の時間帯に集中豪雨の発生頻度が特に多いことがわかりました。

2020年7月の豪雨も、猛烈な雨が観測されたのは午前3時から8時ごろにかけてでした。

自宅が浸水被害「水位が5時半ぐらいから急激にあがった」

さらに、2012年の九州北部豪雨や、2003年の水俣土石流災害も雨のピークは「未明~朝」でした。なぜ、この時間帯なのか。

2つの要因 “上空の気温”と“南寄りの風”

その原因の1つとされているのが、「①夜間に上空が冷えること」。太陽の熱が届かなくなり、雲の上の部分が冷えることで、大気の状態が不安定になります。

ただ、これだけが原因であれば、全国どこでも当てはまることになります。

しかし、この時間帯に豪雨が多いのは、九州特有の傾向で、そこには九州ならではの理由があると加藤さんはいいます。

加藤さん「あと1つは②東シナ海の南よりの風が、夜間から朝方にかけて強くなる

(イメージ図)暖かく湿った空気が上昇し、次々と雨雲が発生

東シナ海からの風が強まるため、湿った空気が九州に流れ込み次々と雨雲が発達。その結果、線状降水帯の発生や豪雨につながるということです。

雨雲のもとになる水蒸気の量は、地球温暖化で増加していると考えられ、近年、九州では豪雨が増えていることも明らかになりました。

加藤さん「ここ47年間で集中豪雨が約2倍に増えている。梅雨期の朝方に限定すると7.5倍。特に朝方に集中豪雨が増えている傾向があることがわかりました。7.5倍は、私も驚きの数字です」

未明から朝に多い豪雨。予報の現場でも特に警戒している時間帯です。

そして気象台がもう1つ注目したのが夜の時間。

“非常に激しい雨”は寝ている間に

熊本地方気象台 宮田浩リスクコミュニケーション推進官「(夜に)雨が弱まっていたから安心して休むと、夜中に非常に強い雨音や雷の音で目を覚ました経験がある方も多いのでは」

熊本地方気象台が過去48年間の県内のアメダスのデータを集計し、梅雨時期に1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨が降った回数を時間別に見ると、発生回数が多いのは、午前0時から8時ごろ。一方、就寝時間にあたる午後10時、11時ごろは少ない傾向となりました。

気象台は明るい時間帯の避難を呼びかけています。

宮田さん「寝ている間に雨が強まって危険度が高まる。危険が高まったことに気づくのが遅れることがある。やはり明るいうちに避難するのが大切です」

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