大地震発生時などに都道府県が設置する災害対策本部で意思決定に関わる女性職員の割合が、全国平均で10.0%にとどまっていることが、内閣府男女共同参画局の昨年12月末時点の調査で分かった。最も高かったのは群馬県の38.1%で、埼玉、茨城両県を含む11道府県は女性が1人もいなかった。災害対応が依然、男性中心となっている状況が浮かぶ。(奥野斐、梅野光春)

 防災業務への女性参画 2011年の東日本大震災の避難所で、生理用品の不足やプライバシー確保の課題などが顕在化し、国は13年、防災業務への女性参画を促す指針を自治体向けに示した。16年の熊本地震などでも課題となり、国は20年に「災害対応力を強化する女性の視点」のガイドラインを策定。多様なニーズやリスクに対応するため、災害時の意思決定や避難所の運営管理などに女性の視点を入れるよう求めている。

◆38.1%でトップの群馬 県の部長級は女性が4割超を占める

 都道府県の災害対策本部は、知事を本部長とし、幹部職員らで構成する。内閣府は2021年から自治体の防災分野の女性参画の状況を調査しており、今回初めて災害対策本部の女性職員の割合も調べた。  トップの群馬県は、部長級の女性割合が4割を超えており、担当者は取材に「必然的に災害対策本部員の女性割合も高くなっている」と説明した。2位は千葉県(26.7%)、3位は滋賀県(25.0%)だった。このほか関東1都6県では、東京都14.3%、神奈川県13.3%、栃木県12.5%となっている。  災害時の意思決定だけでなく、現場で対応する職員も女性の割合が低いままだ。避難所運営や備蓄を担当する防災・危機管理部局の女性職員割合は、都道府県と市区町村の平均値がいずれも1割強にとどまる。防災担当職員に「女性ゼロ」の自治体は全国997市区町村(57.4%)に上った。

埼玉県で1月、首都直下地震を想定して行われた訓練で、災害対策本部に集まった職員(写真は記事とは直接関係ありません)

 都道府県や市区町村ごとに設置され、災害を見越した地域防災計画づくりなどを担う「地方防災会議」の女性委員割合も、一部を除き低調だ。政府は「2025年までに30%を目指す」とするが、都道府県の防災会議で30%を上回ったのは徳島県(50.6%)や埼玉県(30.6%)など計7県だけで、全国平均は22.2%だった。  ただ、全47都道府県が「女性委員を増やそうと取り組んでいる」と回答。学識経験者の委員に女性を積極的に登用する、職位にかかわらず女性職員を任命するなどしているという。

◆内閣府「意思決定の場に女性が参画することが重要」

 プライバシーに配慮した避難所運営や生理用品の備蓄など、防災には女性らの視点も欠かせない。内閣府の担当者は「発災後の多様なニーズに対応するためにも、意思決定の場に女性が参画することが重要。好事例を収集、紹介するなどして自治体の取り組みを後押ししたい」と話す。  これらの状況を広く知ってもらおうと、内閣府は新たに、都道府県別の調査結果を地図で表した「見える化マップ」を、男女共同参画局ホームページで公開。「今後、能登半島地震の対応状況も調べるなどし、防災分野への女性参画拡大を進めたい」としている。 

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