◆地元自治体「早く情報提供してほしい」
昨年1月に漏出したPFAS汚染水=米軍横田基地
この事故は東京新聞が米軍の内部文書を入手して昨年11月に報じ、地元自治体が防衛省に事実関係を問い合わせていた。基地が所在する福生市の担当者は「事実関係を確認することができないので、早く情報を提供してほしい」と話している。 政府関係者によると、日本政府は今年3月、日米合同委員会の下に設置されている「環境分科委員会」の会合で、事故の事実関係が記された資料を米軍側から提供された。資料は関係自治体に伝達する方向で調整していた。◆報道で暴露されたことを問題視
漏出した汚染水の濃度分析結果を示す米軍内部資料。PFOSとPFOAの合計は264万ナノグラムとされ、暫定指針値の約5万3000倍に当たる=由木直子撮影
ところがその後6月に開かれた分科委の会合で、日米の関係機関は事故を公表しない方針で合意した。米側は事故が報道で表沙汰になった経緯を問題視し、「不正に入手された情報に、公式に情報を出すのは間違っている」と理由を説明、日本政府側は受け入れたという。 この事故を巡っては、報道を受け、都と基地周辺自治体でつくる連絡協議会が、防衛省に事実関係を照会。防衛省は「米側への確認作業を進めている」などと回答している。 政府関係者は「基地が汚染源との疑いが強まっており、事故の事実を公表して大ごとになることを避けたいのではないか」と指摘する。◆防衛省「やりとりは原則非公開」
米軍基地の環境汚染問題については、日米地位協定の環境補足協定(2015年締結)に基づき、日本政府と米側が、有害物質の漏えいなどの情報を相互に提供することに努めることを規定する。ただ、日本政府が米軍から得た情報を地元自治体に説明する義務は定められていない。 日米地位協定に詳しい琉球大の山本章子准教授(日米関係史)は「日本政府は事故の公表方針を米軍の判断に委ねている」と批判。その上で、日本側が定期的に米軍基地内の環境調査を行うべきだとし、「環境汚染や漏出事故の情報を地元自治体に伝える仕組みを整備するべきだ」と強調した。 在日米軍は本紙の取材に対して「軍関係者、その家族、そして周辺住民の健康を守るために尽力している」と答え、公表の事実関係への回答は避けた。防衛省の担当者は「日米合同委員会でのやりとりは合意がない限り原則非公開なため答えられない。(漏出事故の交渉については)日米間でさまざまな場で協議をしている」とした。2023年1月の漏出事故 2023年1月25、26日に基地内のショッピングモールの物販搬入口で発生。地下水や河川の国内の暫定指針値の5万3000倍にあたる濃度のPFASが含まれた汚染水約760リットルがコンクリートの地面などに漏出。米軍は、基地外へとつながる福生市の排出口をふさぎ、地面上の汚染水は拭き取ったため「基地外への流出はなかった」と防衛省に説明しているという。一方、同基地では2010〜22年にも7件の漏出事故があったことが、明らかになっている。この7件は米側は防衛省に情報提供し、同省が地元自治体に説明。ただ、一部事故について同省は提供を受けてから4年半放置するなどしていたことが2023年7月に判明し、地元から批判を浴びた。
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