連日、危険な暑さとなる中、各地の海水浴場では「海開き」が行われています。一方、夏本番を前に閉鎖される海水浴場もあるようです。一体、何が起きているのでしょうか。
■海開きも「みんな出てこない」
週末には各地の海水浴場で「海開き」が行われ、水遊びを楽しむ人たちでにぎわいました。
広島県尾道市の「瀬戸田サンセットビーチ」でも、待ちに待った海開き。子どもたちは勢いよく海にダイブしていました。
子ども
「冷たかった~!」
「冷たくて気持ちいい!」
夏らしい陽気に盛り上がっていますが、神奈川県藤沢市の「片瀬東浜海水浴場」では異変が。平日の月曜日とはいえ、あまりにも人が少なすぎます。海の家で話を聞くと…
えのしまキッチン 中村雅裕さん
「暑いとみんな出てこない」
えのしまキッチン 中村則子さん
「(午後)2時か3時くらいから増えてくる、夕方に」
なんと、暑すぎてお客さんの出足が鈍いというのです。このままの状況が続くと、売り上げに影響してしまうといいます。
■新型コロナ→人員不足→経費不足 今年も開設できず
こうした“海水浴場の異変”は各地で発生しています。
鳥取市にある「白兎海水浴場」は、これまでは新型コロナで開設中止、2023年は人員不足でオープンできず。今年は人員が確保でき開設しますが…
白兎観光協会 和田俊彦 会長
「小屋を建てるのにも経費が随分かかることがあって、その辺が大きな原因です」
2024年は休憩所や海の家の設置を中止。飲食についてはキッチンカーの営業を呼びかけました。
千葉県勝浦市の「勝浦中央海水浴場」では…
記者
「砂浜に目を向けると、間もなく海開きといった様子はうかがえません」
勝浦市 観光商工課 渡邉友人 観光係長
「今年度、この海水浴場を開設しないことを決定しました。海水浴場の開設には様々な費用がかかりまして、そういったものの上昇が続いており、勝浦市としては一部開設しないという事を考えました」
物価高や人件費の上昇などの影響で、開設しないことを決めたといいます。
記者
「今年(海開き)しないんです」
男性
「え!?今年(海開き)しないんですか?来年に期待しています」
海水浴場は開設しないものの、7月11日から水上アスレチックがオープンするということです。
様々な理由で海水浴場が閉鎖される現象は広がっています。
■砂浜浸食で中止に 護岸工事もやめられない
井上貴博キャスター:
各地で海開きが進み賑わいを見せるはずですが、中止せざるを得ない場所もあるようです。
茨城県鉾田市の「大竹海岸鉾田海水浴場」は、砂浜の浸食を理由に海開きの中止を決めました。
砂浜の砂は、基本的には川から流れ出た土砂などが行き着いて、砂が蓄積することで砂浜になるという構造ですが、「大竹海岸鉾田海水浴場」付近では都市開発で港が作られ、砂の移動の妨げになってしまっているということです。
砂が海水浴場まで流れ着かず、波の浸食でどんどん削られてしまい危険性があるため中止となったといいます。
護岸工事は治水対策として必要なのでやめることができない状況だそうです。
■護岸ブロックが剥き出しに どこまで浸食?
齋藤慎太郎キャスター:
茨城県鉾田市の「大竹海岸鉾田海水浴場」に来ています。
本来、護岸ブロックの3段目まで砂があったそうです。数年前からの浸食、2024年4月以降に拡大した浸食によって、護岸ブロックが剥き出しの状態です。
ブロック穴に砂が埋まっていたはずですがその砂もなく、地面を固めていたはずの砂もなくなって、護岸ブロックが不安定な状態になってしまっています。
ブロックの穴は深いところで約1mあり、小さな子どもが入ってしまうと危ないということで規制線が張られています。
2019年5月と2024年6月の海岸を比べると、2019年は砂浜の部分が広く、2024年は護岸ブロックが剥き出しになってしまっているのが分かります。6月に比べて少し砂が戻ってきているそうですが、砂の量は足りないため、海開きは中止となったということです。
茨城県は対策を練っているそうですが、具体的な解決策には達していないということです。
井上キャスター:
海岸の奥まで続いているとなると、砂を搬入するにも途方もない作業量ですね。
齋藤慎太郎キャスター:
海岸が広いので、非常に大変になるのではないかと思います。
■30年後には16%の砂が消滅か 「自然の力」に打つ手なし?
井上キャスター:
ほかにも海開きが中止になっている場所があります。
【各地で海開き中止】
・飯岡海水浴場:監視員不足
・堀川海水浴場:海岸浸食
・木戸浜海水浴場:海底が凸凹
・勝浦中央海水浴場:物価高
・津浜海水浴場:監視員不足
・猿島海水浴場:海岸浸食
自然要因の海水浴場もありますが、監視員不足(人件費不足)で、危険性が高まるということで実施できない場所もあります。
様々な機材のリース代などで赤字が決定してしまうため、やむなく中止というところもあるそうです。
ホラン千秋キャスター:
物理的に海に入ることは可能だが、安全ではないということでしょうか。
井上キャスター:
自治体側は「基本的には危ないので行かないでほしい」としています。水の事故の危険性があり、監視員がいないと危ないということです。
ホランキャスター:
憩いの場やスポーツの場が様々な要因でなくなってしまうのは寂しいことですね。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
寂しいですね。ただ、日本に限った話ではなく、「ネイチャー誌」の研究では、全世界の砂浜の約25%が毎年0.5mずつ侵食しているそうです。このままだと30年後には16%が消滅してしまうということです。
地域の経済や観光のためにも、各政府が予算をかけて何とかしようとしていますが、こればかりは「自然の力」で、お金で解決する問題ではありません。なかなか打つ手はないかもしれません。
井上キャスター:
都市開発をやめることもできないので、全世界でそういう状況が進んでいくかもしれません。
■「苦渋の決断」 暑さ指数31以上で祭り中止も
井上キャスター:
夏の風物詩・祭りにも変化が起きています。
千葉県成田市の「成田山新勝寺」では、7月5日~7日に「成田祇園祭」が開催されました。毎年45万人が訪れるといいます。
山車・屋台が大本堂に集結して、町内や表参道に繰り出すという圧巻の祭りですが、7月5日には最高気温33.1℃で、熱中症警戒アラートが出たことから、一部の山車・屋台を引き回すルートを短縮して、実施する方針を取りました。
新潟県三条市の「三条夏まつり」では、子どもを中心とした「凧ばやし踊り」が7月26日に行われる予定ですが、「暑さ指数」で開催を判断するということです。
「暑さ指数」は気象庁など各機関で発表されており、気温だけではなく、湿度なども勘案されています。25以上28未満で「警戒」、28以上31未満で「厳重警戒」、31以上で「危険」とされています。
開催2日前にこの数値に達した場合、中止の判断を行うということです。
三条商工会議所の担当者は「子どものためにも開催してやりたいが、安全第一なので苦渋の決断です」としています。
ホランキャスター:
文化の存続にも、暑さが大きく関わってくるのかと感じます。
ハロルド・ジョージ・メイさん:
夏祭りを秋祭りにするなども考えるべきかもしれません。
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<プロフィール>
ハロルド・ジョージ・メイさん
プロ経営者 1963年オランダ生まれ
現パナソニック、アース製薬の社外取締役など
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