2022年7月8日。参議院選挙の投開票の2日前のことだった。奈良県の大和西大寺駅前で、安倍晋三元総理が銃撃された事件を巡っては警護体制の不備が指摘されてきたが、当時の警護体制について記された警察庁の報告書を基に、同年12月にMBSは、独自で実写とCGを組み合わせて当時の様子を再現・検証した。事件からきょうで2年。当時の記事をまとめなおす。

2022年7月8日。多くの支援者らが集まる中、安倍元総理が演説を行っていた。その時だった。2回の爆音が響き渡り、安倍元総理はその場に倒れた。

警察庁の報告書を基に警護員と男の動きを検証

 一体なぜ演説中に銃撃されるという事態は起きたのか。事件から1か月後、警察庁は当時の警護体制についての検証結果をまとめた。
 【警察庁の報告書より】
 『本件遊説場所の南側に警護上の危険があることは明らかであった』
 『警護計画には明らかな不備があった』

 警察庁の報告書には、現場にいた警護員らがどのように警戒にあたっていたのかが、秒単位で記されていた。

取材班は、警察庁の報告書を基に、当時、安倍元総理の周囲にいた警護員6人の動きと、山上被告の動きをリスト化した。

午前11時28分42秒、安倍元総理が演台に登壇。午前11時31分5秒、山上容疑者が銃口を演台上の安倍元総理に向けた。わずか数分の間に何が起きていたのか。

警察官4人と山上被告の動きをCGで再現

 取材班は安倍元総理の最も近くで警護していた警察官4人と山上容疑者の当時の動きをCGで再現した。


 午前11時23分25秒、安倍元総理が登壇する前、候補者の演説が始まった。

 周囲には警護員らが警戒に当たり、演台の周辺には選挙関係者の姿があった。

 そして午前11時26分、ガードレールの外で南側を警戒していた警護員Cが、警護員Aからの指示を受けてガードレールの内側に移動している。

 この時、山上被告は南側のバス停付近で拍手などして様子を伺っていた。

 こうした人員の配置について警察庁の報告書には次のように書かれていた。

 【警察庁の報告書より】
 『警護員Cが県道上を通行する車両と接触する危険を防止するため、ガードレールの内側に移動するよう指示した』
 『遊説場所の南方向への警戒は不十分となった』

 南方向、後方への警戒が手薄のまま、安倍元総理の演説が始まっていたのだ。

現場にいた人たちの証言「銃声とは気付かなかった」

 当時、この場所にいた女性が動画を撮影していた。動画には、安倍元総理が現場に到着し、警護員に先導されながら聴衆に手を降る様子などが映っている。

 (当時現場で動画を撮影した女性)「すごい違和感でしたね。こんなところでされるのかなと思って。ここも車通りましたし、ここ渡る人もいましたし。厳重に守られているという感じはしなかったです」

 後方から接近して銃撃した山上徹也被告。その手に握られていたのは自ら作ったという銃だった。事件があったその日に警察は山上被告の自宅を家宅捜索。ワンルームの部屋からは少なくとも5丁の銃と火薬などが押収されている。捜査員らはその異様な光景から『武器庫』と呼んだ。

至近にいた人たちは証言した

 当時、安倍元総理の真後ろにいた自民党奈良市支部の青年局長・櫻井大輔さんは、あの瞬間について取材にこう話している。

 (安倍元総理の後ろにいた櫻井大輔さん)
 「破裂したような音が鳴って、前がピカッと光って煙が出たような状態だったので、最初何かが破裂したのかなと思って。何か破裂したなら飛んで来たら危ないと思って僕はかがんだんですけど。(Qそれが銃だとは気付かなかった?)思わなかったですね」

 当時、聴衆の中で演説を聞き、事件直後には救命措置を呼びかけた奈良県天理市の並河健市長も「銃声とは気付かなかった」と話す。

 (奈良県天理市 並河健市長)
 「立て続けにまた爆発音がありましたので、これは異変だということで駆け寄っていきましたら、安倍元総理が倒れていらっしゃった。そして容疑者が取り押さえられていて、そこに手製の散弾銃が転がっているのを見ましたので、それで安倍元総理が銃撃されたのだとわかりました」

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