形や大きさが基準を満たさないだけで廃棄されている「規格外」の農産物。「規格外」とされた素材から新しい魅力を引き出し、農家と地域を支えている様々な取り組みに迫ります。

【住吉光アナウンサー(以下:住)】長崎の暮らし経済ウイークリーオピニオン。今回のテーマは「食品ロスを防ごう!~規格外農水産物の活用~」です。平家達史NBC論説委員(以下:平)とお伝えします。
【平】よろしくお願いします。

【住】改めて、「規格外」とはどういう状態のものでしょうか。
【平】スーパーなどで見かける野菜や果物などは、形や大きさが整っていますよね。野菜や果物には、大きさ・形・色などについて定められた規格があり、それを満たさないものは流通しません。
例えば、表面に傷がついている、形がいびつ・大きすぎる・小さすぎる、色ムラがある、といったものです。

【住】そうした規格外のものはどのくらいあるのでしょうか?
【平】昨年の全国の野菜の収穫量と出荷量を比較すると、春野菜で6.3%、夏秋野菜で11.9%、たまねぎは8.3%が収穫されたのに出荷されていません。県産の春植えのばれいしょは、12.8%が出荷されていません。

【住】規格外の農産物の活用方法はないのでしょうか。
【平】規格外の農産物を使った商品を販売する県内の店を取材しました。

■愛され規格外!1日3千個売れるコロッケ

規格外のじゃがいもを使った「コロッケ」が、大人気となっている直売所があります。今年20周年を迎える長崎県諫早市飯盛町の直売所「フレッシュ251」。農家から規格外の農産物を買取り加工して販売しています。

フレッシュ251杉内エリカさん:
「少しコブができていたり、割れていたり、大きすぎたり小さすぎたり、そういったものが規格外になります。地元の人たちに地元の野菜を食べてもらうことを一番の目的に使っています」

規格外のじゃがいもは形や大きさがバラバラです。皮むきは機械でできず、全て手作業で手間がかかります。

しかし店にとっては比較的安く仕入れることができ、農家にとっては収入につながるメリットがあります。
コロッケにはジャガイモのほかにも規格外の人参や地元産の玉ねぎ、豚肉が使われていて、新鮮な地元野菜をたくさん使ったコロッケは、1日に2千~3千個売れる大人気商品に!

味も、そして1個約92円の値段も大好評で、農家も店も消費者も喜ぶ愛され規格外商品となりました。

お客さん:
「結構買います。ふっくらしててしっかり味もついているので子ども大好きです。規格外とは思えない美味しさです。」
「Qコロッケ好き?ーうん、好き!」

規格外のミニトマトを使ったピューレやドレッシング、焼肉ソースなども販売していて、今後はミニトマトのアイスクリームや酒も作る予定です。

フレッシュ251杉内エリカさん:
「農家の方が潤っていないと地域も潤わないと思うので、少しでも役に立てればいいかなと思っています」

■首都圏でも大人気!規格外の「ドライフルーツ」

規格外の果物などを使ったドライフルーツで人気を集めている店もあります。長崎県諫早市にある「はってん堂」は2018年から低温で乾燥させる《ヒートドライ製法》で素材の色や味を活かしたドライフルーツを製造販売しています。

ONIZUKA鬼塚利洋代表取締役:
「農家の思いを背負って責任を持って売っています。無駄にしないということです。」

はってん堂は、これまで首都圏の有名ホテルや全国の物産展でドライフルーツの味を届けてきましたが、地元の人にも楽しんでもらおうと、古民家レストランを構えることになりました。
レストランでは規格外を含む9割以上県産の食材を使った料理を提供する予定です。

ONIZUKA 鬼塚利洋代表取締役:
「規格外でも美味しいことを伝えたい。全く味は一緒ですから、大事に食べていきたいです。」

【住】規格外と規格内の農産物は味は変わらないですし有効活用したいですよね。
【平】そうですね。規格外のものが安値で出回れば規格を満たしたものの価格が低下するという懸念が指摘されていますが、規格外の活用は食品ロスの削減だけでなく、食料自給率の向上や農家の収入アップにもつながります。農家自らが規格外のものを商品化して成功している例もあります。

■甘~い人参「紅天神」!変形しやすいから考え出した商品は…

諫早市天神町で20年以上、人参の栽培を手がけている滝商店です。
2018年から通常の人参より、糖度が2度以上高く赤い色素が豊富な品種「紅天神」を育てていますが、栽培が難しいと言います。

滝商店 滝遥貴さん:
「普通の人参に比べると少し芽が出づらい、そして変形しやすいので2~3割が規格外になってしまいます。形が曲がったりだとか、股が出来たりだとか」

大量の規格外の「紅天神」を有効に活用できないか?滝さんは5年前からジュースに加工した販売に挑戦しています。砂糖不使用で「紅天神」そのものの味を楽しめるジュースはネット販売されていて、年間3千本以上売り上げています。

滝商店 滝遥貴さん:
「ジュースを飲んで美味しいなと思うことから『紅天神』そもそもの野菜に興味を持ってもらえたら嬉しいな思います。」

【住】こちらがドライフルーツと、紅天神ジュースですね。
では、ジュースをいただきます。…甘い!

【平】農産物だけでなく、水産物の規格外の活用も進んでいます。
佐世保市魚市場では、2年前から規格外の魚を下処理した上で冷凍し、関東・関西の会社を通じて全国の消費者に届けています。

2006年にオープンした佐世保市の「もったいない食堂」では、魚市場から規格外の魚が入荷した際には定食として提供しています。

【住】売れ残りや食べ残しといった面の食品ロスについては、何か対策はあるのでしょうか。
【平】県民1人当たりの食品ロス発生量は、1日108gです。

これはコンビニのおにぎり1個分や、プリン1個分の重さに相当します。
日本では2019年10月に「食品ロスの削減の推進に関する法律」が施行され、県でも3年前に「長崎県食品ロス削減推進計画」を策定し、5か年計画で、食品ロスの削減をめざしています。

県県民生活環境部資源循環推進課 廣瀬菜緒主事:
「令和7年度までに県民1人1日あたりの食品ロスの発生量を98グラムにすることを目標としてます。買い物に行ったときに買いすぎない、料理を作りすぎない、何より食べ残さない。簡単なところから生活の中で少し気を付けてもらえれば変わってくる思います。意識してもらえるよう県としても取り組んでいきたい。」

【住】私たちが普段の生活で取り組めることはあるのでしょうか。
【平】はい。(1)買い物するときは「必要な分だけ買う」、手前に陳列されている商品を買う(2)外食するときは、食べきれる量の注文を心がける(3)料理するときは、葉や茎・皮など捨てていた部分を使ってみる(4)フードドライブ活動に参加するなどできることはたくさんあると思います。

また県では「30(さんまる)・10(いちまる)運動」を推進しています。これは、宴会の乾杯後の30分と終了前の10分は自分の席で食事を楽しみましょうということです。
【住】私たちが簡単にすぐに取り組めることはまだまだありそうですね。
【平】農林水産省によりますと、2021年度の食品廃棄物は2,402万トンで、このうち食品ロスは523万トン発生しています。

これには食べ残しなど「家庭から排出されたもの」と、売れ残りや作りすぎなど「食品関連事業者から排出されたもの」があります。
食品ロスの削減は、SDGsの目標の中にも掲げられています。
生産者、事業者、家庭での取り組みを進めて、環境にやさしい長崎になっていくことに期待したいと思います。

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