「著しく正義・公平の理念に反し到底容認できない」。旧優生保護法により不妊手術を強制された人たちが国に賠償を求めた裁判で、最高裁大法廷は旧優生保護法を「憲法違反」とし、国に賠償を命じました。最高裁が統一判断が示したことで、全国で続く同様の裁判に大きな影響を与えることになります。今も裁判で審理が続く女性の思いとは。

■2万5000人が不妊手術「67年間苦しんだ」旧優生保護法は「憲法違反」最高裁

判決後、拍手の中で掲げられたのは「勝訴」の2文字。被害者が長年、待ち続けたものでした。

旧優生保護法のもと、不妊手術を受けた人は約2万5000人。国に賠償を求める裁判が相次ぐなか、そのうちの5つの裁判について、最高裁大法廷が統一判断を示しました。

原告の一人 北三郎さん(仮名・81)
「本当に67年間、苦しんできました。本当に嬉しい」

判決に涙を流して喜ぶ原告の北さん。

裁判の争点のひとつは「除斥期間」と呼ばれる規定を適用するかどうかでした。これは不法行為から20年たつと賠償を求められなくなるというもので、高裁では判断が割れていました。

最高裁大法廷は…

裁判長
「生殖機能の喪失という重大な犠牲を求めており、個人の尊厳と人格の尊重の精神に著しく反する」

裁判官15人全員一致で旧優生保護法を「憲法違反」としたうえで、「除斥期間」は適用しませんでした。

裁判長
「除斥期間の経過により国が賠償を免れることは、著しく正義、公平の理念に反し到底容認することはできない」

判決後、原告の北さんは…

北三郎さん(仮名・81)
「大勢の皆さんに支えられて、きょうは勝訴して、こんなうれしいことはないです」

今回、最高裁の統一判断が示されたことで、全国で続く同様の裁判に大きな影響を与えることになります。

■看護師から「生理がなくなる手術」と言われ子宮摘出 77歳の女性「今も子どもは欲しい」

判決後、勝訴の文字を見つめる女性の目には涙が…

西スミ子さん(77)。旧優生保護法によって大切なものを奪われた一人です。

西さんは今回の裁判の原告ではありません。現在も東京地裁で審理が進められています。

西スミ子さん
「悔しいですね。病気で子宮をとったわけじゃない」

西さんは生後6か月の時に脳性麻痺を患い、肢体不自由の児童のための療育機関に入院。

生理が始まった13歳の時、職員や看護師に責められるようになったといいます。

「また生理なの?」
「自分の生理の始末も嫌なのに、他人の始末はもっと嫌だ」

看護師から「生理がなくなる手術がある」と言われ、子どもを産めなくなるとは知らずに旧優生保護法に基づく子宮摘出の手術を受けました。

被害に気がついたのは、それから10年後。

西スミ子さん
「(子どもは)今も欲しいことは欲しいけど、もう歳も歳だから」

国に責任を認めてもらおうと、損害賠償を求める訴えを起こしました。

西スミ子さん
「私の命、返してほしいです」

3日の判決。仲間の勝利に西さんは「勇気をもらえた」といいます。

ーー西さん自身の裁判に向けてここからスタートですね。

西スミ子さん
「勝とうと…」

■旧優生保護法は「憲法違反」 一方で「優生思想」は過去のものか?

小川彩佳キャスター:
歴史的な判決が出されました。まずはここまで長きに渡って苦しんでこられた方々の戦いに敬意を表したいです。

ただ、法律は過去のものでも果たして「優生思想」は過去のものだろうか?と感じます。障害者施設での痛ましい事件も記憶に新しいですし、SNSがあることで「優生思想」をもとにした発信が、賛同を得て広がっていきます。その度に苦しめられ、傷つく方々がいるわけです。

QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
「優性思想」という言葉を使うと綺麗に聞こえるかもしれませんが、明確な差別です。「命に一切の例外はない」ということを心に留めておかなければなりません。

この判決はすごく画期的ですが、まだまだゴールではありませんので、これからの裁判の行方も注目したいと思います。

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