2021年に静岡県熱海市で発生した土石流災害から、7月3日で3年となりました。遺族らが原因究明を望むなか、責任の所在はいまだ明らかにならず、住民の生活にも課題が残ります。

2021年7月3日、熱海市伊豆山地区で発生した土石流災害では、災害関連死を含む28人が犠牲となり、137棟が被害を受けました。

土石流に起点にあったのは違法な盛り土。規制の3倍以上、約50メートルもの高さに盛られた土砂が崩れ落ち、被害が拡大したとされています。

「被害者の会」会長の瀬下雄史さんは、母親の陽子さん(享年77歳)を亡くしました。発災から3年となる7月3日前日、今は何も残っていない母の自宅跡地に瀬下さんが訪れました。

<被害者の会 瀬下雄史さん>
「やっぱりここからの景色はいいですよね。ここで穏やかな余生を過ごすはずだったのにね。海が見えて初島が見えて最高な景色ですもんね…なんとも言えないですよね」

陽子さんは、夫婦の終の棲家として選んだ伊豆山地区で土石流に巻き込まれました。

<被害者の会 瀬下雄史さん>
「母はごみにまみれて殺されたんだと。それが事実なんだと思っています」

遺族らは、この災害を「人災」だとして、前と現在の土地所有者を刑事告訴。
2021年10月、警察はその現・旧所有者の関係先に強制捜査に入り、その後、違法な盛り土の造成を食い止められなかった熱海市と静岡県にも家宅捜索に踏み切りました。しかし、3年が経った今も、刑事責任は明らかになっていません。
遺族らは現・旧所有者や熱海市・県などに対して損害賠償を求める訴訟も起こし、裁判が続いています。

盛り土があった場所は行政代執行によって防災対策が施され、危険な盛り土は撤去されました。しかし、盛り土の土砂には汚染物質が検出されていて、その処理費用も合わせた代執行の総事業費は約11億円にのぼります。

被災地にも、課題が残ります。
被害に遭った伊豆山地区の復旧復興事業をめぐっては、土石流が流れ下った逢初川の拡幅工事を静岡県が、道路整備を熱海市が手掛けることになっています。しかし、工事のために必要な用地の買収率は、県が58%、市が75%にとどまっていて、整備完了は「2026年度末まで」と、当初の予定より2年遅れる見込みです。

復興後の街の姿が見通せないと、被災地に戻ることをためらう住民も多く、避難した132世帯227人のうち、元の場所で生活を再建したのは、現時点で、わずか22世帯47人となっています。

土石流災害から3年となる7月3日午前、伊豆山地区では追悼式が開かれます。

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