各国が力を入れる月面探査計画。中でも、技術開発のスピードがすさまじいのが中国です。地球から直接は通信電波が届かない月の裏側の探査は難易度が高いのですが、今回、その裏側の土を持ち帰る「サンプル・リターン」を世界で初めて成功させました。それを可能にした方法とは?月探査を巡る米中の覇権争いの現状とは?手作り解説でお伝えします。

■人類“史上初”!月の「裏側」のサンプルを回収 中国の「嫦娥6号」

仙女になって月に昇ったという中国の伝説上の女性=嫦娥(ジョウガ)。

中国は、この嫦娥と名付けた探査機による宇宙開発を2000年代から加速。

今回「嫦娥6号」が月の「裏側」から土壌などを持ち帰ることに成功しました。

月の裏側からのサンプル持ち帰りは史上初。これまでアメリカ、旧ソ連も月のサンプル持ち帰りに成功していますが、いずれもウサギが餅をついている地球から見た「表側」です。

ちなみに日本初の月面着陸成功で今年注目を集めた探査機SLIMも「表側」で、このウサギの耳近くへの着陸でした。

■月の南極付近に「水資源」が存在か 

今回、中国の嫦娥が着陸したのは地球からは見えない月の裏側で、月の南極を含む盆地です。

今回、採取した部分ではありませんが、「南極」周辺では、水資源が氷などの形で存在するのではないかと有望視されており、将来、飲み水や燃料などとして利用できるか、世界各国が高い関心を寄せているのです。

中国は南極付近を「将来の月面基地」の候補地としており、今回の成功を足がかりに、さらなる探査を行う予定です。

■「中継衛星」で電波を届ける

そもそもなぜ、月の裏側に行くことが困難なのか?

カギを握るのは、探査機をコントロールする通信のための「電波」です。

月は、常に同じ面を地球に向けているため、地球からの電波は月の裏側へは直接届けることができません。

では、探査機「嫦娥6号」はどのようにコントロールしたのか。

中国が行ったのが「中継衛星」の打ち上げでした。

地球からの通信を中継するための衛星を事前に打ち上げ、これを経由して月の裏側で活動する嫦娥をコントロール。

世界初のサンプルの回収に繋げたのです。

■加熱する月探査競争 専門家「今回の中国の成果はゲームチェンジャーにもなりうる」

今回、嫦娥6号は、フランスやイタリアなどの観測機器も積んでいて中国は国際協力もアピールしています。

一方、日本が参加しているのはアメリカが主導する「アルテミス計画」。

中国が嫦娥を送り込りこむ月の南極付近へ、2026年に宇宙飛行士を送る予定です。

現状について、大阪大学の寺田健太郎教授は「これまで、月探査はアメリカがリードしてきたが今回の中国の成果はゲームチェンジャーにもなりうる」「中国の開発スピードは目覚ましく、通信などノウハウを他国に先駆けて確立したのは大きい」と指摘。

「資金力を含め日本は、中国に大きく水をあけられた」といいます。

「宇宙強国」を掲げ、軍主導で、宇宙開発を急速に進める中国。

古来、アルテミスや、かぐや姫、うさぎなど、様々な物語がある「月」ですが、今後、米中の覇権争いが激しさを増すことが心配されます。

(サンデーモーニング2024年6月30日放送より)

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