7月3日から20年ぶりに新しい紙幣の発行が始まります。
新しいお札の「顔」は信州とも深いつながりがありました。


東京にある、国立印刷局の工場で次々と刷られていく新しい紙幣。

日本銀行が発行し、松本支店からも7月3日以降、金融機関に引き渡されます。

20年ぶりにリニューアルする最も大きな狙いは「偽造の防止」です。

日銀松本支店発券課長 早川朋宏さん:
「この間、コピー機ですとか印刷技術が大幅に進歩しておりまして、足元で偽造券が増えているというわけではないんですけれど、中長期的にみて偽造抵抗力の高い銀行券を発行するというふうに考えております」


新しい偽造防止技術の一つが3Dのホログラム。

角度を変えると肖像の顔の向きも変わる仕組みで、紙幣への採用は世界初です。


また、中央の肖像の周りにも高精細な透かしを入れることで偽造しにくくしています。

前回、紙幣が新しくなったのは2004年11月。

発行日当日の日銀松本支店では、まだ暗いうちから準備作業が行われました。

金融機関の朝礼でも扱いについて行員に指示を徹底。

そして、早く新しいお札を手にしたいという人たちがさっそく窓口へ。

新紙幣を手にした人:
「すごいきれい、数字が出る」
「おもちゃの紙みたい」

実は、このとき肖像が新しくなったのは5000円札と1000円札。

1万円札の肖像が福沢諭吉になったのは、さらに20年さかのぼって1984年のことでした。

ちなみに、その前の1万円札の肖像は聖徳太子。

1958年、昭和33年に登場しました。


今回、40年ぶりに新たな「1万円札の顔」になるのは渋沢栄一。

現在の埼玉県深谷市の農家に生まれ、栽培した藍を固形にした「藍玉(あいだま)」を売るために、10代半ばから、しばしば東信地方を訪れていました。


渋沢栄一”第2の故郷”探偵団 坂田孝三さん:
「佐久から上田のほうにかけて家業の藍玉を売りに、紺屋さんのところに年に4回ぐらいまわってきたと聞いております」


信州との間を行き来する際に通る「内山峡(うちやまきょう)」で、19歳の渋沢が詠んだ漢詩を刻んだ碑が、佐久市の内山地区にあります。

難所の岩山を力強く越えていく様を表した一節「勢い青天を衝いて…」は渋沢の生涯を描いたドラマのタイトルにもなりました。

坂田孝三さん:
「よく渋沢さんというと論語とそろばんといわれる。本も出している。その原点がここにある」

新紙幣を心待ちにしている人が、ここにも。

上田商工会議所専務理事 矢ケ崎雅哉さん:
「当然お札の顔になっていい方だとずっと思ってたんですけど、やっと渋沢さんがお札になってくれると」


上田商工会議所に掲げられているのは、渋沢が筆を執った「温故知新」の文字。

1917年・大正6年に上田で講演をした際に贈られたものです。

帳簿には当時泊まった宿などが細かく記録されています。

渋沢は、佐久や上小(じょうしょう)地域を「自分の第二の故郷」と語ったとされています。

上田商工会議所専務理事 矢ケ崎雅哉さん:
「私たちは温故知新という言葉をもう100年以上大事にしている」
「初代東京商工会議所の会頭が渋沢さん。私たちにとっては商工会議所を作ってくれた人という気持ちもあるので、そういう精神も大事にしている」

新しい紙幣の発行で対応を迫られるのが、レジや自動券売機です。

長野市に本社を置く長野テクトロン。

パソコン関連製品の開発や製造が主力ですが、2020年から始めたセルフレジも好調です。

柳澤由英社長:
「われわれタッチパネルPCを一番メインでやっておりまして、周辺機、レシートを出すプリンター、スキャナー、それからお札を入れる釣銭機、こういったものがPCにつながっているような形になってます」

ちなみに、ここ数年に製造された機械の多くはソフトウエアをアップデートするだけで新紙幣にも対応できるようになっているそうです。


コロナ禍で広がり始めたセルフレジ。

1台100万円程度と高価ですが、新紙幣の発行をきっかけに従来の対面式レジからの入れ替えが加速しているようだといいます。


柳澤由英社長:
「まだまだこういったセルフレジの導入は3割4割くらいと聞いている。入り始めたらかなり進むのでは。これから期待している」

長野市内の温泉施設「うるおい館」は、新紙幣の導入にあわせて券売機2台を新しくしました。

池松洋平さん:
「以前はボタン式だったのをタッチパネル式にして新紙幣が使えるようになった。あと(500円の)新硬貨が使えるようになった」

新紙幣対応の機種が「奪い合い」になる前にと2023年の秋に注文し、春先には入れ替えを完了。

カードやスマートフォンを使うキャッシュレス決済の機能を付けたことも大きな変化で、海外からの観光客を中心に現金で支払いをしない人が増えたことが背景にあります。

2階の食堂にもキャッシュレスの券売機を設置。


以前はキャッシュレスは従業員が手作業で対応していたため、フロント業務の軽減にもつながったといいます。

池松洋平さん:
「(キャッシュレスの券売機で)人手がかからなくなった。フロントでも都度都度(キャッシュレスの)対応をしていたが、券売機で完結するので楽になりました」

日々の暮らしに欠かせないお金。

20年ぶりのリニューアルへの対応は7月以降も続きます。

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