障害のある人が、就労支援の事業所で活動をした場合、支払われる報酬として【工賃】というものがあります。
事業所が倒産して、その【工賃】が未払いになってしまった女性の訴えです。
札幌に住む50代の佐藤さんです。
佐藤さん(仮名)
「家族以上の存在というか…そういう場所だった」
うつなどの症状を繰り返す、双極性障害などと闘いながら、“B型”の就労継続支援の事業所に通う佐藤さん。
障害者年金とともに、手作りグッズの販売などを行い、時給にすると約300円の【工賃】を受け取って、生活していました。
佐藤さん(仮名)
「少ないながらも、自分で働いて作業したものが(工賃という)形になるっていうのは、やっぱり励みになる部分があって。金額の問題ではなくて、実際に社会に参加して、みんなと楽しく、自分で新しく好きなこと見つけて…」
しかし2年前、それまで通っていた事業所が突然、倒産。一部の【工賃】が未払いとなりました。
そもそも“B型”の事業所は、働くための訓練をする場所で、福祉サービスの提供にあたり、佐藤さんなどの利用者は、雇用契約を結ばない制度です。
こうした“雇用契約のない人”の収入を【工賃】。“契約のある人”の収入は【賃金】と呼ばれます。
今回、佐藤さんが働いていた事業所の“従業員”は、雇用契約が結ばれていたため、未払い分の【賃金】が保障されました。同じ事業所で対応が分かれたのです。
佐藤さん(仮名)
「制度の中での位置づけで、こんなに『そんな価値ないよ…』と、言われているのかなと」
佐藤さんは、倒産などの緊急事態で【工賃】が未払いになった場合は、行政が立て替える…といった制度を作るように、札幌市に求めました。
“努力した証しを無にしないでほしい…”。制度のはざまで訴えています。
■就労継続支援…障害の程度で分けられる事業所「A型」と「B型」
A型⇒一般就労に近く雇用契約を結ぶ【賃金】
B型⇒雇用契約を結ばず自分のペースに合せて働くことが可能【工賃】
■「対価」にも差
A型⇒全国の月額平均は8万3000円あまり
B型⇒約1万7000円
今回は、B型事業所の倒産で雇用契約がない「利用者」の佐藤さんたちは工賃を受け取れませんでした。
一方、雇用契約を結んでいた「従業員」の賃金は保障され、同じ事業所でも対応に差ができました。
今回取材をした佐藤さんは「工賃は励みでもあった」と語っていたそうです。
金額もそうですが、さまざまな条件の見直しを検討すべきかもしれません。
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