国の特別天然記念物で絶滅危惧種のライチョウの繁殖に取り組む上野動物園(東京都台東区)は28日、野生のオスからの人工授精により、飼育下のメスから2羽のひなが誕生したと発表した。野生個体からの人工授精成功は日本初。遺伝的な多様性を保ちつつ、繁殖を広げられる技術だという。

野生種の雄と人工授精し、国内で初めてふ化したライチョウのひな=富山市ファミリーパークで(同パーク提供)

 5月、上野動物園職員らが北アルプスの乗鞍岳で野生のオス6羽から採取した精液を富山市ファミリーパークに運び、飼育中のメスに人工授精した。6月28日に2羽がふ化した。

野生のオスのライチョウから精液を採取する上野動物園の職員(上野動物園提供)

 ライチョウの繁殖事業は上野動物園と横浜市繁殖センター、富山市ファミリーパークが共同で取り組む。これまで飼育環境下のメスとオスの間での人工授精で技術向上を図ってきた。上野動物園の冨田恭正副園長は「野生のライチョウから人工授精できたのは一つのステップ。生息地とは離れているが、これからも保全に協力していきたい」と話した。

人工授精のため精液を採取されたオス=乗鞍岳で(上野動物園提供)

 ライチョウは本州中部の高山帯に分布。1980年代には約3000羽いたが、2000年代には2000羽弱に減少したとみられている。(渡辺真由子) 

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