ごはんのお供としても欠かせないノリ。帝国データバンクによりますと、6月の食品値上げは614品目にもなるのですが、中でも目立ったのがノリ製品だということです。
値上げの影響と背景を深掘りしました。
ラーメン・おにぎりの“重要な食材”が…飲食店の悲鳴
熊本市にある田崎市場の中に、今年4月にオープンしたばかりのラーメン店があります。
店では豚骨をベースとしたスープに鶏油(ちーゆ)と呼ばれるチキンオイルを入れた、いわゆる「家系ラーメン」が売りです。おすすめの食べ方は?
熊本家系ラーメン十五家 馬場水晶さん「家系ラーメンはノリが重要で、スープにノリを浸して、ご飯と一緒に食べるお客さんが多いです」
馬場さんは、このラーメンに欠かせないノリに「いま一番困っている」といいます。店で使っているノリの価格が、この2か月ほどで1枚およそ15円値上がりしたのです。
馬場さん「ノリだけでなく、いろいろな食材の高騰もあり、7月から50円値上げせざるを得ない状況になりました」
ノリの値上げがさらに痛手となっているのが、おにぎり専門店です。
「安いノリにすればいい」わけじゃない
農家のおにぎり ichi kara juu 甲斐修一さん「ノリはほとんどすべてのおにぎりに関係してくるので、打撃は大きいですよね。全体に関わってくるので。少しの値段でも」
阿蘇の米農家でもある甲斐さんが丹精込めて作った米の味を引き立てているのが、大きなノリです。
甲斐さん「ふんわり握っているので、ノリは欠かせない。型崩れを防ぐためにとても重要な役割です」
しかし、去年から今年にかけて、仕入れているノリも1枚10円ほど値上がりしました。店を開いた5年前と比べると3割ほど高くなったと言います。甲斐さんは月に2000枚以上のノリを仕入れているため、影響は深刻です。
円安による具材の高騰で一年前、おにぎりを値上げしたばかり。しかし、ノリの値動きも不透明な中、再度、10円の値上げに踏み切らざるを得ませんでした。
甲斐さん「美味しいノリじゃないと。安いノリにすればいいという問題ではないので。普段使いしてもらえる金額設定でなんとかやっていきたいと思っているので、今後は値上げせずにこの価格で頑張っていきたい」
なぜ、ノリの値段が上がっているのでしょうか。
海藻が「ちょっとしたぜいたく品」に?
カネリョウグループ 本田博紀さん「海水温の上昇など、海の環境が変わったのが大きい。極端にノリの水揚げ量自体が少なくなっている」
こう話すのは、海藻の加工・販売を手掛ける会社でノリの販売を担当している本田さんです。
本田さんや熊本県漁連によりますと、おととしや去年は秋以降に降水量が少なく海水の水温が上がったため、プランクトンが居座り続けました。そのプランクトンがノリの栄養分である栄養塩を奪ったことから、有明海を中心に全国的なノリ不足が起こっているということです。
さらに、ノリ生産者の後継者不足もジワリと影響しています。昨年度、全国のノリの生産量は約49億4000万枚。2年連続で50億枚を割りました。
本田さん「だいたい1枚のノリが相場からいくと、3年前と比べて15円近く上がっているような状態。経験したことのない値段の上がり具合」
また、価格の高騰はノリだけではなく、三陸産のワカメも3~4年前程前からすると1.5倍近く値段が上がっているといいます。
本田さんは、海藻が「ちょっとしたぜいたく品」になりつつあるとした上で、ノリを含む海藻の値上げ傾向は今後も続くと見ています。
本田さん「需要自体は増えて水揚げが落ち込んでいるので、値段はどうしても上がる傾向にある」
県漁連によりますと、全国のノリ生産者は約30年前と比べて5分の1ほどに減っているということです。日本の食卓を支えてきたノリをはじめとする、海藻の今後が問われています。
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