運転手の人手不足がよく話題となっていますが『バスガイド』も激減しているといいます。5354人いた2007年と比べると、2023年には2240人で6割減となり、人手不足となっています。そんな中で生まれたのが『リモートバスガイド』という新しい働き方です。

出勤すると『女優ライト』設置のブースへ

 奈良市にある奈良交通の本社。バスガイドの櫻井史子さん(53)が、会社に着いて向かったのは、デスクではなく、リモートガイドを行う専用ブース。

 (奈良交通バスガイド 櫻井史子さん)「(Qここでバス乗車時と同じ案内をする?)はい、モニターの画面で車内が見えていますので、ご案内をしています」

 取材した日、櫻井さんが担当するのは茨城県から京都へ修学旅行で来た中学生。ガイド1人で2台のバスを同時にリモートで案内します。ブースの画面には2台のバスの車内が映っています。そして、櫻井さんの前には…。
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 (櫻井史子さん)「これ『女優ライト』ですか。私女優なので」

 女優気分で生徒たちを迎えます。
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 (櫻井史子さん)「この乗車風景から緊張が高まってくるんですけど。普通にガイドで行っていても緊張の瞬間ですね。何年たっても変わりません、これは」
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「京都観光」をスタート!リモートガイドのメリットとは?

 修学旅行生を乗せたバスは、龍安寺や金閣寺、北野天満宮を巡って京都駅へ向かいます。バスが動き出し、いよいよリモートガイドが始まりました。
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 (櫻井史子さん)「本日はリモートシステムということで、今からテレビに私が映ります。3、2、1、はい、おはようございます」
 (生徒)「おはようございます」
 (櫻井史子さん)「はい、ありがとうございます」

 リモートの基地局とバスは双方向で結ばれていて生徒の声も聞くことができます。
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 (櫻井史子さん)「今から右に曲がって西大路通に入りますと正面に大という字が書かれた山が見えます」
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 櫻井さんはリモートでも車窓の景色を見事に案内します。バスが走行している位置はナビゲーションで確認。長年の経験から、ナビを見れば、実際に見えるものがわかるそうです。

 (櫻井史子さん)「龍安寺、こちらパンフレットなんですが、15個の石と砂だけを使った石庭です」

 お寺のパンフレットや自作のボードをカメラに映しながら案内します。
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 (櫻井史子さん)「これは普通にガイドしている時はあまりできなくて。(実際のバスだと)前の座席の方は見えたとしても後ろの方までは鮮明に見えない」

 バスには前と後ろにモニターがあるので、小さな文字や写真、細かなイラストでも見せられるのが利点。最大20台、同時に結ぶことができるリモートシステムですが、複数のバスが連なる場合、見える景色はバスごとに異なるため、案内に気を配る必要があるそうです。

深刻なバスガイドの減少

 櫻井さんは高校を卒業して奈良交通に就職。入社した34年前はバスガイドが約200人という大所帯でした。結婚後、職場を離れましたが、子育てが終わり復帰すると、バスガイドの取り巻く環境は変わっていたといいます。
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 (櫻井史子さん)「22年ぶりにこの会社に戻ってきたときに、すごくガイドが少ないんやということもわかって。もうすぐ1桁になりそう…となってきたので、ガイド不足が深刻なんだなというのもわかってきました」
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 現在、奈良交通に所属する正社員のバスガイドは17人。一方で、修学旅行などでガイドを希望する団体はまだまだ多く、人手不足やニーズの多様化が課題になっていました。こうした中、複数のバスを同時にガイドできるリモートシステムを開発して、今年5月から本格的に導入。5人のリモートバスガイドで、5月6月の修学旅行シーズンは、29の学校のべ117台を案内します。

 (櫻井史子さん)「慣れるまでは大変なんですけど。働き方改革のひとつとして、年相応の年齢にあったガイドの仕事になると思います。まだ頑張らせていただきます。この『女優ライト』がある限り」

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