北海道の食を深堀りして、その価値を考えるシリーズ「食の未来を考える」です。
今回は、特徴的な見た目の「カジカ」です。

「カジカ鍋」に使われる「マカジカ」が有名ですが、実は種類が多く、値段が付きにくい「カジカ」もいます。
あまり市場に出回らない未利用魚、「カジカ」を、有効活用しようとする取り組みを取材しました。

午前4時、北海道東部の標津港です。
夜が明けて間もなく漁が始まります。

漁師たち
「せーの!おい!」

この日の狙いは、ニシン。
標津町はニシン漁が盛んで、去年は水揚げ量日本一にもなりました。
しかし、船にはニシン以外を狙う男性がいました。

だしを開発「しゃけを」椙田圭輔社長
「今ニシン漁あが、何回か船に乗って、どんな感じのものが取れたのか見たり」

この日の狙いは、「カジカ」。
浜値では1キロわずか5円しか値段がつきません。
漁師にとっては価値の低い魚ですが、椙田さんにとっては違いました。

だしを開発「しゃけを」椙田圭輔社長
「ゴモカジカとシラミカジカ、この2つが有効利用されていなくて、そういったものを利用させてもらっている。自然に入ってしまうものを無駄にならないようにして使えればいい」

漁師団体「波心会」林強徳さん
「カジカ自体は固有の魚なので昔から量は取れている。取る意味がないから漁師も雑に扱ってしまうだろうし、本当にごみ扱い」

日本の海面漁業の漁獲量は年間およそ320万トンですが、三菱総合研究所の試算によりますと、その1割にあたるおよそ32万トンが未利用魚として市場に出回らず廃棄されている可能性があると指摘されています。

漁師団体「波心会」林強徳さん
「(カジカは)捨てなきゃいけない値段がつかないと、いろいろ考えていたが、なかなかうまくいかず、自分たちも『波心会』立ち上げて1回2回やったがうまくいかず、そこで『しゃけを』さんと出会って」

だしを開発「しゃけを」椙田圭輔社長
「昔よく釣りで釣って帰っては母親がカジカ汁作ってくれたのを思い出して、だし出るしいいんじゃないかってことで」

未利用魚を捨てずになんとか活用したいと考えたのがダシづくり。
内臓を取ったカジカを道外の工場で粉末状にし、標津産の鮭節や道産昆布を加え、だしパックにしました。

去年4月から販売を始め、現在では道の駅や土産物店などおよそ150店舗で販売されています。
隣の中標津町で20年愛される寿司店でも半年ほど前から、「だし」を使ってもらえることになりました。

鮨わたなべ原内裕子店長
「カジカのだしが初めてで、カジカのだしを入れることによって、香ばしい風味が感じてちょっとアクセントになっておもしろい」

こちらの店ではコース料理の一品として旬の食材を使った汁物にダシを使っています。
果たしてそのお味は…?

ナギーブ モスタファ記者
「いい香りですね。だしが効いてとてもやさしい味です。とてもおいしいです」

自らの足で道の駅や販売店を回り、着実に販売店舗数が増えている一方、まだまだ足りないと話します。

だしを開発「しゃけを」椙田圭輔社長
「使えている未利用魚が2トンや3トンくらいなので、10倍や20倍もそういった魚いるので、取り組みに共感してもらって扱いをふやしたい」

別の日、椙田さんたちを尋ねると何やら作業をしていました。

だしを開発「しゃけを」椙田圭輔社長たち
「詰まるよ詰まるかなあ、もう詰まった?」
「あたりまえだよ入れすぎなんだから」

一体何をしているのでしょうか?

だしを開発「しゃけを」椙田圭輔社長
「きょうはカジカの魚醤を作ろうと思っています」

未利用魚「カジカ」を利用する次なる一手は魚醤でした。
初めての挑戦。漁師とともに試行錯誤します。

だしを開発「しゃけを」椙田圭輔社長
「しばらくおいて毎日混ぜて、様子見ながら何日に一回みたいな感じ。完成まで1年近いんじゃないかなと10か月とか12か月くらいかなと何分手探りなので」

ダシでは活用できなかった内臓まで使い、カジカをフル活用するのが狙いです。
未利用魚を積極的に活用しようとする椙田さんが目指すのは…

だしを開発「しゃけを」椙田圭輔社長
「漁師も魚の単価が上がったりとか活用することによって喜んでもらえたらうれしい。使われていないの『未利用』ではなく、魅了するほうの『魅了魚』にしていければいいなと思います」

これまで捨てられてきた未利用魚を食べた人を喜ばせる魅了魚へ。
挑戦は続きます。

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