爪を噛む癖は「爪噛み症」や「咬爪症(こうそうしょう)」と呼ばれる病気の一つです。
実は、記者自身も爪噛み症の当事者。幼少期~大学まで10年以上の長い間、爪を噛む癖が治らず、やめたくてもやめられないという気持ちが痛いほど分かるのです。
なぜ爪を噛んでしまうのか、皮膚科医と小児科医、両方の観点から話を聞きました。


▽「爪噛み症」とは

爪噛み症とは、どういった病気なのでしょうか。皮膚科医に話を聞きました。


近畿大学医学部皮膚科学教室 大塚 篤司 主任教授
「『爪噛み症』は、『皮膚むしり症』や『抜毛症』とか一緒に括られるんですけど、不安になったりストレスを感じると、無意識のうちに、爪噛んだり、むしったり、毛を抜いたりとか精神疾患に含まれる病気です。自分の爪や皮膚を傷つけることで気持ちが安定するといわれています。

皮膚科や精神科で見たりするような疾患で、いろいろな説がありますが、基本的にはストレスや不安に対して、対処的に無意識のうちにそういう行動をしてしまうといわれてます」

また、強迫性障害や不安障害、発達障害などがベースにあると、爪噛み症や抜毛症などが出たりすることもあるようです。

▽身体への影響は?

近畿大学医学部皮膚科学教室 大塚 篤司 主任教授
「基本的に、爪を噛み続けるのは皮膚にダメージが集積していくので良くはないです。人間の口はすごく汚いので、噛み続けて傷ができると、口の中のばい菌が爪から繁殖して、ひどくなると蜂窩織炎(ほうかしきえん)という細菌感染症を引き起こす場合などもあります。

爪を噛み続けて、ずっと刺激が加わっていくと、10年20年の話なんですけど、そこから皮膚がんが出るリスクも報告されています」

▽治療法は?

近畿大学医学部皮膚科学教室 大塚 篤司 主任教授
「精神科の先生とも相談したことあるんですけど、根本的に直すことは結構難しいんです。だから、日常生活に支障がないところまで持ってくっていうのが重要じゃないかといわれています。

塗ったら苦いマニキュアを試してみる、子どもが爪噛んでいたら叱らずに手で一緒に遊んであげる、触り心地が良いクッションやぬいぐるみを渡してあげるなど、少しずつ症状を軽くしていくイメージの方が負担が少ないんじゃないかなと思います」

そのほかに薬物療法もあるため、皮膚科と精神科の両方に診てもらうと良いということです。

▽「爪噛み症」子どもによくみられるのはなぜ?やめさせるべき?

続いて、小児科医に話を聞きました。


小児科医・新生児科医 今西洋介さん
「爪噛みは、いわゆる『代償行為』なんです。ストレスや不安を感じたときの代償行為として爪を噛むんですよね。

原因が社会性の未熟さってよく言われていて、つまり、社会的に自分でモノが言えないから、爪を噛むとか代償行為を引き起こしてしまう。

代償行為としては、ほかにも指をしゃぶったりとか、あるいは性器触ったりとかが子どもにはよくあるんですけど、これらは成長するとともに、減っていきます」

今西医師は、子どもの爪噛みは強制的にやめさせる必要はないとした上で、子どものストレスの原因を探ってあげることが重要だと話します。

小児科医・新生児科医 今西洋介さん
「無理やりやめさせると、逆に症状が悪化してしまって、余計に爪を噛む頻度が高くなってしまうことがあります。ですから、できれば注意せずに、そのストレスの原因を探ってあげることが重要だと思います」

▽「爪噛みは親の愛情不足」は迷信?

インターネットやSNSでは、爪噛みの原因は愛情不足によるものという情報もありますが、医学的にみてどうなのでしょうか。

小児科医・新生児科医 今西洋介さん
「それは全然関係ないです。愛情不足だから爪噛み症になるというのは、間違った指摘だと思います。爪噛みの原因が分からないから、親の愛情に原因があると考えてしまうのだと思います。

背景にある子どもの状況とか成長発達具合。例えば、学校で何か不安なことがあったり、集団生活で不安なことがあったりすると爪を噛むっていうことが結構よくあることなので、できればそういうことを親としては注意してもらえればいいと思います」

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