6月から完全施行された改正食品衛生法で、多くの漬物や梅干しなどふるさとの味が存亡の危機に直面しています。
いったいどういうことなのか、現場を取材しました。かなり影響が出ています。

(大石邦彦アンカーマン)
「愛知県新城市にある『こんたく長篠』さん、こちらが新鮮野菜の直売所です。地元の野菜や特産品が大集合しています」

愛知県新城市にあるJAの産直市場。地元の農家などが作った梅干しや漬物が並んでいます。

(大石アンカーマン)
「『とみちゃんの金山寺』、これはどういうもの?」

(JA愛知東 菊池猛さん)
「地元の野菜を使った人気のある漬物」

(大石アンカーマン)
「横畑昭子さんですかね。『おばあちゃんの梅干し』という感じがする。原材料は愛知県産の梅と、塩とシソのみ」

(JA愛知東 菊池猛さん)
「余分なものが入っていない。地元のものを使ってやっていただいている」

(大石アンカーマン)
「こちらは柿原恒子さん」

(JA愛知東 菊池猛さん)
「梅も作っている方で、自家製の梅を使った梅干しを出荷している。この方は一生懸命やっていただいているが、法改正で5月31日をもって出荷はやめるということになっている」

実は・・・ここに並ぶ手作りの漬け物の多くが、「消滅」の危機にあるんです。

(大石アンカーマン)
「何人くらい継続できそう?」

(JA愛知東 菊池猛さん)
「今だいたい50人が置いているが、継続するのは今確認できているのは4、5名」

(大石アンカーマン)
「じゃあ、1割くらいまで減っちゃうってことですか」

背景にあるのは、「食品衛生法」の改正です。
商品として漬物などを作る場合、これまでより厳しい衛生基準が必要になったのです。
新しい基準に合わせることは、農家にとってどのくらいの負担なのか。

漬物づくりを続けたい…“元スナック”の空き店舗を改装して工場に!

(大石アンカーマン)
「名古屋から車でおよそ2時間、山あいの町、愛知県設楽町にやってきました。ここがその工場ですかね、漬物工場には見えませんよね」

地元の農家、佐々木富子さん、通称「とみちゃん」。
愛知の伝統野菜「天狗なす」などを作る傍ら、その漬け物も販売してきました。

(大石アンカーマン)
「漬け物工場と聞いてきたんですが、ここは漬け物工場ですか?」

(佐々木 富子さん)
「元はスナックでした。家の前に漬け物を作る施設を作ろうと、大工さんに相談したら『建物から作るとすごくお金がかかる。どこか借りられるところはないのか』と」

(大石アンカーマン)
「ここ何もないですよ、周り。そもそもここでスナックやって、お客さん来てたんですか?」

(佐々木富子さん)
「来てたと思いますよ。私も飲みに来たことがあります」

建物の中に入ると…

(大石アンカーマン)
「あの壁紙がスナック感ありますね!」

(佐々木富子さん)
「角にちょっとしたステージがあって、そこで歌えるようになっていました」

(大石アンカーマン)
「とみちゃんも歌った?」

(佐々木富子さん)
「歌いました」

漬物は元々、自宅の台所で作っていましたが、法改正でそれが出来なくなり、以前はスナックだった空き店舗を借りて、工場に改装したのです。

換気扇も冷蔵庫も「全部買った」…設備投資に1000万円弱かかった!

(佐々木富子さん)
「『手洗い』は別にしなきゃいけない」

(大石アンカーマン)
「調理する『シンク』と『手洗い』は分けなきゃいけない?」

(佐々木富子さん)
「(ハンドルは)直接手で触ってはいけないので、(レバーで)肘でできるように」

(大石アンカーマン)
「どんな設備投資をしました?このあたりは?」

(佐々木富子さん)
「全部買った。換気扇も、ガスの給湯器も、冷凍庫も、冷蔵庫も、エアコンも」

(大石アンカーマン)
「このへんにあるものは全部買った?」

(佐々木富子さん)
「そうです。ずいぶん前から少しずつ投資して、1000万円は全部でかかってないと思うんですが…」

法改正では、自宅の台所とは別に作る場所を用意することや、壁も床も水洗いできること、温度計が付いた冷蔵設備など、数多くの条件が設けられています。

きっかけは2012年、北海道で起きたO157による集団食中毒事件。
地元企業が作った浅漬けで、あわせて8人が亡くなりました。

元々の生産者には“補助金無し”…それでも「生きていくため」決断!

(佐々木富子さん)
「『(衛生管理が)ちゃんとしたところでやりなさい』というのは、聞けば納得できるんですが、新規で何かを開業する人には補助金が出るんですが、『富子さんはもうやっているので、途中からはないんですよ』と言われてしまって…」

この法改正に対応するための補助金はなく、設備投資は丸ごと「自己負担」。
それでも佐々木さんは許可を取り、漬物作りを続けることにしました。

(佐々木富子さん)
「生きていくため。そうしないと食べていけない。何年も前から(農業から)加工品にシフトしていかなければいけないと思っていた。法改正は決断のタイミングをくれたという感じもある」

(佐々木富子さん)
「酒かすの上に一面に並べていく」

ウリ科の野菜カリモリを、地元の酒蔵、関屋醸造の酒かすにじっくりつけ込んだ自慢の粕漬け。

(大石アンカーマン)
「塩辛さがなくて、むしろ甘みがある。酒の風味が増す。これで(関谷醸造の)『空』をいきたいですね」

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