「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家、和歌山県田辺市の野崎幸助さん(当時77)が殺害された事件は発生から6年。殺人事件については、妻だった須藤早貴被告が起訴されていますが、その裁判期日は未定となっています。そんな中で、「ドン・ファン」をめぐる、もう一つの注目の判決が、今週言い渡される予定です。

「いごん 全財産を田辺市にキフする」

 野崎さんが死亡したのは2018年5月。しかし死後、2013年2月8日の日付で自身の名前も記載された、生前に書かれたとされる遺言があることがわかりました。野崎さんの知人男性が預かっていたということです。

 そこには、紙に赤い字で手書きされた文字で「いごん 個人の全財産を田辺市にキフする (野崎さんの会社)の清算をたのム 平成25年2月8日 野崎幸助(印鑑)」と書かれていました。

 その後、和歌山家裁田辺支部が、「遺言書は形式的要件を満たしている」と判断。田辺市は「市民の利益のため」と、野崎さんの残した13億円とされる遺産を受け取る意思を固め、代理人弁護士とともに受け取りの手続きをはじめていました。

親族と田辺市側 遺言書めぐる裁判へ

 そこに『待った』をかけたのが野崎さんの親族。2020年4月、野崎さんの兄ら4人は、「遺言書は、本人以外が作成した可能性が高い」と主張し、遺言執行者の弁護士を相手取り、遺言書の無効を求める裁判が始まりました。

 これに対し、被告である遺言執行者の弁護士、いわゆる田辺市側は、「請求書の棄却」を求めていて、裁判で全面的に争ってきました。

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 裁判で、親族側が証拠の一つとして出しているのが「筆跡鑑定」です。野崎幸助さんが書いたとされる手書きのメモや、公正証書へのサインなど、複数の筆跡から鑑定した結果が提出されています。

「野」の字を詳細に比較

 親族側は、野崎さんの「野」の文字に注目すると、「いごん」に書かれた文字と、別の資料の文字で、一画目と二画目の長さのバランスが違う点、形に違いが見られる点などがあり、「遺言書は野崎さんが書いたものではない」と主張しています。

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 一方、田辺市側が出した資料では、「いごん」に書かれたフルネームと、野崎さんが営んでいた貸金業で、債務者に送った督促状のフルネームを比較しています。

 田辺市側は「全ての文字で、筆跡の特徴が一致している」と主張していて、特に『野』の字については、左側の『里』が頭でっかちで、右側の『予』の文字が続け字で記載され、ひらがなの『ろ』の形状に似ているとしています。

 こうした資料をもとに、田辺市側は、「遺言書は野崎さん本人が書いたもの」と主張してきました。

 真っ向から食い違う主張、裁判所はどのような判断をするのでしょうか。

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