地震などの災害が発生した時、小さい子ども、特に生まれたばかりの赤ちゃんがいる家庭は、避難生活や生活環境の悪化で不安を抱える人も多いのではないでしょうか。能登半島地震で新生児と被災した母親や専門家の話から、いざという時のために必要な備えを考えます。

石川県野々市市のアパートで暮らす松井彩音さんと長男の朔玖(さく)くん。朔玖くんは2023年12月23日、石川県七尾市内の病院で生まれ現在5ヵ月です。

松井さんは元日、能登町柳田の実家で生後9日目の朔玖くんと被災しました。

松井彩音さんは、地震直後のようすについて「2人きりで部屋にいる状態で1回目の揺れが来て、夫から「大丈夫か」って連絡が来てる最中に2回目の大きい揺れが来てプツンって電話も切れて。ただただ怖くて」と話します。

夫や両親は外出していて朔玖くんと部屋に2人きりだった松井さん。激しい揺れの中、我が子の命を守ろうと必死だったといいます。

松井彩音さん「わたしたまたま搾乳している最中で、搾乳機も投げ捨てて抱えて。最悪自分はどうなってもいいしと思って。なんか上から落ちてきたらどうしよう、この子死んだらどうしようみたいな感じで、必死に上から覆いかぶさって守っていた」

親子で在宅避難 待ち受けていた「断水」

幸い建物は倒壊の恐れがなく、松井さん家族は実家で「在宅避難」をすることになりましたが、待ち受けていたのは「断水」です。

松井彩音さん「地震当日から水が出ない。ミルク作るにしても電気は最初来てたけど、水がなかったらお湯が沸かせないじゃないですか。なのでミルクが作れないし。沐浴、赤ちゃんってたくさん汗かいたり皮脂が出るから毎日お風呂に入れてあげて下さいって言われてたけど、水が出ないからお風呂にもほとんど入れてあげられなくて」

さらに松井さんを悩ませたのは母乳が十分に出なくなったことです。

松井彩音さん「母乳もごはんしっかり、水分しっかりって摂らないと出なくなるじゃないですか。なのであんま出なかったです。トイレなるべくいかないようにって変に思ってしまって水分摂れなくって。母乳出ればこんなミルクなくてもいいのになって。哺乳瓶洗えなくても平気なのになって。もっと出ればいいのになって思ってました」

物が不足する災害時…「まずは母乳を優先」乳児の栄養どうする?

赤ちゃんにとって必要な物が足りない状態での避難生活。専門家は乳児の栄養について、まずは免疫が含まれる母乳を優先して考えてほしいと話します。

県立中央病院総合母子医療センター・上野康尚医師「出るのであれば母乳を最優先で考えていただきたいなと思います。一時的に出なくなることは災害などのストレスの時に頻繁にあるようですが、それで授乳をやめてしまうと本当に分泌量が少なくなってしまう。授乳がスキンシップにもなるので、精神的に安心できるという側面もありますから」

粉ミルクの場合、細菌を死滅させるため必ず70度以上のお湯で作ることや、哺乳瓶の口を清潔にすることが必要です。どうしてもミルクがない場合、脱水症状を防ぐため水や果汁のようなものでも与えたほうがいいといいます。

水がない!入浴できない!…医師「まずお尻周りを清潔に」

さらに、入浴ができない場合でもお尻周りの清潔を保つことが重要と指摘します。

県立中央病院総合母子医療センター・上野康尚医師「胃腸炎を含む感染症があるので、入浴とかは十分にできないと思うんですが、まずおしりまわりを清潔にしてそこだけ少ない水分使って洗ってあげるとかそういう工夫は必要」

言葉が話せず自分で不調を訴えられない赤ちゃんに対して、災害時、親や周囲の大人はどんなことに注意するべきなのでしょうか。

県立中央病院総合母子医療センター・上野康尚医師「おしっこの量とかうんちの量、つまりオムツを何回かえるかみたいなことで赤ちゃんの水分や食事が足りているということが推測できるので、1日6回くらい十分な尿便をしていて交換ができれば大きな心配はない。夜泣きとか不機嫌とか癇癪とか、災害をお子様が自分なりに乗り越えようとする一時的な反応であることが多いので、できるだけ抱っこしてあげるとか普段以上にやさしくしてあげることが大事」

ミルクやオムツの調達など家族や親戚のサポートを受け、なんとか1か月間能登町での避難生活を乗り越えることができたという松井さんは、朔玖くんが大きくなったら伝えたい思いがあります。

松井彩音さん「あれだけひどい被害の中で生き残れた。あなたが今こうやって生きていられるのは、家族とかまわりの協力があったからこそやから、命大事にしてほしいなっていうのは伝えたいですね」

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