東日本大震災が起きた2011年に岩手県沿岸部の街、宮古市に生まれ、地元の人たちに元気を届けたいとギターの弾き語りを続ける中学生がいます。6月9日には、プロのミュージシャンを招いて市内で行われたイベントのステージに立ちました。ステージに立ちギターの弾き語りで堂々とした歌声を披露するのは、岩手宮古市の宮古西中学校に通う中学1年生、中村旭さん12歳です。

4年ほど前に、コロナ禍で外出の機会が減ったことからギターを始め、今では地元を中心に岩手県の内外でライブも行っています。6月9日にはプロのミュージシャンも招いて市内で行われた音楽イベント「EASTEND」で、中学生ながらオープニングアクトの大役を任されました。旭さんが生まれたのは、東日本大震災からおよそ7か月後の2011年10月。もちろん当時の記憶はありません。

「私の生まれた宮古市ですごいことが起きたんだなって・・・」(中村旭さん)

当時、旭さんの家族が暮らしいていた家は高台にあったため大きな被害はありませんでしたが、母、佳枝さんのおなかの中には旭さんがいて、不安な日々を過ごしたと言います。

「怖かったですね。これで何かあったらお腹の子と一緒にもうだめなのかなと考えたこともありましたね」(佳枝さん)

旭さんは家族から話を聞いたり、学校の授業で当時のふるさとの被害の大きさを学んだりしたことで、自分の得意な音楽で地元に元気を届けられないかと考えるようになりました。

「聞いてくれた人が嬉しくなったり、元気になってくれたりしたらすごいことだなあと」(中村旭さん)

プロのミュージシャンと同じステージに立っても物おじしない旭さんですが、学校で授業を受けたり友達と話したりする姿は普通の中学生です。


「明るくて優しいです」(同級生)

学校から帰ると毎日の日課となっているのがギターの弾き語りの練習です。イベント3日前となったこの日も母の佳枝さんが見つめる中、練習を繰り返しました。

「宮古の皆さんに元気をお届けできれば。大きな舞台なので、緊張もするだろうけど、頑張ってもらいたい」(佳枝さん)

そして迎えたイベント当日。旭さんが出演する「EASTEND」は、震災で傷ついた宮古市を音楽で元気づけようと、2011年から不定期で開催されてきたイベントの後継イベントとして、今年初めて企画されたものです。本番前の楽屋には両親が駆けつけました。

「元気になってもらいたいという思いで歌っているんじゃないかなと。何より自分がそうなんですよ。あの子の歌を聞くたびに元気になるというか、同じ感じに受け取ってもらえればなと」(父・秀和さん)

ステージでスポットライトを浴びた旭さんは、練習を重ねてきたギターと歌で観客を魅了します。そして最後に披露したのは…等身大の自分を表現したというオリジナル曲です。

「気持ちよく歌えてよかったって感じですね。自分の歌で震災でつらい思いをした人が元気になってくれたら嬉しいなと思います」(中村旭さん)

震災の年に生まれ、宮古の復興とともに成長してきた旭さん。これからもギターと力強い歌声で地域に元気と勇気を届けます。

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