日本の自治体の約4割が2050年までに消滅の危機に瀕しているとの衝撃的な分析が発表されました。しかし、長崎県諫早市と島原市はその逆境を乗り越え、復活への道を歩んでいます。企業誘致や外国人労働者の増加など、彼らの成功事例から地方再生のヒントを探ります。

人口戦略会議 三村明夫議長:
「このままでは将来消滅する自治体数が744と推計されております」

有識者でつくる人口戦略会議が今年4月に発表した「消滅可能性自治体」全国のおよそ4割にあたる744の自治体で2050年までに若い女性が半数以下となり、将来的に消滅の可能性があるという衝撃的な分析結果でした。

国の有識者会議が発表した「消滅可能性自治体」その定義は《2020年からの30年間で、20歳から39歳の若い女性の人口減少率が50%を超えると推計される自治体》のことです。

“出産する女性”が少なくなることで産まれる子どもが減り、結果的に住む人がいなくなる可能性があるとされています。

今回、この「消滅可能性自治体」に該当すると指摘されたのは、長崎県内21市町のうち以下の《8市3町》です。

南島原市・雲仙市・五島市・平戸市・対馬市・西海市・壱岐市・松浦市・新上五島町・東彼杵町・小値賀町

同様の分析は10年前にも行われていて、これらの自治体の多くは前回も「消滅可能性」を指摘されていますが、その一方で、この10年で状況が改善し、今回「消滅可能性」から脱却した自治体もあります。

それが、諫早市と島原市です。

企業誘致・住環境整備に取り組む諫早市

およそ13万人が暮らす県内《第3の都市》諫早市。今回の分析では2050年までの若い女性の減少率が42.2%と、10年前から8ポイント改善し「消滅可能性」から脱却しました。

大久保 潔重 諫早市長:
「脱却をしたことは非常に嬉しいし、今まで取り組んできたいろいろな政策が少しずつ効果が出ているのかな。(要因として)今回”企業誘致”が非常に好調だということ。ですから、雇用の創出ができうると」

諫早市では誘致した企業を含め2015年からの8年間で2,132人の雇用が生まれていて、今後も増える見込みです。

諫早市 企業誘致課 村上徹課長補佐:
「こちらがですね、南諫早産業団地です」
住吉アナウンサー:「かなり広いですね」
「分譲の面積で言いますと約20ヘクタール(あります)」

ここに工場を設立する企業の一つが大手電子部品メーカーの「京セラ」です。

京セラは2026年度から半導体関連製品の生産を予定していて、約1,000人の雇用を表明しています。

このほか諫早市では去年、ソニーグループの長崎テクノロジーセンター「Fab5(ファブファイブ)」の増設も完了し、雇用が拡大。

また2026年度には、九州最大級となる「ゆめタウン諫早」も完成予定で、2,000人の地元雇用が予定されています。

市は国道や高速道路JR・島原鉄道が交わる「交通の要衝」としての強みを生かし、さらなる企業誘致を目指す考えです。

村上課長補佐:
「我々といたしましては、いろんな企業の進出の意欲があるんじゃないかということで、こちらの南側に新しい産業団地の計画を現在している所です」

これまでの取り組みにより諫早市ではここ3年、転入者が転出者を上回る「社会増」が続いていて、去年は292人の増加となりました。

これを受けて市は働く人の数に対して住宅が少なくなってきているとして、宅地利用できる土地を増やすため独自の都市計画を策定する方針です。

大久保諫早市長:
「働く場ができたら住む場所ですね。旺盛な住宅需要に行政も答えていかなければいけない。特に若い皆さんたちが諫早に住みやすい環境を前提として整えようということにチャレンジしていきたい」

諫早市を取材してみて人口減少に歯止めをかけるにはやはり《雇用の確保》が即効性のある対策だと感じます。

一方、もうひとつの脱却自治体、島原市を取材してみると、諫早市とは異なる事情が見えてきました。

外国人労働者・関係人口が増加

島原市民:

「出ていく方が多いいんじゃないかな」

「増えたも少なくなったもない。静かですよ。いい所です」

「私もそうなんですけど、結構、Uターンしてくる子とかも、30代の子たちで多かったりするのかなと」

人口およそ4万2千人。雲仙岳と有明海に囲まれた「水の都」島原市。今回の分析では2050年までの若い女性の減少率が48.4%と10年前から9.5ポイント改善し「消滅可能性」から抜け出しました。

ところが、その要因について島原市の担当者に尋ねてみると…

島原市 地方創生推進班 金子拓生班長:
「今回島原市が脱却したと発表はされたものの、要因としてこれっていう所は中々無くてですね。今回ギリギリ(減少率50%)を超えているぐらいなので、まだまだこれから取り組む課題は多いのかなと」

『明確な答えはない』としつつも、市が一つの要因と見ているのが外国人労働者の増加です。

大三東で農業を営む宇土和俊さんは、9年前から技能実習生の受け入れを始め、現在は東南アジア出身の5人を受け入れています。

住吉:仕事は大変ですか?

インドネシアから来たアルイさん(20)
「大変だけど楽しいですね。大将(宇土さん)とママは優しい人です」

十二番農園 宇土和俊代表:
「彼らはやっぱり実習生というだけあって、勉強をする意識があるから、すぐ私たちが納得いくぐらいの仕事はできるようになる」

島原市の在留外国人の数は去年590人と、この10年で3倍近くに増加。県内で5番目に多い受け入れ人数となっています。

また島原市は、移住につながる可能性がある「関係人口」にも注目しています。

水脈 mioスタッフ「観光客の方は結構、土日とか大型連休に県外から来て下さる方も(いらっしゃいます)」

関係人口とは、ほかの場所に住みながらも地域とのつながりを持つ人々の事で、市はこの関係人口を増やして将来の定住に繋げたい考えです。

その足掛かりとして去年完成した「水脈 mio」は、島原市が所有する築170年の歴史的建造物を、ホテル、カフェ、コワーキングスペースに改装した施設で、運営は民間が行っています。

スタッフの安井さんは、この施設がきっかけで島原に移住しました。

水脈 mio 安井愛樺さん:
「1年前に島原に遊びに来て、最後ここにたどり着いて。私、その時、在宅で仕事をしていたので、Wi-Fiもあって電源もあって、ゆったりした過ごせる場所があってすごいなと。あまりに心が動いたことを自分が無視できなかったので、こっちに移住しようと」

「水脈 mio」では島原市による移住者相談会も定期的に開催していて、島原市の昨年度の移住者は過去最多の86人に上りました。

水脈 mio 南里史帆支配人:
「地元の方と観光客の方が交わる一つの拠点みたいな形に今後していけたらいいなと思っています」

島原市は今回の分析で「転入者を増やす対策が必要」と指摘されましたが、首都圏の企業を受け入れてワーケーションを行い、市民との交流会を行うなど積極的に移住に向けた取り組みを進めていてその結果が少しずつ出てきている印象でした。

一方で離島を多く抱える長崎県は若い女性の減少率が70%を超え、消滅可能性自治体と分析された自治体もあります。NBCでは今後も取材を続けていきます。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。