多額の費用や不透明な運用が問題になっている福岡県議会の海外視察。
10日、日本維新の会福岡県議団が改善を求める要望書を議長に提出するはずだったが、議長が“急な公務”を理由に、直前で面会をキャンセルした。
公務の内容は明らかにされていない。
詳細を明らかにしようとしない県議会の体質がまた、露呈した。
◆日本維新の会福岡県議団からの連絡
日本維新の会福岡県議団から記者クラブに連絡が入ったのは、6月9日(日)午前11時40分ごろのことだった。
福岡県議会の海外視察の問題をめぐり10日、日本維新の会福岡県議団の3人が香原勝司議長と面会し改善を求める要望書を提出することになったという。ついては取材をしてほしいという内容だった。
◆税金での海外視察 人数も費用も過去最多に
福岡県議会では、昨年度の海外視察費と派遣された議員数が過去最多となった。
コロナ禍で視察を行わなかった2020年度と2021年度を除いた2019年度から昨年度までの実質3年間で、計23回の海外視察を行い、その費用は約2億8500万円にのぼっている。
しかし、福岡県議会では視察内容について報告書を作成する義務がなく、詳細はHPでも公開されてないうえ、費用の上限もない。
多額の視察費の原資は税金である。こうした不透明な運用ルールに疑問の目が向けられ現在、県議10人で作るプロジェクトチームが見直しを進めている。
◆議会内部からの要望書 取材に向かうと
そうしたさ中の要望書提出ということで、取材をすることにした。
日本維新の会福岡県議団の取材案内文によると、要望書の提出は10日午後3時~3時半の間。場所は、議会棟2階の議長室。
香原勝司議長に直接手渡すことになっていた。
面会できる時間になったら、議長室から日本維新の会福岡県議団部屋に連絡が来る手はずだと聞いていたため、私は、日本維新の会の部屋で午後2時半頃から待機した。
◆議長室からの電話 部屋の空気が一変
そして午後3時15分ごろ、部屋の電話が鳴った。議長室からだ。
私は「面会の時間が来た」と思い、カメラマンと一緒に議長室に向かう準備に取り掛かった。
ところがどうも様子がおかしい。
なかなか電話が終わらないのだ。
最初に電話を受けた議員が代表の新開崇司議員に電話を代わる。
「面会できないということか」
「急な公務とはどういうものか」
新開崇司議員の声色が変わり不穏な空気が漂い始めた。
◆一体何が起きたのか
ようやく電話が終わった。
内容を尋ねたところ、議長室からの連絡は、「香原議長に“急な公務”が入ったため、今日は面会できなくなった」というものだった。
要望書が提出できなくなった新開崇司会代表は「3日前にアポイントを取っていたのに直前でドタキャンし、その理由も教えないというのはいかがなものか」と憤った。
◆議長室の見解「面会は確約していない」
議長室に経緯を聞いたところ、「面会することは確約はしていない」という。そもそもの認識に齟齬があると弁明した。
一方で「どういう公務かは公表できない」という。
「約束をしていた日本維新の会には、どういった公務が入ったのか伝えるべきでないか」と聞いてみたが、「内容は公表できない」と繰り返し説明するばかりだった。
◆問題は「詳細を明らかにしない」姿勢だ
今回、どういった公務が入ったのか詳細は分からないが、私は、海外視察の問題は、この「詳細を明らかにしない」姿勢にあると感じている。
海外視察のあり方を見直すためようやく立ち上がったプロジェクトチームについても、2回目の会議から非公開になった。
「どういう意見が出たか」などについても取材に応じないという奇妙な対応が取られている。
県議会議員からも「できる限り公開すべきだ」との声が上がっているにもかかわらず、詳細が明らかにされない。
今回、県議会内部から「改善の要望」が行われようとした。
しかしこれも、明確な理由が明らかにされないまま、直前で消えた。
福岡県議会には、何より「透明性」が求められている。
RKB毎日放送 記者 野島裕輝
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