男性社会のイメージがある鉄道業界。鉄道会社の女性従業員の割合は増えつつありますが、出産・育児といったライフイベントを経ても、社員を定着させられるかが課題です。こうしたなか、新たな取り組みが始まっています。

作業着姿で新幹線の運転台に座る女性。全長2キロほどの車両基地で新幹線を移動させる、「構内運転士」の川島さんです。

川島さんはもともと、憧れだった東海道新幹線の運転士として働いていました。

しかし…

JR東海 川島智美さん
「運転士自体は続けられないだろうな」

これは、一般的な新幹線の運転士の勤務イメージ。1か月で11日の泊まり勤務があり、3人の子どもを育てながら働く川島さんが、普通の新幹線の運転士を続けるのは難しい状況です。

JR東海 川島智美さん
「続けたいなと思ったんですけど、他の駅業務などに変わるのではないかと思いながら仕事をしてました」

そもそも鉄道業は、始発からの運転に向け、深夜早朝の業務が多いのに対し、女性は1999年の労働基準法改正まで深夜労働ができませんでした。

JR東海の女性の割合は少しずつ増えていますが、それでも全体のうち1割ほど。会社にとっても、女性をいかに定着させるかが課題です。

そこでできた制度の1つが構内運転士なのです。

JR東海 川島智美さん
「運転士としての仕事を続けられると思ったので、すごく嬉しかった」

仕事を終えると、保育園に急ぐ川島さん。「運転士」の仕事を続けながら、子育てとの両立が可能になりました。

JR東海 川島智美さん
「急きょお迎えになったときに(構内運転士は)すぐに駆け付けることができる」

女性定着に向けた取り組みは運転士以外でも…

平野菜々子さん
「こんにちは。ご来店ありがとうございます」

飲食店で働く平野さん。半年前までは、駅員や車掌として活躍していました。今は、所属はJR東海のまま、2人の子どもを育てながら飲食店に出向しています。

JR東海から出向中 平野菜々子さん
「お客様のために何かするのは元々好きだったことなので、やりがいはとてもあります」

もちろん、小さな子どもを育てる社員が車掌や駅員を続けても、泊まり勤務などが免除される制度はあります。しかし、仕事の幅が制限されることから、会社には「もう少し自分の能力を発揮したい」といった声も寄せられました。

そこで去年、出向して活躍する制度が作られました。

平野さんはアルバイトが多い飲食店で、あるスキルが身についたと話します。

JR東海から出向中 平野菜々子さん
「仕事を教えたりだとか、何かお願いしたりすることがすごく苦手だったが、そのスキルがちょっと身に付いてきた」

会社としては社員の活躍の場を広げることで、長期雇用につなげたい考えです。

JR東海人事部 野口邦彦さん
「社員のサイドからすると、活躍できる幅が広がることは働きがいに繋がる」

家庭と仕事の両立へ、鉄道業界の模索が続きます。

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