盲導犬は10歳前後で引退することになっています。元気なうちに引退し、のんびり余生を過ごすためです。引退が近づく盲導犬コニーとその家族の絆を喜入友浩キャスターが取材しました。

■引退近づく盲導犬コニー 家族との絆

この春、9歳の誕生日を迎えた盲導犬「コニー」。コニーのパートナー、 小暮愛子さんと家族になって8年になりますが、この日は特別なものになりました

小暮愛子さん「引退前のラストイヤーなのでもう寂しいです。もう子どもみたいなものなので」

盲導犬は10歳前後で引退することになっていて、コニーも今年いっぱいを目途に引退します。

小暮さんは4人家族のお母さん。今日は”煮込みハンバーグ”を作っています。

小暮さん「(今はどのように見えますか?)全く見えないんですけど、真っ暗ではなくて真っ白です。見たいなと思うものは見えないです」

家族全員 「いただきます!」
夫 賢也さん「おいしい」
長女 真子さん「普段、言わないのにね」
小暮さん「言わないのにね」

コニーは食事が終わるのを、じっと待っています。

■盲導犬を迎え入れるきっかけ「一人でコンビニに行ってみたい」

小暮さんは外に出かけるとき、盲導犬のシンボル「ハーネス」をコニーに装着します。盲導犬の仕事は障害物を避けるなど、移動をサポートすることです。

横断歩道の手前でコニーが立ち止まりました。歩道と車道の段差の前で止まるよう訓練されています。

小暮さん「(信号を渡るときの判断は?)信号は残念ながらコニーは色が見えないので、私が耳で車の音だったり自転車のブレーキだったりいろんなものを聞いて、私が判断して指示を出しています」

小暮さんは「網膜色素変性症」という、進行性の目の病気の影響で、小学5年生ごろから徐々に目が見えなくなったといいます。

小暮さん「本当にひとつずつ薄皮を剥がれるような、少しずつ少しずつ、この間まで見えていたものが、もうこんなに見えなくなってきたとか。すごく孤独で苦しい時間でしたね」

そんな中、出会ったのが夫の賢也さんです。25歳で結婚、27歳のとき長女の真子さんを授かりました。

小暮さん「今までひとりで抱えてきたものを、パパが半分背負ってくれたような感じだった。自分がすごく幸せだったから、子供を産んでも『きっと幸せになるだろう』という、漠然とした自信があった。

(長女が生まれたときは?)見えてないんですね。ちょっとでも見えればと思ったんだけど、かすんでいて見えなくて。見たことがないって言えば見えたことがないんだけど。

私の中には長女と長男の顔があって『今日元気ないな』『顔色悪いな』というのは、母親だから読み取ってるんだけど、それは心で見てる。”見てる”かもしれない」

2人は大学生・高校生になりました。盲導犬を迎え入れようと思ったのは子どもたちが小学生のころです。

小暮さん「一応訓練受けて白杖で歩いていたんですけど、あんまりうまくいかなかった」

移動中に怪我をしたこともあり、ひとりで行動できる範囲は限られていたといいます。

小暮さん「例えば『ちょっと醤油切らしたからスーパーに行きたい』とか、『天気がいいからコンビニ行って、飲み物買って飲みたい』とか、ふと思ってどこかに行くということがしたかった」

■盲導犬コニーがやってきた 夫は「心配」子どもは「お母さん目が見えないんだ」

コニーはボランティアに育てられた後、1年ほど訓練を受け、小暮家にやってきました。

小暮さん「『今日のこの生活はどう変わるかな』『どこ行こうかな』『家族は喜ぶかな』とかいいことばかり考えていました」

当時、小学3年生だった長男の義人さんは…

義人さん「それまで(母が)普通に動いて生活していて、『目が見えてるかな』と思い込んでいたので、コニーが来たときに『お母さん目が見えないんだな』っていう認識を持ち始めた」

賢也さん「 当初はやっぱり心配しました。2人で道を歩くわけですから、ちょっと遠目で見ながら、ストーカーじゃないですけどね」

コニーのおかげで行動範囲が広がり、家族で外出する機会も増えたといいます。

小暮さん「移動って今まで大変なことだったんだけど、目的地に行くまでも楽しい。ピクニックみたいな感じ。コニーと歩くのがすごく好きです」

小暮さんにはコニーとよく行く、行きつけのカフェがあるそうです。ルートを指示するのは小暮さんの役割です。

小暮「大通りに出たら左に曲がって、大きな信号一つ、ブロック二つ目っていう感じ。事前にだいたい頭の中に地図を描いておきます」

カフェに入り、小暮さんはコニーに「ゴーチェア(椅子の場所を教えて)」と話しかけると、コニーは椅子にあごを乗せて座席の場所を教えてくれます。

小暮「ほっとしますよね。コーヒーのいい匂いがまずして、お店の人が声かけてくれて、メニューも読みあげてくれて」

コニーもくつろいでいます。

■盲導犬の入店拒否 「自分が拒否されているような気分になる」

交通機関や飲食店などへの盲導犬の入店は、2002年施行の「身体障害者補助犬法」により、受け入れが法律で義務づけられています。法律ができてから20年以上が経ちますが…

小暮「だんだん少なくなってきたけど、1割ぐらいやっぱり断られることがありますね。自分が拒否されているような気分になるのですごく落ち込みますね。ちょっと最初のお店は尻込みしちゃいますね」

コニーと一緒に暮らすのもあと半年ほどになりました。

小暮さん「(コニーはどんな存在?) ただの犬でも盲導犬でもなく、本当に人生寄り添ってくれる存在ですね。本当にコニーに感謝しています。『行かないで』って感じするけど…(涙は)引退までとっておきます。コニー大好きだよ」

■受け入れ拒否の現状と私たちにできること

喜入友浩キャスター:今もなお続く、盲導犬の入店拒否です。日本盲導犬協会によりますと、2023年、盲導犬の受け入れ拒否にあった割合は44%だったといいます。小暮さんも今年に入ってバスに乗ろうとしたら、乗車のタイミングでドアを閉められてしまったそうです。

2002年に施行された「身体障害者補助犬法」では、「飲食店や交通機関 病院などは補助犬の受け入れを拒否してはいけない」とあるにも関わらず、現状では認知がまだまだ進んでいないようです。

上村彩子キャスター:盲導犬がどのような訓練を受けて、どういったことができるのか、そして私たちは何ができるのか。知識を身につけておくと、いざというときにスムーズに対応できるかもしれません。

喜入キャスター:コニーはお店に入る前に用を足すようにしてます。お店に入れば、トイレに行くこともありませんし、騒ぐこともしません。じっと落ち着いて迷惑をかけることはありません。

どうしたら理解してくれるのか、小暮さんに聞いたところ、バスで乗車拒否されそうになったとき、乗客の方が運転手さんに『盲導犬ですよ。ドアを開けてください』と声をかけてくれたそうです。

盲導犬への理解が一気に広がることは難しいかもしれません。しかし、盲導犬がいる空間に、理解をしてくれる方が1人でもいれば救われると小暮さんはおっしゃっていました。

上村キャスター:そのような方がもっと増えていくといいですね。コニーは引退後、どのように暮らすのでしょうか。

喜入キャスター:ボランティアに引き取られて、ゆっくりと余生を過ごすそうです。そして小暮さんは新しい盲導犬を受け入れるそうです。

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