近年、被害の報告が急増している「トコジラミ」。
「一生人の血を吸う」トコジラミ ヤツらには弱点があった!
被害にあわないためにはどうしたらよいのでしょうか。害虫対策などを手掛ける、岡山市の東洋産業・大野竜徳さんに「トコジラミ」の性質や対策について聞きました。
ートコジラミはどんな虫なのでしょうか?
(東洋産業 大野竜徳さん)
「トコジラミは『シラミ』という名前がついていますが、実はカメムシの仲間で、別名『ナンキンムシ』とも呼ばれます。
カメムシの仲間は、植物や動物から体液を吸って生きています。トコジラミの場合、なんと主に『ヒトの血』を吸います。オスとメスがいますが『どちらも一生血を吸う』のです。しかも、こっそりみなさんが寝静まって暗くなった夜間、特に深夜にです。
明るい時間に出てくると目立って駆除されてしまうので、真っ暗な中、呼気中の二酸化炭素や体温を頼りに、吸血源を探します。吸血しない状態が2週間以上続いてお腹が減ってくると昼間にも出現しますが、通常は光を嫌うため、夜間でも照明がある場合には隠れて出てきません」
ー目視できる大きさなのでしょうか?
(東洋産業 大野竜徳さん)
「卵が1mm、幼虫は1.5~5.5mm、成虫は6~8mm、上から見ると小判型で意外と大きいので目に見えます。でも横から見ると薄っぺらく、1mmの隙間があれば隙間に隠れてしまいます」
【画像①】は、そのトコジラミの超アップ。上記の大きさを想像しながらご覧ください。
トコジラミは「カメムシ臭」がするという...
そんなトコジラミ、より深く知りたい方は、【画像②】に卵の写真もあります。そして成虫にはこんな特徴もあるそうです。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「翅(はね)はなく飛ばないし、跳ねません。吸血は真っ暗な中、こっそりと素早く寄ってきます。でも、カメムシの仲間なので独特のカメムシ臭がします」
ーということは、「カメムシ臭」がするかどうかが発見の手がかりになりますね。
「たくさんいると、うっすら『カメムシ臭』がすることもありますが、残念ながらにおいよりも気づくのは『被害にあってから』の場合がほとんどです。
トコジラミ 刺されたらどうなる?
(東洋産業 大野竜徳さん)
「その刺されたときの皮膚の様子が手がかりです。カメムシは注射針のようなの口で皮膚をブスリと刺すので、刺されたあとが残ります。
とっても臆病なので、迷惑なことに一回の吸血で『気づかれないかな?大丈夫かな?』と言わんばかりに近くを何か所も刺すことも多いようです。被害が続くと、『赤い腫れ』と『かなり強いかゆみ』が1~2週間ほど続きます」
何とも迷惑なトコジラミ。【画像③】はまるで家族のように密集した様々なサイズのトコジラミたちです。
(東洋産業 大野さん)
「実はトコジラミが刺咬する際、血液が凝固しないように唾液を宿主の体内に注入し、唾液に含まれる物質がアレルギー反応を引き起こすのですが、なんとこんな話があります!
1回目の刺咬は無症状(アレルギー反応なし)
2回目の刺咬も無症状(アレルギー反応なし)
3回目の刺咬も無症状(アレルギー反応なし)
4回目以降の刺咬で翌日かゆみを伴う紅斑が出現する
トコジラミに刺されてかゆい、その被害に気付いた人は、過去何度か被害にあっているというわけです」
ー知らないうちにすでに被害にあっているかもしれないと思うと怖いです…。
世界中で被害報告 翅もないのになぜ拡大?キーワードは「ヒッチハイク」
ー世界中で被害が報告されていますが、翅がないのになぜ拡大するのでしょうか。
(東洋産業 大野竜徳さん)
「キーワードは『ヒッチハイク』です。トコジラミが多く報告されているところは、人が多く集まるところ。特に宿泊施設で被害が多く報告されています。まるでヒッチハイクをするように、ヒトの服や荷物にただ乗りしてあちこちへ広がっているようです。
だから自分は外を出歩けなくても、遠くへ行くこともできるし、ビルやマンションの高層階に行くこともできるのです。
逆に言えば居場所からヒッチハイクさせないことが重要です。特に、宿泊施設では要注意!」
ーどうしたらよいのでしょうか。
「これはもしおうちに出た時も同じですが、外泊するときにはまず部屋に入って『トコジラミがいないか』探してみましょう!
トコジラミを探すとしたら、まずはトコ、つまり寝床周りから。ベッドがある部屋ならヘッドボードの裏、マットレスの折り目、ベッドの脚などはよく見てください。和室であれば布団をよく敷く畳の隙間、襖などの隙間によく潜みます。
被害が広がると、床、壁、柱、じゅうたん、畳、壁紙のはがれ目、カーテンの折り目、縫い目、タンス、机、テーブル、椅子、本棚、絵画の額縁、テレビ、照明スタンド、コンセント、エアコンなどの発熱する電化製品にだって潜んでいる可能性があります。
トコジラミは普段はその姿を隠していてなかなか見つかりませんが、【画像④】のような血糞や脱皮殻、死骸、卵なども知っておくと良いです。これもトコジラミがいた証拠です」
(東洋産業 大野竜徳さん)
「これはおうちの中でも同じです。人が長居するところにトコジラミはいつきます。
皆さんがリラックスして休める寝床、ベッド、ソファー、ラグなどを中心に、たんすやクローゼット、吊るされた服、それに上記のような場所などのトコジラミが隠れやすそうな隙間が要注意ポイントですね」
外出先で「絶対に持ち帰りたくない!」どうすればよい?
(東洋産業 大野さん)
「トコジラミがいるかいないかわからなくても、絶対に持ち帰りたくないですよね。海外では大きなニュースになっていますが、絶対に持ち帰らない対策としては、トコジラミをくっつけたり、持って帰ったりしないように気を付けることです。
そのためには荷物をビニール袋に入れてバスルームに置くことや、服などをその辺に放置しないことです。
宿泊施設についたらまず一息つきたいのはやまやまですが、その前に荷物を完全防御しましょう!たとえば…
①まずはバスルームで荷物を広げる。(バスルームが狭ければ部屋の入口でビニール袋を敷いてその上で)
②使わない荷物はスーツケースごとビニール袋に入れてバスルームに置く
③必要なものは袋を敷いて机の上に
④着替えなどは終わったら袋に入れてバスルームへ。
バスルームは水を流すし、つるつるで明るく、人が長居しないのでトコジラミはまずいません」
これからの季節、トコジラミは増える?
(東洋産業 大野竜徳さん)
「トコジラミも暖かい時期が好きです。当然これからの時期は部屋の中でどんどん増えていきます。でも暑すぎたり寒すぎたりするのは苦手です。
夏場、エアコンがなくてもぐっすり眠れる30度未満くらいの気温はトコジラミが一番元気な気温です。
でも夏が過ぎても安心できません。寒い冬、トコジラミは人の生活する部屋の中で暖かければ冬でも吸血して生きていけます。だから、年中いつでも過ごしやすい宿泊施設などが要注意なのです。
そのほかにもいろいろな人が利用する公共交通機関、静かで薄暗くて人がゆっくり過ごす図書館や映画館、待合室などでも見つかる事例が増えてきています。
ー「スーパートコジラミ」という言葉をよく聞きますが…。
(東洋産業 大野さん)
「最近は薬剤が効きにくい、いわゆる『スーパートコジラミ』やトコジラミにそっくりですがつるつる面でも登ってしまう『ネッタイトコジラミ』の報告も増えているため、もし不安なことがあれば専門業者に相談するのが安心です。
そんな時には『これってひょっとしてトコジラミ?』という死骸や脱皮殻などがあれば専門業者ならすぐに答えてくれますので、怪しいものがあれば聞いてみてください」
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