16日告示された衆院東京15区補選。自民党の政治資金パーティ裏金事件で政治不信が高まる中、選挙区の江東区は政治とカネを巡る事件が相次いでいることもあり、有権者は各候補者の姿勢を見極めようと厳しい視線を注いだ。(衆院補選取材班)

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◆「人の心をカネで買ってはいけない」

 複数の候補が演説したJR亀戸駅前。これまで地域に根差してきた人に投票してきたというアパート経営者の目黒和彦さん(75)は、候補者を見て「知っている人はあまりいない」とぽつり。政治にある程度お金がかかることには理解を示しつつ「陣中見舞いと買収の線引きはあいまいだけど、人の心をお金で買っちゃいけないよね」と指摘。「政治とカネ」を巡る問題には、「透明性が必要」と話した。

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 買い物帰りの主婦(70)は「買収など悪いことにお金が使われている。政治にお金は必要ない」と断言。昨年4月の区長選を巡る公選法違反事件の不信感から、求めることとして「誠実にやってくれる人」を挙げた。駅前でバスを待っていた無職男性(74)は、候補者たちを見て「自分たちの利益のために出馬しているのではないか」とピシャリ。「不正に厳しい姿勢で望んでいるような人はいない」と話した。

◆「どの候補も自分はクリーンだと言う」

 仕事先へ向かうために同亀戸駅にいた会社員男性(61)は、新人候補の街頭演説に足を止めた。「選挙しなければいけなくなった理由である自民党の候補が出ないことで、論点がぼんやりした選挙になっているのは残念」と指摘。「どの候補も自分はクリーンな候補だと言う。消去法で選んでいくしかないかな」とぼやいた。

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 公職選挙法違反罪で有罪判決を受け、議員辞職した柿沢未途氏の地元、門前仲町近くに住む高橋京子さん(68)は「国民の収入が減っているのに、物価高や増税で出ていくお金が増えた。なのに政治家は大金を動かしていい思いをしている」と憤る。「政治にお金は必要だけど、きちんと都民に還元してほしい」と願った。

◆「問題ばかり、区民として恥ずかしい」

 昼前に富岡八幡宮そばの商店街を歩いていた菅沼悦子さん(75)は年金暮らし。「政治にお金はある程度は必要だけど、選挙のために配ってはだめ。正しく使ってくれないと」。クリーンな政治を訴える候補者の演説を聞いても「今は良いことを言ってるけど、そのうちみんな長いものに巻かれてしまうんじゃないか」と不信感を募らせた。

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 東京メトロ東陽町駅近くで買い物に向かう途中だった無職掛川佳子さん(71)は「江東区では問題を起こす人ばかりというイメージが付いて区民として恥ずかしい。選挙や政治になぜそんなにお金がかかるのか理解できない。選挙は候補者の人柄をじっくり見て、立派で尊敬できる人を選びたいが、こう不祥事ばかり続くと何を信じたらいいのかわからない」と困惑した様子だった。

◆「他候補の批判、どこを向いているのか」

 また仕事の休みで区役所を訪れた男性会社員(61)は「政治にはカネがかかるから裏金の問題が起きたのだろう。全て収支報告書に記載して国民にオープンにし、誰に見られても大丈夫な活動をすべきだ」と強調した。  同区東陽の交差点で午前、諸派新人の訴えを見ていた同区深川の自営業楢崎太郎さん(60)は「選挙をやるのには金がかかり、政治に金はある程度必要だと思う」と話す。一連の政治とカネの問題については「けしからん」と怒り、区では不祥事が原因で選挙続きとなっていることに「いいかげんにしてほしい」とぼやいた。  近くの自営業女性(61)は「政治に金が必要ではいけない」ときっぱり。「金が必要なら、お金を持っている人しか選挙に出られず、政治が限られた人だけのものになってしまう」と話す。各候補の訴えについて「他候補のネガティブな批判になっている。どこを向いているのかわからない」とぼやいた。

◆「カネをかけるしかできない政治は変えねば」

 同区東陽の公園で午前、子どもを見守っていた近くの主婦、櫛部日花(はるか)さん(26)は政治と金について「選挙などである程度必要かもしれないが、一般市民から見たら金額的には大きいと思ってしまう。収支を明確にしてほしい」と話す。「働いている人も育児をしやすい環境を整え、子どもに優しい社会になってほしい」と候補者に期待した。

候補者と握手する支持者

 午前9時半ごろに諸派新人が政治刷新を訴えていた都営地下鉄門前仲町駅近くで、無職佐藤和之さん(83)は「カネをかけた政治しかできない今の政権は変えないといけないんじゃないかと思う」と話した。国政選挙では自民党の候補に投票をしたこともあったが「報道をみていると、今のままでは何も裏金の問題は根本的には変わらないと思った」といい、これまでとは違う候補に投票しようと考えているという。

◆「みんな大変だからクリーンな人を」

 午前10時ごろに同駅近くで散歩をしていた女性(47)は「政治家は政治にはお金が必要だと言われても、おかしな使い方をしているお金も絶対にあると思うし、賛成できない」とあきらめ顔。投票に行くかどうかも含めてまだ決めていないという。  午前11時すぎ、無所属候補者の事務所前を通って毎日買い物に行くという江東区の無職保坂節子さん(82)は足を止め、道路に停車中の選挙カーを眺めていた。「若い人がマンションのローンとか、子育てにお金がかかるでしょう。みんな大変だから、お金にクリーンな人を選びたい」と話した。政治にカネは「ある程度、必要だと思う。子育てや高齢者福祉に使ってほしいね」。

◆「政治改革より政治家改革が必要」

 午前11時半ごろ、東陽町駅近くで候補者の演説を聴いていた無職の男性(80)は「事務所をいくつも運営するためには一定の金が必要だと思う」と一定の理解を示すものの、相次ぐスキャンダルに「政治家はどこかに下心があるのではないかと思ってしまう。金の使い方が汚い人は絶対選びたくない」と語った。  昼過ぎ、江東区役所に手続きに来た契約社員の鈴木昇治さん(55)は「裏金というけど、何のために使ったのか、詳細を明らかにできるなら問題ないと思う」。「使い道によっては政治にカネは必要。国会議員なら国のために、国際平和のために働いて」と注文した。

街頭で候補者の演説に耳を傾ける人たち

 午後2時ごろ、買い物帰りに豊洲駅近くで演説を聴いたパート従業員の越後良美さん(69)は「裏金問題も庶民なら逮捕されてもおかしくない話。どれほど金が欲しいのかと思う。政治改革よりも政治家改革が必要」とあきれた様子だった。  午前11時半ごろ、東京メトロ豊洲駅前で新人の演説を子連れで聞いていた主婦(38)は「今の政治は不均衡。それが自民党とカネの問題にもつながっている」と話した。政治活動の資金は「議員が政策や成果を分かりやすく発信するためなどに必要」とした上で「正しく使って」と求めた。

◆「領収書は1円単位まで出してほしい」

 昼前、演説会場の近くにいた無職の増田勝重さん(77)は「投票の決め手がない」と困り顔。政治とカネの問題には「国会議員は自分たちに都合の良い法律を作っている。税務監査を民間と同じように厳しくやってほしい」と批判し、政治活動に資金は必要と認めるが「領収書は1円単位まで出してほしい。政治資金パーティーなんか必要ない」と注文した。  会社役員女性(66)は「野党にも与党にも期待できない」、無職の男性(85)も「50年以上、投票してきたけれど今回は行かない。政治は当てにならない」と政治への不信感を口にした。 

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