大勢の人に愛されるチョコレート。実はこの先、原料のカカオ豆の高騰で食べられなくなるかもしれません。甘くない現実のなか、ITの力で産地と日本をつなぐ架け橋になることを目指す企業があります。

<ミモザショコラトリー 渡邉栞代表>
「テンパリングという作業です。チョコレートの艶が良くなって、口どけも良くなります」

ショーケースに並ぶチョコレート。浜松市中央区の専門店「ミモザショコラトリー」です。

<ミモザショコラトリー 渡邉栞代表>
「これがカカオです。当店では、中南米のカカオを使っているんですけど、食べた時の香りが違いますね」

南米産のカカオ豆を、オリジナルでブレンドしたチョコレートが人気です。

<浜松総局 野田栞里記者>
「そのカカオをめぐって、いまどういうことを実感されてますか」

<ミモザショコラトリー 渡邉栞代表>
「1.5倍くらい価格は上がっています。すごく高騰しているということは、それだけ貴重な食べ物だっていうことでもあるので」

カカオ豆をめぐってはいま、世界中で争奪戦が起きています。

2023年の年末には、1トン当たり4000ドル程度だった価格は、2024年4月に入って1万ドルを上回り、約3か月で2倍以上に急騰しました。

大手メーカーも、チョコレート菓子を軒並み値上げする事態に。大きな理由の1つが、猛暑や干ばつといった産地の天候不順で、カカオの記録的な不作が起きています。

深刻さを増すカカオ産業。この現状を打開しようと、挑戦する企業が浜松市にあります。

<OCA 野澤浩樹代表>
「そっちのカカオ農園の進み具合はどうですか」

<ベトナムのカカオ農園代表>
「いま進めています。来月からもう一回、有機肥料を農家さんに分配します」

ベトナムのカカオ農園とやりとりするのは、カカオ事業を行う企業です。

<OCA 野澤浩樹代表>
「こちらが我々のチョコレートのお店になります。ベトナム・バリアブンダウ省で採れたチョコレートです」

OCAでは、コロナ禍の2020年から、契約する農園で採れたカカオを全て買い取り、オリジナルのチョコレートを製造・販売しています。

ITサービス企業も経営する野澤代表。仕事の関係でベトナムを訪れた際、驚きの現状を目の当たりにしました。

<OCA 野澤浩樹代表>
「農家さんは、みんな収穫したラグビーボールよりも、少し小さいくらいの大きさのカカオを、一輪車であったりとか、背中に背負ってとか、籠に入れて運んだりとかしているんですよね。農家さんと話せば話すほど、もう非常に深刻でした」

目指すのは、カカオ栽培の近代化です。

<浜松総局 野田栞里記者>
「地面から顔をのぞかせているセンサーは、土の成分や温度といった情報を集めるものだということです」

収穫量や質の向上のため、注目するのはIT技術の活用です。カカオはもちろん、農業全般のカギとなる『自然』に対応しようと、2023年から生育データの収集と分析を進めています。

<OCA 野澤浩樹代表>
「相手は自然になりますから、常に変化している。あらゆるデータをキャッチして、分析して改善する方法を見出すということをしなくてはいけないと思います」

現地では、農園の変化や状況を記録し、メタバース=仮想空間での農園の再現も目指しています。遠隔管理を可能にするのが狙いです。『昔ながら』の栽培方法が続くカカオ業界を、新たなステップへ。ITの力で持続可能なカカオ栽培を目指します。

<浜松総局 野田栞里記者>
改めて、いま起きているカカオの高騰の原因です。

10年以上、チョコ作りに携わるミモザショコラトリーの渡邉代表によりますと、
▼産地の異常気象
▼止まらない円安
▼カカオの木が病気になったり、代替わりをしていたりして、収穫量が減少していることなどが挙げられるということです。

<滝澤悠希キャスター>
「癒しのチョコレートになるカカオそのものが持つ力、価値って大きいですね」

<浜松総局 野田栞里記者>
取材したOCAは、チョコレートのほかに、通常だと廃棄されているカカオの皮から酒を造るなど、カカオを余すところなく使う=カカオそのものの付加価値を高めるアプローチもしています。

歴史的なカカオの高騰。産地が抱える苦い課題に対し、自分事として目を向けるきっかけにしたいと思いました。

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