警察官の不祥事が相次ぐ中、鹿児島県警の前の生活安全部長の男が警察情報を第三者に漏らした疑いで逮捕・送検されました。
3000人いる県警の警察官のうち本部長の下に8人しかいない階級「警視正」を務めた男の逮捕。専門家も「警察組織の中枢を担う部長職の逮捕は大問題」と指摘します。

国家公務員法違反の疑いで逮捕送検されたのは県警の前の生活安全部長、本田尚志容疑者(60)です。

本田容疑者は県警を退職した直後の今年3月下旬、警察官時代に入手した現職警察官1人と一般人1人の名前や年齢が書かれた内部文書を第三者に郵送し、業務上知りえた秘密を漏らした疑いです。県警は、「捜査に支障がある」として認否を明らかにしていません。

県警は去年10月、ウェブメディアに内部資料が掲載されたことを受け、50人態勢の調査チームを立ち上げました。そして、ことし4月、巡査長の男を、福岡市の60代の会社役員に内部文書を提供した疑いで逮捕。その後の一連の捜査で本田容疑者を逮捕しました。

元巡査部長と共犯関係はないとみていますが、本田容疑者の情報漏えい先が福岡市の60代の会社役員かどうかは「明らかにできない」としています。

本田容疑者は1987年に県警に採用され、鹿屋警察署長などを務めた後、3年前に警視正に昇進。おととし県警本部の生活安全部長に着任しました。そして、ことしの3月25日に退職の際、警視長に昇進しました。

県警の警察官およそ3000人の中で警視正は本部長の下に8人しかいない階級です。県警本部は刑事部や交通部など5つの部に分かれていて、本田容疑者が部長だった生活安全部は、犯罪の取り締まりや防犯、サイバー犯罪対策などを行う部署です。

県警では、今年度これまでに3人の現職警察官が逮捕されています。3日はそのうち、女子トイレに侵入し盗撮のした疑いで逮捕送検されていた枕崎警察署地域課の巡査部長・鳥越勇貴被告(32)が起訴されました。

相次ぐ県警の不祥事に街は……

(30代会社員)「だれを信じていいのか分からない。社会人としてどうなのかなと」

(40代自営業)「(どう感じました?)だめでしょ。呆れてますよね正直」

(70代女性)「(情報漏えいで)取り締まる側がそんなことをしていたら信用できなくなる」

(20代会社員)「市民を守る立場でいつも頑張っているのが、少人数の行動で見え方が変わってしまうのは残念」

(70代男性)「警察の方だから間違いないだろうとか、そういうのが我々の頭の中から払しょくされた」

県警の幹部によると「本田容疑者は勤務態度はまじめで比較的おとなしい性格」だということです。また県警OBの一人は「変なうわさは聞いたことがなく、逮捕されて驚いた」また、別のOBは「現場の警察官がふびん。時間がかかると思うが、後輩たちには信頼回復のため頑張ってほしい」と話しています。

(京都産業大学 田村正博教授)「県警のリーダー層の1人。大変まれなケース、それだけ重大にうけとめなければいけないと思う」

警察行政法などが専門の京都産業大学の田村正博教授です。元福岡県警本部長や警察大学校校長などを歴任しました。今回、犯罪を取り締まるべき生活安全部の前のトップが逮捕されたことについては、「情報保護への意識で、世間とギャップがあるのではないか」と指摘します。

(京都産業大学 田村正博教授)「情報の保護、秘密保持を組織全体に伝えていく立場。その立場の人間の犯行ということで、非常に大きな問題ととらえなければいけない」

相次ぐ不祥事に加え“組織の中枢を担う立場”の逮捕に「全容を解明し説明責任を果たすべき」と話します。

(京都産業大学 田村正博教授)「県警全体としては、過去の問題をすべて明らかにして前に進んでいく。よりよい県警をつくっていく、その一つの過程という見方もできる。過去にいろいろあったが、新しい警察をつくっていく取り組みが大事。多くの県民にわかってもらうことが大切だと思う」

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