SNSなどを通じて恋愛感情や親近感を抱かせて金をだまし取る、「SNS型ロマンス詐欺」。山口県内でも被害が多く発生しています。

被害者
「お金を返してほしいというのが一番ですね」

今後、被害者を少しでも減らしたいという思いで、実際被害にあった人が取材に応じてくれました。被害者の経験や思いから、どうすれば被害に遭わないか考えたいと思います。

SNS普及で被害が増加

山口県内でも被害が多発している「SNS型ロマンス詐欺」とはどういったものか。「マッチングアプリ」という恋人や結婚相手を探す出会い専門のSNSがあります。こういったSNSを通じて犯人が被害者と知り合い、恋愛感情や親近感を抱かせて金をだまし取るものです。SNSが日常的に使われるようになって、増えてきている詐欺の手口なんです。

山口県警によりますと、県内では今年に入って4月末までの被害件数は12件、被害額はおよそ6091万円でした。このうち4月は2人の男性がそれぞれ1000万円の被害にあうなど、被害が高額になっている状況です。なぜ信用し、金をだまし取られるのか。被害者の言葉から実態を探りました。

親密さをアピール、別のSNSへ誘導も

被害者
「私と同じような被害に遭われる人が今後、少なくなるように協力できることがあれば協力したい」

山口県内に住む40代の会社員の男性は、ことし、SNS型ロマンス詐欺の被害に遭いました。

被害者
「1000万超えるぐらいの被害にあいました」

きっかけは、男性が結婚相手を探そうと始めたマッチングアプリです。犯人と思われるアカウントは現在強制退会させられていて、やりとりをみることはできません。男性は3月上旬、マッチングアプリで「30代前半、アジア系ハーフの女性」を名乗る人物と知り合いました。お互いの趣味など数回やりとりをしていると、すぐに「別のSNSで交換しませんか」と誘導されたといいます。

被害者
「別のSNSに誘導されたときは詐欺とかは思い当たりませんで。わりとすぐにいいですよと答えました」

SNSでは、親密な関係と感じられるようなやりとりも・・・

実際のやりとりより:相手
「親愛なるあなた、もう私の彼氏になったのですから、私を別の呼び名で呼んでくれませんか?」
被害者
「あなたはダーリン、ハニーとか呼んでくれていますね、男性から女性に呼びかける場合普通何て言うのでしょう?」

日常的な写真が送られてくるようになり、男性の気持ちも次第に変化していきました。

被害者
「私としても脈ありかなと思っていたので、頑張ってみようという気持ちになりました」

ネットショップ持ち出し金銭要求

しかし数日後、この人物からあることを持ちかけられました。

被害者
「オンラインでショップみたいなものを経営できる、そのためにはお金の投資が必要だと」

ネットショップの経営をすすめられたのです。

被害者
「信じてしまったというところもありますし、彼女(女性名義のアカウント)が実際に自分もやってるんだということを言われました。裕福そうな方で、自分もやってるんだからうまくいくみたいなことを言われました」

男性が経営していたというネットショップのサイトでは、商品として主に、子ども向けのおもちゃやぬいぐるみを扱っていました。売れ行きは好調と感じていたそうですが・・・

被害者
「次から次へと顧客から発注が来るんですね。そのためにお金を用意しないといけない」

このサイトの仕組みは、商品を仕入れるために現金を支払わなくてはなりません。ただ、販売した売り上げが入金されるには、10日以上かかるときもあったと言います。次々と発注が来るので、自分の資金で商品を仕入れ、入金を待つしかない状況でした。

被害者
「お金がもうかる段階とお金がなくなっていく過程の2段階があって、だんだん追いつかなくなる。お金が足りなくなるので、もうお金を注入するしかない」

経営者としての責任感も芽生えていた男性は、商品を仕入れるために指定された口座に送金。8回に渡って、合わせておよそ1100万円を振り込みました。

被害者
「売り上げを引き出してみようと試みたんですね、そしたらネットショップのサービスから、これこれこういう理由で引き出せませんということを言われて、それが彼女(女性名義のアカウント)の説明と合わなくてこれちょっとおかしいなと思って」

警察の注意喚起で詐欺を「確信」

山口県警ではホームページ上にSNS型投資・ロマンス詐欺の注意喚起を促すものを掲載しています。「もしかして・・・」と思った男性はこのようなサイトを見たことで、詐欺が「疑い」から「確信」に変わりました。

被害者
「怒りを彼女(女性名義のアカウントに)にぶつける手もあったんですけどそれ以前に冷や汗ものでしたので、どうしようかなって考えまして、相談相手もいないしというところでいきなりに警察に相談にいったと」

警察に相談すると「SNSの人物と連絡をとらないように」と言われました。その人物から何度も電話がかかった後に、アカウントは削除されました。結婚相手を探そうと始めたマッチングアプリ。わずか1か月でネットショップの”経営者”になり、結果として1000万円以上をだまし取られました。

「結婚したい」思いを悪用

被害者
「両親には伝えておりませんで、両親も息子には結婚してもらいたいと期待があるので、私も頑張らないといけないというところで頑張ろうとしていたんですけど、努力の方向がおかしな方向に行っちゃったかなと」

恋愛感情や親近感につけ込む卑劣な手口ですが、振り返って感じたこともありました。

手口にほころびも

被害者
「冷静になってみるとそんなにすばらしい手口ではないのかなと。随所にほころびがあるといいますか」

この人物は片言の日本語を使っていて、電話の中で理解できないやりとりもありました。ほかにも、振り込み先の口座が毎回変わったり、会う約束をするとはぐらかされたり。冷静になれば早い段階で「詐欺」だと気づけたかもしれなかったのに、なぜ気づくことができなかったのでしょうか。

被害者
「舞い上がってしまったところがあったのかなと。なかなかこれまでいい女性の縁が無くてOKの返事をもらうことがありませんでした。今回、初めて恋人になってくれるみたいなことを言われましてそれで調子に乗ってしまったことが正直あったかと、それが大事な理由かと思います。お金を返してほしいというのが一番ですね」

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