2023年夏、大きな波紋を呼んだ「青森ねぶた祭での暴力行為」。その影響で、ねぶた師・立田龍宝さんは、この夏の作品制作の場を1つ失いました。

そのなか「新たなスタート」の思いも込め手がけた作品が、来週6月8日から宮城県仙台市で開幕する東北絆まつりに出陣することが決まりました―。

※リンクから当時のニュース記事(動画あり)などをご覧いただけます。

精魂込めて制作のねぶたの下で“暴力行為”… 苦難の2023年…

神経を研ぎ澄ませて筆を動かすのは、ねぶた師の立田龍宝さんです。この日は、東北絆まつりで、宮城県仙台市の街中を練り歩く中型ねぶたを、特別な思いを込めながら仕上げました。

立田龍宝さん(39)
「自分の気持ちでは、去年いろいろあったので、1回切り替えて、この題材で出発できれば―」

立田さんにとって2023年は、苦難の年となりました…。

自身が精魂を込めて作り上げた大型ねぶたの下で、運行団体・青森青年会議所のスタッフが暴力行為をしていたことが発覚。青年会議所は、再発防止を徹底させるために2024年の祭参加を自粛することになり、立田さんも制作の場を失うことになりました―。

「頭の中でフラッシュバックはします…」未だに晴れない心

その衝撃は大きく、一冬を越したあとも立田さんの心に影を落としていました。

立田龍宝さん(39)
「頭の中でフラッシュバックはします。あのことがなければ、もう一台いつものように作れて、いつものスケジュールでねぶた小屋に入れて…。と頭の中をよぎったりするけど、どうもできないので…」

失意の立田さんのもとに舞い込んだ仕事が、絆まつりの作品制作でした。題材に選んだのは自身の原点である、ねぶた師としてのデビュー作『古事記』に登場する英雄「倭建命(やまとたけるのみこと)」です。

立田龍宝さん(39)
「デビュー10年経って、11年目に大型ねぶたではないですけど、皆さんの目に触れる新たなスタートを表現できれば―」

制作では、デビュー作を再現するのではなく、随所に新たな表現を加えています。なかでも異なるのは、ねぶたの迫力を大きく左右する墨で身体の輪郭を描く「書き割り」です。

暴力行為問題を乗り越えて挑戦する「新たなねぶた制作」

大型ねぶたでも、ほぼ試したことがない新しい墨の線に挑戦しました。

立田龍宝さん(39)「これは単調。ずっと同じ太さできている。(挑戦したのは)太くなって細くなって、また太くなる線。それが難しい。11年やってきて、まだ終わりではないので、もっと探っていきたい」

立田さんが目指すのは、品格がありながら迫力溢れる倭建命。ねぶたを作れることへの感謝、そして喜びをかみしめて作品に命を吹き込みます。

立田龍宝さん(39)
「感謝もそうだし、心の復興。その一部になってもらえたら。迷いなく描けたと思っているので仕上げて、この勢いを大型ねぶたに持っていけたら」

立田さんは、運行団体で起きた暴力行為を乗り越えて前を向き、ねぶた師としてのさらなる高みを目指し筆を走らせます。

立田さんのねぶたは、来週の土曜日6月8日に絆まつりの会場に展示され、9日のパレードに出陣します。

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