火砕流が発生し、住民全員が一時避難した屋久島町・口永良部島の爆発的噴火からきょう29日で9年です。人口減少や移住者の増加で「住民の3分の2が当時を知らない」ともいわれる中、災害の記憶をどうつないでいくか課題となっています。
口永良部島に住むMBCふるさと特派員・池添慧さんの取材でお伝えします。

屋久島からおよそ12キロの距離にある、口永良部島です。火口からは29日も、薄い噴煙が上がっていましたが、9年前のきょう29日は…。

2015年5月29日、口永良部島の新岳で爆発的噴火が発生。噴煙が火口からおよそ9000メートル以上上がり、火砕流は集落の近くまで達しました。

噴火警戒レベルが国内で初めて最高の5「避難」に引き上げられ、住民ら137人全員が島外に避難。火砕流放出に伴うけが人は1人で、全員無事だったものの、住民が島に戻れたのはおよそ7か月後でした。

(口永良部島・本村区長 関口浩さん)「今まで見たことがないような噴煙だったので驚いた」

(くちのえらぶ商店 貴舩恭子さん)「みんな慌てて道路に出て行って、当時子どもたちとも離れていたので、学校の方はどうなっているのか不安を抱えながら避難したのを覚えている」

しかし、島では、当時を知る住民が少なくなっています。島の人口は今年4月、進学や就職などで100人を割り込み、今は96人に減少。島に移住する若者も増えていますが…。

Q.火山島に心配はあった?
(今年4月に移住 前田慶太さん)「あまり心配せずに来た」「煙はほぼ毎日出てい印象。火山は活発に動いているんだなと」

(口永良部島・本村区長 関口浩さん)「(9年前の)噴火を経験した人が、島の中で30人くらいしかいない。(島民の)3分の2が噴火を経験していない」

気象台によりますと、口永良部島では、4年前に一時、噴火活動が活発化したものの、それ以降、29日まで観測されていません。

しかし、去年6月ごろから9年前に噴火した火口とは別の「古岳」で、山体が膨張した状態が続き、火山性地震は多い状態です。噴火警戒レベルも先月、2から3の「入山規制」に引き上げられました。

(くちのえらぶ商店 貴舩恭子さん)「常に緊迫した緊張感をもって暮らす必要はないと思うが、折に触れて何が起きてもおかしくないと、常に自分に言い聞かせて備えをしておく必要があるなと思う」

町は2016年以来、悪天候やコロナの影響で中止していた島全体の防災訓練を今年中に実施する予定です。

島内では観光案内所に火山の危険性を伝えるパンフレットを置き、酒店には誰でも使える防災ヘルメットが準備されています。

(口永良部島・本村区長 関口浩さん)「過信することなく、噴火を経験していない人たちにも防災意識を持ってもらえるようにしたい」

9年前の記憶をどうつないでいくか?課題は残されています。

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