北朝鮮が拉致問題についての再調査を約束した、「ストックホルム合意」から29日で10年です。県警によりますと、拉致された可能性を否定できない人たちは、鹿児島県関係では37人いるとされています。
時間だけが過ぎていく中、家族は再会を待ち続けています。

(特定失踪者の家族 前山利恵子さん)「いつになったら解決して、喜ぶ日が来るのかなって」

鹿屋市に住む前山利恵子さん(76)です。両親の園田一さん・トシ子さんは、北朝鮮に拉致された可能性が排除できない「特定失踪者」とされています。

53年前の1971年12月、両親は大崎町の自宅から宮崎空港へ向かう途中、乗っていた車ごと行方が分からなくなりました。

当時県外に住んでいた前山さんは10か月前に結婚式を挙げ、これが両親との最後の思い出になってしまいました。

(特定失踪者の家族 前山利恵子さん)「結婚式を挙げて、見送ってもらったのが最後。鮮明に頭の中にこびりついている」

失踪から53年。今年で一さんは106歳、トシ子さんは95歳を迎えます。失踪前に2人と交わしていた手紙は、今も大切に残しています。

(特定失踪者の家族 前山利恵子さん)「私にはこれが宝」

ほかにも大切にしているのが…。

(特定失踪者の家族 前山利恵子さん)「このジャンバーが父のお気に入りで、今も大事にしている」

一さんが大事にしていたという服。もう一度、袖が通すその日まで、母・トシ子さんのスーツと一緒に、丁寧に手入れをして保管しています。

(特定失踪者の家族 前山恵理子さん)「持って迎えに行けたらいいんだけど。しょうがないね」

拉致の疑いが否定できない人は全国でおよそ900人、鹿児島県関係では37人いるとされています。拉致問題解決へ、10年前の29日、転機が訪れました。

(安倍晋三首相・当時)「すべての日本人の包括的全面調査を行うことを日本側に約束した」

スウェーデンの首都・ストックホルムで開かれた日朝協議で、北朝鮮が、特定失踪者を含む拉致被害者らの再調査を行うと約束したのです。

(特定失踪者の家族 前山利恵子さん)「小躍りして喜んだくらいだった」

しかし、2016年、日本政府の制裁強化から、北朝鮮は調査の中止を一方的に発表。さらに今年3月には、金正恩総書記の妹・金与正氏が「日本側とのいかなる接触も交渉も無視して拒否する」との談話を発表しました。

(特定失踪者の家族 前山利恵子さん)「落胆してますね。足元を見られているじゃないですか」

こうした中、政府は28日…

(林芳正・官房長官)「引き続きストックホルム合意は、有効であると考えいる」「引き続き全力で果断に取り組んでいく」

再調査の合意が今も有効との認識を示しました。

(特定失踪者の家族 前山利恵子さん)「年齢は経っているけど、諦めずに足が動く限り活動していきたい。忘れられたらおしまい」

ストックホルムの合意から10年経ち、被害者、家族ともに高齢化が進んでいます。今も、一刻も早い再会の日を待ち望んでいます。

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