「身寄りがない」高齢者が増え社会的な大きな問題になっています。そんな中で兵庫・神戸市が新たな終活支援サービスを開始します。導入の背景には今後予測されるひとり暮らし高齢者の増加がありました。専門家らに取材した情報をまとめました。

行政が『終活支援』を始める理由とは?

 神戸市が新たなサービスを今年6月に始めます。これまで、身寄りがなく1人で暮らしている人が亡くなった場合、火葬や納骨、葬式を行ってくれる人がいませんでした。葬祭事業者と生前契約を結んでいれば行うことができますが、様々な不安を感じて1歩踏み出せない人も多くいるといいます。

不安な点① この契約が金額含めて妥当なのか。相談する相手もいない。
不安な点② 自分が死んだ後にちゃんと履行されているかどうか確認するすべがない。もしかしたら悪徳業者もいるかもしれないと思うと不安になってしまう。
不安な点③ 亡くなったことを業者に知らせるすべがない。病院で亡くなった場合も家で亡くなった場合も、病院関係者も警察も、どこの葬儀業者とどんな契約をしているかはわからない。

神戸市が今年6月開始『エンディングプラン・サポート事業』

 こうした不安をどうにかできないかということで神戸市が始めるのが『エンディングプラン・サポート事業』です。概ね65歳以上の身寄りのない市民が、葬祭事業者と契約する場合に、行政の担当者がその契約に立ち会ってくれます。そして亡くなった場合には、市が事業者に連絡をして、葬儀・納骨などが行われるように行政が確認してくれる、というものです。費用は本人が負担します。

例えば、延命治療をしてほしいかどうかなども、事前に神戸市に伝えておけば何かあった際に市が病院に伝える、というようなサポートも行います。また年に一回程度の安否確認も行うということです。

 実際にこのような支援の動きは各自治体で広がりを見せていて、関西では兵庫・高砂市や京都市などでも始まっています。2015年に開始した神奈川・横須賀市では、約160人が登録していて、これまで約80人について実施しています。

 登録する人は自分らしく最期を自分のお金で終えることができるのが嬉しいという声が上がっているということです。

全国の自治体が取り組み

 次にこうした取り組みの背景について見ていきます。

 現在は身寄りがない人が亡くなると自治体が火葬・納骨をすることになっていて、最低限の葬儀・火葬の仕方になるので、自分の希望通りにはなりません。自分の希望通りしたいという場合には、司法書士・弁護士・民間事業者などに依頼する必要がありました。ただどちらにせよ葬儀代とは別に費用がかかるため、金銭的な余裕がない場合は利用は難しい状況でした。新たな自治体のサービスではそうした本人の希望が実現しやすくなります。

 行政側から見た場合はどうなのでしょうか。身寄りがない人が亡くなった場合、労力や費用がかかります。身寄りがいるのかいないのかなどの確認だけでも2週間以上かかる場合があり、仮に親族などがいた場合にも遺骨を引き受けてくれるかなどの意思確認で、さらに時間がかかることもあるといいます。そして火葬などをする場合は1人当たり10万円~20万円の費用がかかるということです。亡くなった人に資産があれば費用にあてることができるということですが、資産がなければできません。今後、高齢化が進んでいくと、こうした費用が社会的な課題となっていきます。

"ひとりぼっち"高齢者の増加が深刻な問題に

 国立社会保障・人口問題研究所によりますと、現在は全世帯における65歳以上のひとり暮らし・高齢者の単身世帯が約13%となっています。それが2050年には21%、5世帯に1世帯はひとり暮らしの高齢者になるとされています。

 この21%は、子どもがいても別居しているなども含むため、必ずしも身寄りがないという場合ではありません。しかし、国立社会保障・人口問題研究所によりますと、2050年にひとり暮らしの高齢男性の6割は未婚だといい、身寄りがないひとり暮らしになる可能性が高いということです。現在も独居の高齢者の方というのは問題になっていますが、今後より増えていくということになります。

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