軽度の発達障害がある3人の子どもを育てた母親が、発達障害の若者が働ける「カフェ」を開こうとしています。自身も、子育てでさまざまな壁にぶつかってきました。そんな経験から、障がいがある人やその家族の“居場所”を作ろうという取り組みです。

(吉村貴世さん)
「見えてきましたここです」

いつも、元気いっぱい。明るい笑顔の吉村貴世(よしむらきよ)さん。土佐市にある小児科があったこの場所に、クラウドファンディングを使ってあるカフェをオープンしようとしています。

(吉村貴世さん)
「軽度の発達障害の子たちが社会を学べる場所と、地域の交流ができるように地域食堂をやっていきたいと考えてる。カフェgringrin(グリングリン)と言いますがgrinというのがニッコリ笑顔という意味なので、みんなが笑顔になれるようなカフェになったらなと名付けました」

貴世さんは、軽度の発達障害がある3人の子どもの母親です。

サッカーをしていて身体能力の高い長男。癇癪を起こすことがしばしばありました。

車と絵が大好きな次男。人との距離感が近く、煙たがられることがあったといいます。

勉強が得意で、完璧主義な三男。コミュニケーションがとにかく苦手で特定の人としか話せませんでした。

一人一人、性格や特性は違います。

(吉村貴世さん)
「誤解を招きやすい。見た目も普通だし、ある程度受け答えもできるので普通の子となんら変わりないように見られることが多いんですけど、そこの違いがわかってもらえずに、ただのわがままだって言われたりとか、怠けているんじゃないかって思われたりとか、勘違いされることが一番多いのが軽度発達障害の子だと思う」

発達障害とは、生まれつきの脳機能の働きの違いによるもので「本人の努力がたりていない」とか、育て方や家庭環境に原因があるわけではありません。

発達障害の主な特性を大きくわけると…

コミュニケーション障害やパターン化した行動、興味・関心に偏りやこだわりが見られる「自閉スペクトラム症」。

集中できない、じっとしていられない、衝動的に行動する「注意欠陥多動性障害」。

読む、書く、計算することが極端に苦手な「学習障害」に分けられます。ただ、この3つの症状が重なるケースもあり、貴世さんの子どもたちも、それに該当します。そんな3人の子育てに貴世さんは「自分一人の力では限界があった」と話します。

(吉村貴世さん)
「この子が暴れたりするのとか、言うこと聞かないっていうのも私の関わり方が悪いのかなと思ってたし、愛情が足りないのかなと思ったこともあるし、本当に育児ノイローゼっぽくなってしまって『施設入れたいって』叫んだこともあるし…。診断結果を受けて『障害があるんだな』って、今後のことをどうしようかなっていう不安と同時にちょっとほっとしたんですよね」

「『お母さん、今までお母さんの子育て間違ってたわけじゃないんだよ』って主治医の先生に言われて、ちょっと泣きながら帰っちゃいました。これが障害だったら手立てがあるんじゃないかなっていうのを思ったので」

この日訪れたのは、高知市にある放課後等デイサービス「スマイルプラス」。

放課後等デイサービスとは、障がいがある子どもたちのための児童福祉施設で6歳から18歳までの小・中・高校生を対象に発達支援を行っています。県内には107施設あり、毎月およそ1500人の子どもたちが利用していて、貴世さんの次男と三男もここに通っていました。子どもたちだけじゃなく、貴世さんにとっても放課後等デイサービスは大きな心の支えとなりました。

(吉村貴世さん)
「(次男の)やらかし度合いがうちひどいので、そのときはいつも池くんがまず最初に子供の話より『お母さんお体大丈夫ですかって?』声かけてくれるんですよ。一言がすごいうれしい。こっちのこともちゃんと考えてくれてるんだなって、目一杯子育てしているのを認めてくれてるなっていうのはすごく感じるので」

(スマイル プラス バウム 池那於人さん)
「とりあえず状況はもう彼のことは知っているので『お母さん大丈夫ですか』につながったのかもしれないですね。かなり参ってたときもあったので」

(吉村貴世さん)
「自分の味方がおるっていうのはすごい大事なことなので、だからこそ今の子供たちの成長があるんで」

スマイルプラスでは、人との関わり方や、ものの見方など一人一人の個性に寄りそった自立訓練や療育を行っています。

(スマイル プラス バウム 池那於人さん)
「こちらがおやつの時間にする手順を視覚化したものになります。ここについているのが要求カード。お子さんたちは要求カードを使って先生に伝えられるようになってます。伝えるのが苦手なお子さんがいるので、要求カードを渡すことによってコミュニケーションを成立させる、そのためにアイテムを使っております」

こちらはリラックスするための空間スヌーズレンルーム。

動く光や水の中を通る気泡で、五感を優しく刺激し、気持ちが落ち着く効果があると言われています。

(スマイル プラス バウム 池那於人さん)
「一番いいのはやっぱりお子さんがこういうことができるようになったとかできるようになったことを保護者の方に伝えたときに『そうなんですか!家ではできたことないのに!』。『じゃあお家でもできるようになったら教えてくださいね』みたいな感じで本当にちょっとしたことなんですけど、そこを保護者の方と喜びを共有できる。ちょっとしんどいときは、一緒にしんどいというか共感するっていうことも大切やし、けどやっぱり一番やりがいを感じるのは、ご家族を巻き込んで一緒に支援できるっていうところが僕的には一番やりがいがあるところかなと思います」

子どもだけでなく、家族とも向き合う、放課後等デイサービス。しかし、「発達障害では利用できない」、「存在を知らない」という保護者もいて、こうした支援に触れる機会がないまま、子育ての悩みから抜け出せない人も少なくないといいます。

(吉村貴世さん)
「自分を追い込んじゃってる方が多いので、周りが敵だと思ってる方がすごく多くて、私もそうでしたけど。どんなに頑張っても言いたい人は言うじゃないですか、『言いたい人には言わせておけばいいよ』とか『周りに味方いっぱいいるよ』って声がけはするようにしています」

「自分の人生も楽しみながら子育てをしようと思って。じゃないともし自分がつらくなったときに、子どものせいにしてしまうなと思ったんですよ。だから自分も楽しんで絶対子どものせいじゃない」

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