障害などを理由に不妊手術を受けることを強制した「旧優生保護法」。10代のとき、知らぬ間に不妊手術をされ、長年妻にも打ち明けることができなかった男性が国に賠償を求めて、あす、最高裁の法廷に立ちます。

北三郎さん
「手先が器用で、これはいけるなと思い、無我夢中で作っていたら、こういう風になった」

一人暮らしの部屋で趣味の造花を楽しみながら暮らす北三郎さん(仮名)、81歳。北さんは宮城県内の児童福祉施設で暮らしていた中学生のころ、国の施策によって人生を大きく狂わされました。

施設の職員
「悪いところがあるかもしれない」

ある日、施設の職員にこう告げられ、病院に連れていかれました。

北三郎さん
「産婦人科って書いてあったから『ここ違うんじゃないの?』。先生は慌てて『他の病院が混んでいるから、ここに決めたから』」

麻酔を打たれ、意識はもうろう。気づいた時には下半身の痛みで歩けなくなっていました。知らぬ間に不妊手術を受けたのです。

北三郎さん
「万感の怒りですよ。恐ろしくなって、学園を早く卒業したかった」

手術を可能にしたのは「旧優生保護法」という法律です。障害のある人などに本人の同意のないまま、不妊手術をすることを可能にしました。

北三郎さん
「(自分には)障害も何にも別にないのに、なぜやるのか。全部調べて、戦ってやるという気持ちだった」

手術を受けた人は全国でおよそ2万5000人。2018年、北さんは、ほかの被害者が裁判を起こしたことをきっかけに、自分も国に賠償を求める裁判を起こしました。

2審で東京高裁は国策として「強度の人権侵害を行った」と国を断罪、北さんに賠償するよう命じました。

しかし、国は不法行為から20年提訴がないと賠償が認められない「除斥期間」という制度を理由に、判決を不服として最高裁に上告したのです。

あす、最高裁で弁論が開かれます。

北さんはその重い被害を40年以上連れ添った妻にも長年、言えませんでした。

北三郎さん
「(不妊手術を受けたと)言ったら離婚じゃないかと思っていた。去られるのが、やっぱり怖かった」

妻に被害を告白できたのは、亡くなる直前の病室。

北三郎さん
「すまなかったということで、手をついて謝りました」

返事は予想外のものでした。

北三郎さん
「『しっかりと食事だけはとってくださいね』と言われて、その食事を今、守っている」

亡き妻のためにも…。北さんはあす、最高裁の大法廷に立ちます。

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