大相撲夏場所で“史上最速”での初優勝を果たした小結 大の里(23)。
石川県津幡町出身の大の里は、新潟県糸魚川市にある能生中学校に相撲留学。新潟県立海洋高校の相撲部で稽古を続けた後、日本体育大学に進んで学生横綱となるなど活躍し、角界入りしました。
BSN新潟放送では今から8年前の2016年、高校時代からエースとして活躍していた当時の大の里=本名 中村泰輝さん=を取材していました。

糸魚川市の県立海洋高校。
1年生のクラスにひときわ目立つ生徒たち。全員が相撲部員です。

中でも中村泰輝さんは189センチ、150キロで1年生ながら相撲部のエースです。

中村泰輝さん(のちの大の里)
「高校生なんで相撲だけじゃダメなので、一応勉強もしないとダメだと思います」

文武両道が基本。
水産資源や海洋開発などなど、全国有数の強豪校とはいえ勉強は他の生徒と一緒にしっかり受けています。机とイスがちょっと窮屈そうな普通の高校生ですが…

午後4時。稽古場に入ると顔つきが引き締まります。

部員は9人の少数精鋭。新潟県外出身者も多くいます。
中村さんも石川県出身です。

基本の「四股ふみ」から稽古がはじまります。
下半身の強化と身体を支えるバランス感覚を養います。中村さん、早くも体中に汗がほとばしります。全員が成長著しく、全国選抜大会では優勝を果たしました。

放課後は中学生たちと毎日、合同稽古を行っています。
高校生が中学生に負けるわけにはいきません。メンツをかけて青のまわしを付けた中学生と稽古に励みます。それでも、時には負けてしまうことも…

「高校生は絶対に負けてはいけない人。インターハイとか国体に中学生は出てこない」

こう檄を飛ばすのは2004年に海洋高校相撲部の総監督に就任した田海哲也さんです。中学生との合同稽古も総監督のアイデアです。

田海哲也総監督
「中学生も高校生も一緒に練習すれば強化される。(子どもたちに)心と心のつながりがないとあきらめる、辞めるということにつながるので共同生活を始めた」

学校近くの民宿では総監督の妻、恵津子さんたちが食事の準備に大忙しでした。
田海総監督は民宿旅館を経営していて、ここを生徒たちの合宿所に開放しているのです。

田海総監督の妻・恵津子さん
「(部員は)家族と一緒なので、普通に大声出して怒鳴っている。何の気も使っていない」

子どものいない田海総監督夫婦にとって、部員たちは我が子同然なのです。

午後6時、稽古が続いていました。
中村泰輝さんは恵まれた体を武器に、2016年、1年生ながらインターハイで準優勝。熱を帯びる稽古…田海総監督は稽古中、激を飛ばし続けます。

「試合のつもりで、この一番にかけろ!そういう小さいことの積み重ねが大きいことになっていくんだよ」

総監督から飛び出す厳しい言葉…これも我が子を強くしたいと願う親心のようなものです。公立高校だけに、全国の強豪校と比べると決して長い時間の稽古とはいえませんが、4時間の稽古の集中力はすさまじく、途中で話しかけることができないほどでした。

午後9時。ようやく合宿所で夕食です。

この日はローストビーフに魚のから揚げ、そしてカボチャのサラダと豪華!
どれも恵津子さんの手作りです。

「いただきます」の声も少し変わっています。
何やら動作をしてから「いただきます」と言って食べ始めるのです。

これは相撲の基本動作を身に着けるため、中学生は夕食前には必ず行うルールなのだそうです。

中学生と高校生16人で、1日15キロのお米を食べるそうです。
1日あたり、ひとりなんと6合!丼ぶり茶碗に大盛り2杯を完食することがルールです。まずは食べて体重を増やす。これがなかなか大変なんです。

部員は
「食べるのも稽古の一環と言われているので、頑張って食べています」

午後10時、ようやく自由時間。11時の就寝までのわずかなリラックスタイムです。

中村泰輝さん
「厳しいのがわかって、つらいのがわかってきたので、つらくないと強くはなれない」

厳しい稽古も仲間と一緒なら乗り越えられる。そして指導者の相撲にかける情熱と愛情たっぷりの食事が海洋高校相撲部をますます強くしていきます。

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