各地でクマによる被害が相次いでいます。そもそも日本にいるクマはどんな種類で、どういった特徴があるのか。そして、もしクマと遭遇したら…。日本ツキノワグマ研究所の米田一彦所長への取材などをもとに、クマ被害についてまとめました。

学習能力の高い「ツキノワグマ」 イノシシ・シカなどの味を覚えて肉食化!?

 日本には2種類のクマが生息しています。1つは、北海道にのみ生息する「ヒグマ」です。大きいもので体長が2m、体重は60~250kgあります。

 もう1つが「ツキノワグマ」で、体長は大きいもので約1.5m。ヒグマと比べると小さいですが、九州や四国の大部分を除き、本州のいたるところで生息が確認されています。

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 次に、それぞれの特徴です。日本ツキノワグマ研究所の米田一彦所長によりますと、ヒグマは攻撃性が強く、積極的に動物を襲うことがあるようです。

 一方、ツキノワグマはめったに動物を襲わないということですが、学習能力が非常に高く、東北でイノシシやシカが増加すると、なにかのきっかけでそれらの動物を食べて「エサ」だと学習するおそれがあるそうです。クマがイノシシやシカを食べた場合、それを見ていた他のクマや、それらの動物の死骸を食べた他のクマなども、「エサ」だと認識し学習するということです。

 クマは本来雑食で、昆虫、木の実、蜂蜜などを食べるそうですが、イノシシやシカなど動物の味を覚えたクマは、人からすると非常に怖い存在になると米田所長は強調します。

大きなオスグマが若いオスグマを食べる!?繫殖期は共食いが多発

 クマによる人の被害が多くなっている背景には、様々な要因が考えられるということです。例えば、山菜採りや行楽などで山の中に入る人の数が年々増えてきていて、絶対数が増加しているため、クマと遭遇し人的被害が生じる数も増えてくるということもあります。

 また、人を襲ったクマを駆除のため殺処分した場合、もしそのクマが子グマを連れていると、子グマは自分で山に帰れないため、母グマが殺された場所に居座るということです。そして、そのまま冬が来るとその場で冬眠するということです。そのため、人が住んでいる近くで春になるとやせ細ったクマが現れるのは、上手な冬眠の仕方をしらない山に帰れなかった子グマが、本来しない場所で冬眠し、春に目覚めた時にはその場でエサが取れないなどの状況もあるということです。

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 5~6月の今はツキノワグマの繁殖期で、「共食い」が多発するほど気が立っていて、特に危険だそうです。大きなオスグマが若いオスグマを食べてしまうことや、大きなオスグマが母グマといる子グマを食べてしまうことがあるということです。母グマは子グマが近くにいる段階で交尾に応じないため、子グマを食べてしまうということが考えられています。ほかの種の肉を食べることで、よりクマの肉食化が進みやすい時期ともとれるのではないか、というのがこの時期です。山菜採りの季節でもあるため、注意が必要となります。

ツキノワグマ「スーパーK」による被害…クマの胃袋から人間のもとのみられる肉片

 8年前には、「ツキノワグマとしては最悪」と言われる被害事例がありました。2016年、秋田県鹿角市で大型のオスグマ「スーパーK」とそのグループに襲われたとみられる4人が相次いで死亡。グループ内のメスグマの胃袋から人間のものと見られる肉片が発見されました。スーパーKとは人を襲ったクマを識別するためにつけられた呼び方です。

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 この鹿角市で今年5月18日、60代男性を捜索中の警察官2人がクマに襲われて大けがをし、現場付近で男性の遺体が発見されました。ただ、現場にクマがいる可能性が高いため、遺体の搬送が難航。車が通行できるよう林道が整備され、22日、男性が行方不明になってから1週間後に遺体が搬出されたということです。

関西でもクマ被害のリスクあり…理由は「イノシシ」

 環境省によりますと、2023年度のクマによる人身被害は198件(219人うち死亡6人)。統計がある2006年度以降で最多です。

 関西での人身被害はあまりなく、あっても府県あたり年に数件で、統計では死亡者は出ていません。ただ、米田所長によりますと、関西はイノシシが多く、このイノシシをきっかけに肉食のクマが増える可能性はあるということです。何かのきっかけでイノシシを食べたクマが肉の味を覚える危険性、さらにイノシシの罠にかかったクマがパニックに陥って人を襲うなど、関西でも決してリスクはゼロではないと指摘します。

 米田所長はクマによる被害の現状について、再び人を襲わないように分析して「駆除」するということが大切だとしています。ただ、むやみに野山にいるクマを駆除することに米田所長は賛成ではなく、むしろ反対されています。しかし、“人の肉の味を覚えてしまった”クマや、イノシシやシカの肉の味を覚えてしまったクマはまた人を襲う可能性があるため、そういったクマ、子グマ、さらにはグループのクマを特定し駆除する必要はあるとしています。一方で、ピンポイントでこのようなクマを駆除するのは難しいようです。

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