温泉旅館のロビーに設置された防犯カメラの映像。客が土下座を強要し、「旅館をいずれ僕が潰してあげる」とまで言い放ったといいます。エスカレートするカスタマーハラスメント「カスハラ」、その被害の現場を取材しました。

「下手したら死人が出るかも」閉店に追い込まれたラーメン店

ラーメンを覆っていたのは、大量のつまようじ。防犯カメラには、その瞬間が!

ケースごとつまようじを手に取ると、そのままラーメンに振りかけたのです。

滝江伸一 店長
「衝撃的で言葉も出なかったです」

茨城県・水戸市のラーメン店。ある男性客から、悪質なカスタマ―ハラスメントを受けていました。

別の日には、瓶に入ったコショウのキャップを外し、まるまる1本分投入、食べずに店を出ていったのです。

警察に相談すると来なくなったといいますが、“カスハラ”行為は、その後も…

滝江伸一 店長
「鬼のように電話がかかってくるようになったんですよ。潰れちまえ、しまいには(店に)火をつけるだの殺すだのって。毎日不安でしたよね」

眠れない日が続いたという店長。度を超えたカスハラに、ある決断を下しました。

滝江伸一 店長
「下手したら死人が出るかもしれない。(店を)もう閉めようって」

ラーメン店を閉店にまで追い込んだカスハラ。現在、店長は水戸市から離れた東京・中野区で出店し、再スタートしています。

客による理不尽な行為は、様々な業種で確認されています。安さとボリュームが自慢の弁当店では…


「呼べよ警察を!カネ払ったら客やろうが!」

乱暴に扱った弁当を陳列棚に戻そうとしたことを店員が断ると、現金を投げつけたといいます。

また、会計ソフト会社のカスタマーセンターに実際にかかってきた電話では…

実際の音声
「ふざけた回答してんじゃねえぞオラ!殺すぞお前!おい録画(録音)しているんだったらな、警察に行ってな、脅迫罪でもなんでもいいから言えや!ああん!?なめてんのか!オラ!」

聞くに堪えないほどの罵詈雑言。対応は43分にも及んだといいます。

エスカレートするカスハラは、他にも…

「お客ってわがままなんだよ」旅館スタッフに土下座を強要

高柳光希キャスター
「栃木県・那須塩原市です。こちらの旅館でも、悪質なカスタマーハラスメントがあったということです」

普段なら穏やかな時間が流れ、リラックスできる温泉旅館。ところが…


「こんな旅館はじめてだよ!」

従業員
「中のほうでお待ちを…」


「いやいやいや、外で待てって書いてあるじゃん!変だよ、おたくの旅館は!」

チェックインの約30分前に到着した2人の客。

こちらの旅館ではコロナ禍を機に、館内の消毒や、従業員の休憩を確保するため、チェックインまでは車で待つよう呼びかけていました。


「冗談じゃないよ、こんなの旅館じゃないよ。ちょっと社長呼んできてくれる?」

要求はどんどんエスカレート。ついには…


「客に待てと?おん?客に待てってこと?申し訳ないじゃねえバカヤロウ!謝るんだったら土下座でも…」

旅館側に土下座を要求してきたのです。その後も40分ほど事情を説明し続けましたが、土下座の強要をやめることはありませんでした。

Nスタは、被害に遭った温泉旅館へ。客の対応にあたった専務は、当時を振り返り…

湯守 田中屋 田中佑治 専務
「本当に恐怖を感じるような場面もありましたので、スタッフも萎縮してしまうような状況でございました」

また、土下座を強要されたことについては…

湯守 田中屋 田中佑治 専務
「お客様がチェックインしている最中も声が聞こえている状況でございましたので、苦渋の決断でしたけども土下座をしました」

宿泊せず、キャンセル料も払わずに帰ったという客。見送る田中専務に、こんな捨て台詞を残していました。


「お客ってわがままなんだよ。わがままをどうやって聞いてくれるかっていうのが旅行業の一番基本ですよ。それがもうこの旅館にはないということですよ。こういうところは潰したほうがいい。僕が潰してあげる。いずれさ、僕が潰してあげる」

カスハラ被害の旅館は法改正後に対策方針を公表 その成果は?

日比麻音子キャスター:
カスハラ被害の映像を見るだけでも本当に苦しくなりますから、対応された方はどれだけの思いだっただろうかと思います。現場の旅館を取材してみていかがでしたか。

高柳光希キャスター:
「ここまでエスカレートするケースはなかなかない」としていましたが、不安や恐怖についてはものすごく語ってくださいました。最後の最後、苦渋の決断で謝罪に至ったということです。

そんななか、2023年12月に法改正が行われました。それに伴い湯守 田中屋では、土下座などで謝罪を求めることや、宿泊料の不当な割引の要求などに対しては、宿泊を拒否したり、警察への通報などの対応をしたりすることをホームページ上で公表しています。

そして湯守 田中屋では▼従業員の名札を外すこと、▼防犯カメラの増設をすること、▼複数人に対応することなどの対策も行っているということでした。

湯守 田中屋の田中佑治専務によると、この公表がどこまで成果があるかはわかりませんが、12月の法改正以降、カスハラは今のところないということです。従業員を守ることはもちろんですが、お客さま自身にも安心して泊まっていただける環境を作りたいと話をしていました。

他の企業でもカスハラ対策は続々と続いてはいますが、従業員の皆さん自身がお客さまを丁寧に扱うことと、お客さんが「我々自身が神様だ」と思うことは、まったく意味合いが変わってきます。そういったところも、まずは旅館に対しては法改正を把握することが大事かもしれません。

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