人種や肌の色など外見を理由に警察官が職務質問するのは「レイシャル・プロファイリング」に当たり差別で憲法違反だとして、外国にルーツを持つ男性3人が国、東京都、愛知県に1人当たり330万円の慰謝料を求めた訴訟の第1回口頭弁論が15日、東京地裁であった。国など3者はいずれも請求の却下や棄却を求め、争う姿勢を示した。

◆「外見を理由にした差別で憲法14条違反」

 訴状によると、20~50代の原告は日本に10年以上暮らし、日本国籍や永住権を得ている。不審な行動をしていないのに、都内や名古屋市でこれまで15~70回ほど職務質問されたのは外見を理由にした差別で、人種を理由に差別されないと定める憲法14条などに違反すると主張している。

口頭弁論後に記者会見したゼインさん(右)とモーリスさん(左)

 都や愛知県は、職務質問の日時や対応した警察官の人数などが不明だとして原告に確認を求めた。原告の回答後、具体的に反論するとした。国は「都道府県の警察において、人種など民族的出自のみに基づき職務質問するという組織的運用はない」と反論した。

◆呼び止められ「お前のチャリじゃねえだろ」

 原告2人の意見陳述もあった。パキスタン出身で8歳から日本で暮らし、日本国籍を取得している20代の星恵土(セイエド)ゼインさんは流ちょうな日本語で「大学生のころからひんぱんに職務質問を受けてきた」と話した。自転車に乗っている時に警察官に止められ、高圧的に「これお前のチャリじゃねえだろ」と言われたこともあったといい、「日本が多くの人に開かれた良い社会になるため、偏見に基づく職務質問を変えていく必要がある」と訴えた。  アフリカ系アメリカ人で日本での永住権を持つ40代のモーリス・シェルトンさんは英語で、「人種による差別やプロファイリングは、ルールや規制に基づいた社会にはふさわしくない」と主張した。(中山岳)

 レイシャル・プロファイリング レイシャル(人種的)と、プロファイリング(犯人像の分析)を組み合わせた言葉。警察が、人種や肌の色といった外見を根拠に「犯罪傾向が高い」と判断し、職務質問や捜査対象にすることなどを指す。国連人種差別撤廃委員会は2020年、防止に向けたガイドラインや法律をつくるよう各国に勧告した。



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