クマなどの野生動物と人との共存を目指す自然保護団体が、新潟県阿賀町の森林を購入したと23日に発表しました。一方で地元の住民からは、クマによる被害を懸念する声も上がっています。

阿賀町の森林を取得したのは、自然保護団体「日本熊森協会」。
森にある水源地の保全や野生動物との共存を目指し1997年に設立された団体です。

【日本熊森協会 室谷悠子会長】
「奥山は自然のまま残して、水源地として守って、そこを野生動物の生息地にして、人とうまくすみ分けないといけないのに、それと逆行するようなことが起こっている。ほぼ全て自然林なので、基本的にもう開発をしないで、このまま自然林のまま保全をしていく」

この団体が購入したのは、新潟県と福島県の県境に近い、996haの自然林です。

【ヘリコプターからのリポート】
「まだ雪が残っています。広さは、デンカビッグスワンスタジアム(新潟市中央区のサッカー場)およそ260個分です」

森林を購入した日本熊森協会によりますと、阿賀町にはブナなどがある自然度の高い森林生態系が見られ、クマなどの大型野生動物にとっても貴重な生息地だということです。
もともとこの森林は再生可能エネルギーの事業者が所有していましたが、このたび寄付や団体の資金で購入したということです。
購入額は5000万円以上で、開発によって森林の大規模伐採が進んで生態系の破壊や水質の悪化を引き起こすことを問題視し、その開発対象になってしまう前に購入を決めたとしています。

一方で、クマによる人身被害は全国で相次いでいます。
2023年度には、新潟県内だけでもクマの目撃情報などが1450件あり、10人が襲われてけがをしています。

水源地の保全や野生動物との共存を目指す自然保護団体の森林取得に、阿賀町の住民はさまざまな思いを口にします。

【40代女性】
「動物も一緒に暮らしているっていうことなので、例えば事故に遭ったりとか…お互いに危険がないようにするっていうのは大事かなと」
【30代女性】
「阿賀町はクマが出るので“クマと共存する街”ではあるんですけど、子供がいるので、クマが近所にいるっていうのは不安ですね」

こちらの70代男性は4年ほど前に自宅近くで親子連れのクマを目撃したそうです。
「クマは天敵だからね。保護してクマが里に出てこないかと言えば、出てくるでしょ。里で美味しいもの食べられるんだから」

団体が購入した山林に近い地区の住民は、民家の近くにクマがいることも珍しくないと話していました。

地元の猟友会で20年以上活動してきたという80代の男性は…
「山菜取りも行けないんだよ、クマがいて」
「こんなの、もっての外だ。俺は大反対だ」

自然保護団体の日本熊森協会が森林を取得するのは全国で8か所目で、新潟県内では初めてだということです。
阿賀町の森林では、クマの生息環境を整備してカキやクリを植えるなどを検討し、人とクマとのすみ分けを図るとしています。

【日本熊森協会 室谷悠子会長】
「新潟ってすごく山が豊かではあるんですけど、温暖化とか熱波とかの影響は受けていて、山にクマを養うだけの力が少なくなっている。里に下りてきているクマを下りてこないように、境界をきっちり作ったりだとか、ちゃんとした生息地を保障していく」

日本熊森協会では、カメラを設置するなどして、野生動物の動きを確認しながら、保全活動を始めていくとしています。

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