クマの被害 各地で

5月に入り、各地でクマの目撃が相次いでいます。
5月18日、秋田県鹿角市では行方不明の男性を捜索していた警察官2人がクマに襲われ、両腕や顔などに大けがをしました。
遺体で見つかった行方不明の男性もクマに襲われた可能性があり、県はこの地区を含む2か所を入山禁止としています。
20日には神戸市、山形市で1頭ずつ目撃され、21日には北海道別海町で子牛4頭が襲われ死亡。近くにクマの足跡がありました。
青森や仙台の市街地でもクマの目撃情報が続いています。

なぜ市街地にクマが出没?

近年、市街地周辺にクマの出没が相次いでいますがなぜなのでしょうか?

クマは12月~3月にかけて冬眠し、巣穴で出産します。
5月~7月が繁殖期となりますが、子連れの母グマは繁殖をしません。
そのため雄グマは繁殖のために子グマを殺してしまうことがあり、母グマは雄グマのいる山を避け市街地付近に出没するのです。

恵俊彰:
子グマを守るためなんだ。

岩手大学農学部 山内貴義准教授:
雄グマに見つかると子グマが殺される可能性は非常に高くなりますので、母グマはすごく神経質になります。

“母グマ”は気性が荒く危険

提供:新潟大学フェロー 箕口秀夫氏

新潟大学の箕口秀夫教授がとらえた親子のクマの映像を見ると、
人の気配を察知した母グマが鋭い爪を振りかぶり威嚇する横で、小グマが急いで木に登るなど、避難する様子が映っています。

提供:原生林の熊チャンネル

また、岩手県でキノコ採取をしている男性の目の前に現れたクマも、近づいてくる前に小グマを木の上に避難させているのが目撃されています。

母グマは子どもを守るため攻撃的になっているので非常に気象が荒く危険です。
中でも「子グマが木に登る」のはクマが危険を察知している合図なので、その後母グマが攻撃してくる危険性が高いといえます。

もしクマに出会ったら

岩手大学農学部 山内貴義准教授:
基本的には大声を出したりして興奮させない方がいい。
びっくりしていきなり逃げたりすると追いかけてきたりすることもありますので、まず見かけたらなるべくクマを興奮させないようにして、距離を取るようにしていただきたい。
クマは木に上ったり、逆に木から降りて反対方向に逃げたりするので、よく行動を観察しながら目線を外さず距離を取ってもらいたいと思います。

恵俊彰:
クマが向かってくる場合はどうすればいいですか?

山内貴義准教授:
薮などでばったり会ってしまう場面もありますが、そうなるともう距離を取りようがないので携帯していればクマ撃退スプレーを使う。
スプレーも使うことができない状況なら、うずくまってお腹や顔や頭を守る行動をしてもらいたい。それが最終手段となります。

クマの高い知能 “人間の音”に慣れる

 

クマには非常に高い学習能力があります。
新潟大学の箕口秀夫教授
「最近のクマは車や人間の音を‟危険がない、安全なもの”と学習してしまい、人里を恐れなくなった」と話します。

2015年に新潟県阿賀町の住宅近くの森に現れたクマの映像では、近くを走行する車の音にビクッと体をこわばらせその場を去る様子が映っていましたが、8年後に同じ場所で撮られた映像では、車の音に全く反応していません。
この違いは、その音が‟危険を及ぼすかどうか”を学習した結果だといいます。

クマの嫌う「ニオイ」

高い学習能力を持つクマに対し、どのような対策をとればいいのでしょうか?
キーワードは「におい」。クマは犬並みに優れた「嗅覚」をもっています。

秋田県立大学 木材高度加工研究所の野田龍准教授が行なった実験があります。
森の中にペンキを塗った木の杭を設置すると、クマは体をすりよせ、一心不乱に抱きしめたり、かじりついたりします。
「油性塗料」や「灯油」など好きな匂いに対して取る行動だといいます。

岩手大学農学部 山内貴義准教授:
(塗料や灯油などの)揮発性の匂いというのは普段嗅いだことのない匂いなので、クマだけではなく他の動物も興味を示してかじったりします。

一方、嫌いなにおいは「唐辛子」。
唐辛子の匂いのする丸太を与えたところ、首を振りながら離れてくしゃみをするような姿も。
さらに唐辛子の匂いのする木材を檻に設置した実験では、不快に思ったのか近づくことなく引き返していきました。
そのため、クマ撃退スプレーには唐辛子の成分が入っているものが多くあるのです。

コメンテーター 鎌田靖:
奥多摩にたまに行きますけど、クマよけスプレーをいつも持っています。

東京都でも目撃増加「行動が大胆に」

東京都観光局の2023年度の『ツキノワグマ目撃等マップ』を見ると、あきる野市を中心とした青梅市、八王子市などのエリアでの目撃情報が、わずか1年で非常に増えています。
駅やショッピングモール、市役所もあり、クマが市街地のあたりまで来ているのが分かります。

コメンテーター 伊藤聡子:
個体数自体も増えちゃってるということなんですか?それとも餌がなくて降りてきてるということなんですか?

岩手大学農学部 山内貴義准教授:
鹿やイノシシと違ってそれほど繁殖力は高くないので、数年でものすごく増えるということは多分ない。行動がかなり大胆になっているというのが正解だと思います。

さらに山内氏は、
「去年は山に餌が少なく多くのクマが市街地に現れたが、その個体が味をしめて、今後も市街地に行くようになる可能性もある」と指摘しています。

恵俊彰:
今年の方が増えますか?

岩手大学農学部 山内貴義准教授:
小グマが去年の秋に人里に出て、人里が自分の敷地内だと認識してしまうと、それが大人になって頻繁に出る可能性も十分考えられます。
繁殖期は6月、7月ぐらいがピークになります。これから始まるという感じになりますね。

弁護士 八代英輝:
今のクマは特に危険だと理解した方がいいですね。

(ひるおび 2024年5月22日放送より)

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<プロフィール>
山内貴義氏
岩手大学農学部准教授
専門は野生動物管理学
小学校で「クマの生態」を教え“ツキノワグマの先生”としても有名

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