外国籍の女性と当時3歳の長女が面識のない男性とトラブルになった際に、警察官から不当な任意聴取を受けたとして裁判を起こしました。判決をまえに女性は「娘のおむつを替えることも許されなかった」と当時の状況を語りました。

「公正な判断を望みます。これは完全な差別です」

今年1月、南アジア出身の女性(40代)は裁判でこう訴えました。

きっかけは2021年6月。女性が都内の公園で3歳の長女と遊んでいたときのこと。突然、面識のない男性が近づいてきて「息子が蹴られた」と大声を出したといいます。

南アジア出身の女性
「彼が『ガイジン』と言ったのを覚えているし、『自分の国に帰れ』とも言われました」

警視庁の警察官が駆けつけましたが、女性と長女は日本語がほとんど話せません。偶然通りがかった別の男性が通訳してくれて何とか「蹴っていない」と訴えました。

通訳に入った男性は、裁判で当時の警察官の言動をこう証言しました。

公園で通訳した男性
「警察官が(娘に)『どうせお前が蹴ったんだろう』『お前本当は日本語しゃべれるんじゃねえのか』と強い口調で言っていました」

その後、女性と長女のみが警察署で任意の聴取を受けることになったのです。

南アジア出身の女性
「娘に昼食を食べさせることも、おむつを替えることも許されませんでした。家に帰らせてほしいと伝えましたが聞いてくれませんでした。彼らは『おわらない』『おわらない』 と言いました」

事情聴取は、公園と警察署であわせて4時間半におよびました。女性と長女が引き離され、複数の警察官が3歳の長女一人を取り囲んで聴取した時間もあったといいます。

さらに女性は、同意をしていないのに名前や住所などの個人情報をトラブルとなった男性に漏らされたとも訴えていて、警視庁側に損害賠償を求めています。

原告側の弁護士は、こう指摘します。

原告側 中島広勝 弁護士
「外国人に対して取り締まるべき対象という無意識のバイアス(偏見)があったと考えなければ説明がつかない行動」

人種や肌の色などを理由に警察官が職務質問や取り調べを行うことは「レイシャル・プロファイリング」と呼ばれています。

今年1月には、男性3人が「外見を理由に差別的な職務質問を受けた」などとして東京地裁に提訴しました。

南アジア出身の女性
「正義と平等を重んじる平和な社会を築くべきです。人種やジェンダー、宗教、国籍などを理由に差別されることのない社会を」

一方、警視庁側は裁判の中で「違法行為はなかった」と反論していて、判決は近く東京地裁で言い渡されます。

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