2020年、大分県宇佐市安心院町で親子2人が殺害され、現金が奪われた事件で、強盗殺人などの罪に問われた男の裁判員裁判が始まり、男は「犯人ではありません」と無罪を主張しました。

強盗殺人などの罪に問われているのは、大分市緑が丘の佐藤翔一被告(39)です。佐藤被告は2020年2月2日、宇佐市安心院町の住宅で山名高子さん(当時79)と長男の博之さん(当時51)を包丁などで殺害し、現金およそ8万8000円を奪った強盗殺人などの罪に問われています。

事件現場 2020年

裁判員裁判の初公判で佐藤被告は「僕は全てやっていません。犯人ではありません」と起訴内容を全面的に否認し、無罪を主張しました。

検察「アリバイ工作をして犯行」

検察側は冒頭陳述で、犯行に至る経緯について、被告は消費者金融2社からの借り入れがあり、160万円を超えた。その返済資金に充てる金銭を得るために、山あいの一軒家に窃盗に入ろうと考え、遅くとも事件2日前の1月31日ごろ、被害者方に狙いを定めたとしています。

犯行当日は、「温泉に行く」などと家族にうそを言い、1人で車に乗って自宅を出発。その途中、ロケーション履歴を利用したアリバイ工作のために、スマートフォンを宇佐市安心院町にある史跡「佐田京石」の駐車場に放置した。

そして、被害者方付近の道路脇に車を駐車し、2日前に購入した運動靴、ゴム手袋、ジャンパーを身に着けるなどして家に侵入。2人と出くわしたことから殺害。その後、ダイニングの床の上に掃除機をかけ、そのヘッド部分を持ち去り、複数人の犯行に見せかけるため、被害者方にあった4種類の履物による足跡を残した。

犯行後、被告は放置していたスマートフォンを回収。由布市内のコインランドリーでジャンパーや持ち去ってきた履物を洗濯し、ゴミ集積場に投棄。翌日には借金の返済として現金1万4000円を入金した。犯行3日後、被告は警察に電話をかけ、「1月31日や2月2日にプロレスマスクをした男に自動車を貸して現金を受け取った」などと説明したということです。

犯行に使われた車のトランクから、山名高子さんのDNA型と完全一致する血痕が検出されたほか、現場に残された足跡のうちの一つについて、被告が事前に購入していた運動靴の底の模様と一致したなどとしています。

弁護側「覆面集団から指示受け、事件に巻き込まれた」

一方、弁護側は「事件時、覆面をした集団に指示を受けて行動。謝礼と引き換えに動画撮影に協力した。事件後に借金は返済し、また自ら警察に情報を提供。犯行を示す証拠がなく、被告は事件に巻き込まれた可能性がある」となどと主張しました。

今回の裁判で20日午前、多くの人が傍聴券を求めて列を作りました。用意された傍聴席66席に対して、希望者は168人に上りました。

今後の公判の日程です。
▼5月21日~31日 証拠調べ
▼6月10日~21日 被告人質問
▼6月17日 最終論告など
▼7月2日 判決

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