ペットの増えすぎで飼い主が飼育できなくなる多頭飼育崩壊が社会問題となっています。現場で何が起きているのか――動物の命を救おうと活動する愛護団体に密着しました。

危険家屋で猫60匹まで繁殖

ガツガツとエサを求める猫の大群。現場では悪臭が漂い、大量の糞尿も。屋根の一部も崩れるなど、家屋が老朽化して倒壊するおそれのある危険な状態です。

去年12月、市の職員が家の状態を確認するため現地を訪れた際、猫が繁殖しすぎて手に負えなくなる「多頭飼育崩壊」が起きているのを確認しました。

現在はボランティアで活動している動物愛護団体「ひたねこLink_heart」が週に1度、健康状態を管理しています。

ひたねこLink_heart 小関由香里代表:
「今確認しているので40匹ぐらいいます。この三毛猫は最初の3匹のうちの1匹」

この家では当時、3世帯が同居していて、最初に3匹の猫を飼っていましたが、去勢していないため最大60匹まで増える事態に。家も倒壊するおそれがあるため、一家は今年1月、猫を置き去りにしたまま引っ越しました。

その後、飼い主から相談を受け、団体の代表が現地を訪れると、エサやりが行われておらず、猫がけがをしていたり、痩せ細ったりするなど、悲惨な状態だったといいます。

小関由香里代表:
「猫は自由に動いているので、隣から苦情がたくさんきて糞尿もすごい」

「育てられないから保護してください」それは無責任

今は家に誰も住んでいませんが、飼い主の高齢女性に話を聞くことができました。

飼い主

(女性)「娘がメスの猫1匹を連れてきたんです。いらないと断ったけど、孫が飼いたいと言って仕方なく諦めました。そのあと子猫が産まれて、どんどん増えていった」

(記者)避妊手術を考えなかった?

(女性)「避妊しなかったのが悪かったと反省しています。もらってくれる人もおらず、保健所にもダメと言われました」

団体はこの日、現場で瓦礫や粗大ゴミを回収したほか、これ以上繁殖させないため、一時措置としてオスとメスで分けて飼育する小屋作りに取りかかりました。

「ひたねこLink_heart」は、代表の小関由香里さんが2年前に立ち上げ、仕事と両立しながら活動しています。

小関さんがこれまでに保護した猫の数はおよそ200匹。月に1度譲渡会を開き、半分は新しい飼い主の元へ送り出しました。

小関由香里代表:
「多頭飼育崩壊の子を引き取ったり、けがをして外で生きていけない子を保護したりしている。ガリガリに痩せていて、毎日点滴を打ってここまで元気になった」

「すぐ里親が見つかればいいが、何年も見つからない子がいたら責任をもって私たちが最期まで飼育しなければいけない。だから簡単に『産まれて育てられないから保護してください』という方がいるが、それは無責任」

現在は73匹を保護していて、医療費だけで月に10万円、寄付や小関さんの手出しで賄っています。さらに去勢手術の費用は1匹あたり1万円から3万円かかるということです。

毎日エサやりを約束

今回の現場では全ての猫をすぐに去勢できないため、応急処置として小屋を作っています。小屋の設置に伴い、飼い主の女性には責任をもって毎日エサを与えるよう約束をしています。

(女性)「かわいそうと思っていました。でも仕方なかったです」

(記者)ボランティア活動をみてどう感じていますか?

(女性)「大勢の人たちに手伝ってもらい申し訳ない。感謝するばかりです」

小関由香里代表

小関由香里代表:
「避妊去勢手術も全頭しなければいけないし、健康管理もしなければいけないので、いろいろ問題は山積みだが、少しずつ解決に向けて進んでいると思う」

ペットブームの一方、高齢化などで増加するおそれがある多頭飼育崩壊。ボランティアだけでなく地域や行政で向き合うことが求められます。

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