今月10日から4日間、長崎市で開催された「One Young World Peace-preneur Forum」には、20を超える国と地域から約150人が集結。長崎の高校生や大学院生も参加し、教育や経済など多角的な視点から平和の在り方を議論しました。
異なる背景を持つ若者同士の対話が進む中で《次世代のリーダーたち》は平和実現への新たな視点とつながりを築きました。

若者による平和がテーマの国際フォーラムOne Young World「Peace-preneur Forum」には、20を超える国と地域からおよそ150人が長崎に集まりました。

ウクライナからの参加者:
「他の人の意見、彼らが平和という概念をどのように認識しているのかを聞きたかった」

セネガルからの参加者:
「平和は世界にとって鍵となるので、参加することは重要だと思う」

フォーラムでは国連の中満泉事務次長をはじめ多くの著名人がゲストとして講演。参加者たちは教育や経済などあらゆる視点から「平和のためにいま何が必要なのか」考えました。

《感情を受け容れる精神力》がなければ《人を憎む》ことになる

今回のフォーラムの最大の意義は《世界中の人が長崎に集まり、平和を議論すること》です。その場に長崎の高校生や大学院生も参加し、世界の次世代のリーダーと意見を交わしました。

長崎大学大学院の平林千奈満さんは、国の内外で平和活動に取り組む「ナガサキ・ユース代表団」の12期生で、来年度からは地元・長崎で小学校教諭として子どもたちに平和の尊さを伝えます。

長崎大学大学院・平林千奈満さん(2年):
「子どもたちに平和や核兵器の恐ろしさというのを伝えるときにどういうふうに伝えれば良いのかというところを今回を通して学んでいければなと思っています」

一方的に「教える」のではなく、どうしたら「伝わる」平和教育ができるのか──世界中から集まった様々な背景を持つ参加者と意見を交わし、視野を広げることが平林さんが今回参加した目的です。

この日の議論のテーマは「対話と平和」自身の幼い頃の経験も踏まえながら他の参加者に意見を求めました。

平林さん:
「長崎では平和教育が行われていますが、これは核兵器問題に焦点を当てたもので、小学1~3年生などの幼い頃はとても怖かった。ですから、ただ教えるだけの平和教育ではダメで、精神的なことも考えなければならないと思う」

アフガニスタン出身の参加者:
「よくわかります。もし私たちが《感情を受け容れる精神力》がなければ、とても簡単に《人を憎む》ことになる」

平林さん:
「長崎の原爆をどう教えるかというところが原点だったんですけど、それより前にメンタルヘルス(心の健康)についても考えないといけないということや、自分たちがまずは健康でいて、その上で(原爆について)考えることができるということで、平和教育の土台となるようなことについても考えることができたのはすごく大きかった」

被爆の実相を知ることで長崎の印象は変わるのか

平林さんが今回参加したのにはもう1つの目的がありました。それはこのフォーラムを通して外国人参加者たちのなかで《長崎の印象がどのように変わるのか》を知ることです。

平林さん:
「(国の内外を訪ねたとき)“長崎から来ました”と言うと『長崎すごいね』『長崎知ってるよ』というふうに言われるんですけど、そこから全然話が繋がらない。実際に(長崎に)来ることでどんな変化があったのかということを知れるのは、長崎からの平和の発信のあり方を考えるうえですごく大きなメリットがあると思っています」

長崎で生まれ育った若者の1人として被爆の実相や長崎の魅力を外国人参加者らに訴えました。

中国からの参加者:
「広島と並んで原爆が投下された街だということしか知りませんでした。核兵器の影響、人道的影響ついての理解が深まりました。とても勉強になりました」

被爆地・長崎に世界から若者が集い、平和について向き合う意義の大切さは世代を超えて伝わっています。

被爆者・宮田隆さん(84):
「長崎に(原爆が)落ちたことが世界中に共通の話題だからね。やっぱり世界に話をしてほしいんです」

国連・中満泉事務次長:
「長崎に来て新しいネットワークを作って、それぞれ繋がっていける。力を結集して一緒に行動することによって、必ず世界をより良いところにすることができる」

難しく見える社会課題にも“できることはある”

主催したOne Young World長崎協議会は被爆80年を迎える来年以降も、このフォーラムを継続して開く予定です。

One Young World長崎協議会 調漸会長:
「長崎を拠点として平和を軸にした色んな取り組みが始まる第一歩だと思ってます」

フォーラムでのアイデアや出会いは原点。ここから次世代のリーダーたちの新たな挑戦が始まります。

長崎東高校 藤崎紫苑さん(3年):
「ものすごく難しく見えるような社会課題でも何かできることは思いつくだけでもあるんじゃないか」

長崎東高校 山本幹太さん(3年):
「自分でも何かできるんだなっていう未来への希望に繋がりました」

長崎大学大学院 平林千奈満さん(2年):
「なかなか長崎にいただけだと自分の価値観を広げられなかった。今回得た話や考え方を自分の伝え方として発揮できればなというふうに思います」

平和について向き合った4日間。長崎から世界へ、平和の実現に向けて動き出します。

取材して(久富美海アナウンサー)

今回、平和の実現に向けて《心の健康》のほかに《スマートフォンのアプリの活用》など、参加者が「こんな新しい視点があったのか」と驚いたり、納得したりする様子が印象的でした。
フォーラムで出たアイデアに対して、各国の企業から集まった社員の皆さんがアドバイスしていたりして、ここから《新しいビジネス》も生まれていくのではないかと感じました。

取材して(住吉光アナウンサー)

フォーラムの名前は平和を意味する《ピース》と起業家を意味する《アントレプレナー》を組み合わせた造語です。

フォーラムでは「平和をビジネスにしたい」という参加者の声を聞きました。私自身、これまで《平和》と《ビジネス》は結び付かなかったんですけれど、参加した大学生からは「平和の実現に向けて働いている方の声や、社会課題の解決をビジネスにしている人の生の話を聞けて刺激になった」との声がありました。
まさに長崎で《平和の種まき》が行われたフォーラムだと感じました。

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