新型コロナの流行以降はテレワークが当たり前になりましたが、最近は少し対面重視の雰囲気が戻ってきたような気がします。

とはいえ、働き方などの価値観が変化しつつあるいま、働く空間をリニューアルした企業があります。コミュニケーションの円滑化や作業の効率化を図るオフィスの仕掛けに迫りました。

どこでも座れる完全フリーアドレス化

やってきたのは、熊本県嘉島町(かしままち)にある『サントリー九州熊本工場』です。ビールや清涼飲料などを製造しています。

この工場のオフィスは去年(2023年)7月、リノベーションしたばかりです。

サントリー 古川愛さん「『ワイワイスクエア』という、みんなが業務を行っているエリアです。完全フリーアドレスでして、工場長の席だけは決まっているんですけど、それ以外はどこに座ってもいい」

350人ほどが働くこの工場では、以前は部署ごとにデスクが分かれ、他の部署と連携が取りづらかったといいます。

そこで、若手社員が中心となって意見を出し合い、部署ごとの部屋をなくす代わりに誰でも利用できる会議室や休憩スペースを作りました。

それぞれの部屋の名前には「かたんなっせ」「しずかにしなっせ」「ねなっせ」など、すべて熊本弁が使われています。

※なっせ:熊本弁で「~してね」の意味 命令よりも柔らく、提案又は呼びかけるイメージ

「かたんなっせ」=加わってみてね 「しずかにしなっせ」=静かにしてね 「ねなっせ」=もう寝たらどう

古川さん「『かたんなっせ』は、ブレインストーミングとか報告会とかに使ってもらうようなエリアです」

「ビール・お茶」大手飲料メーカーならではのユーモア

部屋の中は製造するビールやお茶をイメージした配色となっています。

一方で、会議室は熊本名産のトマトやからしれんこんをデザイン。ユーモア溢れるアイデアで、自然と人が集まるような空間を生み出しました。

サントリー九州熊本工場 迫田伸一郎 工場長
「本当に社員のコミュニケーションが増えたなと思います。そのうち、生産性であったり、品質が良くなったり、そういったところに繋がっていくのではないかと期待しています」

この他にも最近オフィスをリニューアルをした企業を訪ねてみると、それぞれに工夫がありました。

まるでカフェ!?オシャレなだけじゃない

ネット通販やふるさと納税の運営代行業務を行う熊本市の『サイバーレコード』。2022年に移転したオフィスには、さまざまな仕掛けがありました。

例えば暗闇の空間は、実は会社のエントランス。

エントランスを抜けると…オシャレなカフェのようなオフィスが広がっています。

サイバーレコードは2008年創業で、現在は210人が働いています。社員の増加に対応するため、通常の事務フロアとは別に、フリースペースの設計に力を入れました。

仮眠できるスペースも確保されています。

サイバーレコード 福田奈奈さん
「少し休んで業務にあたると集中力が増して、生産性も上がると考えています」

社員はカフェやバーが“無料”

更にはカフェスペースも備えています。

福田さん「カフェメニューがありまして、社員が無料で飲むことができます。毎週金曜日は『CYBAR』(サイバー)と言いまして、バーカウンターでお酒も無料で提供しています」

飲み物が無料ということもあり人が集まり、部署の垣根を越えたコミュニケーションにつながっているといいます。

「社内全体が明るくなった」

去年(2023年)オフィスが完成したばかりの『レイメイ藤井』。熊本市で紙・文具・事務機などを扱う企業です。

以前は物であふれ、雑然としたオフィスでしたが…

今はスッキリとした空間に生まれ変わりました。

緑とグレーのカーペットが特徴的なフロアのイメージは?

レイメイ藤井 濵本菜月さん「緑の部分で熊本城の芝生、中央のグレーで熊本城の石垣、熊本城をイメージしたデザインを多く取り入れたカフェのような空間になっております」

実はオフィスに置いている家具や家電すべてが、レイメイ藤井が扱う商品です。

濵本さん「弊社にオフィスツアーにいらっしゃって、会議室のソファセットを見た方が『うちの会議室にもソファを置いてください』という話になったこともあります」

その他、スイッチひとつで気分に合わせて高さが変えられるデスクや、朝・昼・晩、それぞれの時間帯に合わせ色を変えられるこの照明もあります。

こうして働きやすい環境を社員自らが提案し、実際に形にすることで、会社の利益に繋がっているということです。

濵本さん「このオフィスに移り変わってから、課を超えた交流も活発になりましたし、社内全体が明るくなったのではないかと思います」

オフィスを変えることで働き方や社内の雰囲気も変わり、利益に繋がっていく。

これからの時代は働く「空間」もビジネスのキーワードになりそうです。

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