およそ1か月ぶりに、メディアの前に姿を現した水原一平被告。開廷前には、裁判所側が報道陣を法廷に入れない“異例の措置”も。一体、なにがあったのでしょうか?スタジオで詳しく見ていきます。

■水原被告 今後の司法手続きのスケジュールは

井上貴博キャスター:
今後、裁判がどう進んでいくのか、日本とは違うところもあるので、そういったところを含め見ていきます。

【今後の司法手続きの流れ】
▼罪状認否(1週間~2週間以):今後、有罪を認める見通し
▼保護観察機関:水原被告に聞き取り調査(黙秘権なし)、量刑についてどれくらいが相当かも記載したレポートを作成し裁判所に提出
▼量刑の言い渡し(2ヶ月後~3ヶ月後か)
▼連邦刑務所局:その場で収監または数日後に収監するか、どこに収監するかを決める

このようなスケジュールになるようです。

量刑について、保護観察機関のレポートでは、生い立ち、家庭環境、交友関係、経済的な状況、など人生すべてを考慮します。「ギャンブル依存症がどこまで考慮されるのか」その点についてポイントとなるのが▼歯の治療代として約900万円だまし取る、▼転売目的でベースボールカードを購入する、という「賭博とは関係のない内容」です。

これらのことについて、米・カリフォルニア州弁護士の鈴木淳司さんは「窃盗する意思があったので、検察側はギャンブル中毒の問題ではないと主張したいのでは」と話しています。

今回の事件全てを「ギャンブル依存症」で片付けてしまうのではなく、「窃盗する意思があった」ということで、賭博とは関係のない部分を大切にしているのではないか、ということでした。

■量刑にはどんな事が考慮される?

量刑については、大谷選手の口座から約26億円不正送金した「銀行詐欺罪」、約6億円の所得を申告しなかった「納税申告虚偽記載罪」の二つです。鈴木さんは「禁錮8年半から12年ぐらいではないか」と見ています。

ホラン千秋キャスター:
以前も「レポートがかなり重要な役割を果たしてくる」というお話をされていましたが、どういった背景からアメリカでは被告の人生にまつわることまで詳細に書かれたレポートを重要視するようになったのでしょうか?

米・カリフォルニア州弁護士 鈴木淳司さん:
まず、このレポートというのは、裁判所が連邦事件で特に有罪を認められた後に、量刑を決めるための一番の基礎とする内容が書かれたものです。

有罪を認めた後には、黙秘権というものがなくなります。なぜこのような犯罪に手を染めて、罪に問われることになったのかというのを、どこで生まれて、どの学校に行き、どういうことをしてきたかを全て書きます。そして個人情報が丸裸になったものを、裁判官が目にするので、プラスマイナス両方考える基礎となると思います。

ホランキャスター:
「ギャンブル中毒の問題ではない」と検察側は主張したいのでは、という話がありましたが、弁護側の観点に立つと、やはり「ギャンブル依存症の部分が大きい」ということを主張したいということでしょうか?

鈴木淳司さん:
弁護側は今回、情状を求める基礎とするために、「ギャンブルが彼を狂わせてしまった」というシナリオを作りたい。さらに言えば、若いときから何らかの形で大人のギャンブルに巻き込まれていた、など生い立ち上なにか事情があり、彼がそれを自分でコントロールできなかった範囲が非常に広かった、というような印象付けを弁護側は行いたいと思ってるのではないでしょうか。

ホランキャスター:
様々な事が争点になってくると思いますが、量刑についてはいかがでしょうか。

弁護士 萩谷麻衣子さん:
私はアメリカの事はわかりませんが、日本でも刑事裁判の中で量刑を決める際、一般情状として、生い立ちや家庭環境、交友関係、経済的状況などを斟酌することはあります。

ただ、事件によりますし、重罪事件ほど詳細なものは調べますが、全ての事件について捜査機関とは別の機関が調査するということはないので、すごく特殊だと思います。

保護観察機関に「黙秘権がない」ということは、捜査機関とは別の独立した機関が調べるということなんですか?

鈴木淳司さん:
行政機関ではありますが、裁判所に非常に近い機関です。量刑も基本的にはガイドラインがあったとしても、この保護観察局が「このような形が良い」と裁判所に進言するので、非常に裁判所に近い行政機関であり、裁判所と被告人を繋ぐ役割をしている非常に大事な機関の一つです。

■「司法取引」と保護観察機関の「レポート」どちらを重要視?

萩谷麻衣子さん:
検察官との間で行われる司法取引と、保護観察機関によるレポートの内容というのはどういった比重の関係になってくるのでしょうか?

鈴木淳司さん:
水原氏に保護観察官が必ず1人あてがわれ、その人が司法取引書類の内容を確認し、こういう合意がなされていることも考慮に入れた上でレポートを書きます。

なので、どちらかというと司法取引は尊重するが最終的には保護観察機関の意見という形で出されていくので、保護観察機関の比重は重いと思います。

井上キャスター:
保護観察機関に対して、検察側・弁護側がアプローチすることはできない、という認識でいいんでしょうか。また、レポートは罪を重くするほうに作用するのか、軽くする方に作用が行きがちなのか、一般論として言えることがあればそのあたりを教えてください。

鈴木淳司さん:
基本的に弁護士がついて、保護観察官に会うということもします。なので弁護士がそこに同席することはありますが、黙秘権がない状態なので基本的には「本人が何を喋るか」というのが前提になります。

そして、レポートが出てきた段階で、弁護人が何らかの異議を申し立てることもするし、検察官も何らかの異議を申し立てることもしますが、基本的には「双方の意見を汲んだ上で、最終的なものは保護観察局が作る」という流れになります。

<プロフィール>
鈴木淳司さん
アメリカ・カリフォルニア州弁護士
30年近くアメリカで商事・刑事等の裁判を多数経験
マーシャル・鈴木総合法律グループに所属

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