2023年4月15日、和歌山市に応援演説に訪れていた岸田文雄総理大臣に爆発物が投げ込まれた事件は、きょうで1年となる。襲撃の9か月前、2022年7月8日には、奈良市で安倍晋三元総理大臣が銃撃され、死亡する事件が起きたばかりだった。2つの事件を細かく検証すると、事件発生を許してしまった「共通点」が見えてきた。(2023年7月7日の特集記事から再構成)

銃撃を受けた安倍氏 爆発物を投げつけられた岸田氏 いずれも“手製の凶器”

 2022年7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅で、参議院選挙の演説を行っていた安倍晋三元総理。この2分後、事件は起きた。総理大臣経験者が多くの聴衆の前で銃撃を受けて射殺されるという極めて重大な事態となった。逮捕・起訴されたのは山上徹也被告。犯行に使われたのは手製の銃だった。

 そして、この事件からわずか9か月後の2023年4月15日。今度は現職の総理大臣が演説会場で爆発物を投げつけられるという前代未聞の事件が起きた。現場で取り押さえられたのは、逮捕・起訴された木村隆二被告。使われたのは筒の中に火薬が詰められた、やはり手製の爆発物だった。

なぜ?銃撃事件の教訓を活かせなかった


 凶器を自ら作るなど2つの事件では共通点も指摘されている。なぜ、安倍元総理の銃撃事件の教訓を生かせなかったのか。当時“警察のトップ”はこう話した。

(警察庁 露木康浩長官 2023年6月)「警護体制の強化を図っていたにもかかわらず、(安倍元総理の事件から)わずか1年足らずのうちに今回の事案(木村容疑者の事件)が発生してしまったということを重く受け止めております」

 警察庁は2つの事件について、それぞれ当時の警護体制を報告書にまとめている。今回、取材班はこの2つの報告書を検証し、事件を防げなかった共通点を探ってみることにした。

安倍元総理事件の報告書に「インターネットが多数」


(記者リポート)「安倍元総理の事件に関する報告書を読んでみると、『インターネット』というキーワードが多数出てきます」警察庁が公表した報告書には、「インターネット」というワードが10回使われている。

【警察庁が公表した報告書】『近年は我が国においてもインターネットを通じて、銃器等の設計図、製造方法等を容易に入手できる。インターネットを通じて、特定のテロ組織などと関わりのない個人が過激化し得る』

 現場での警護計画については「インターネットの普及で過激な犯行を想定する必要があった」としている。しかし、現実は…。

【警察庁が公表した報告書】『銃器等を使用して襲撃する事案を具体的に考慮しておらず、警戒の対象を聴衆の飛び出し等のより危険度が低い事案に向けていた』

 警護員らの注意は目の前に置かれていた。インターネットを通じて手製の銃を作るなど予想だにしていなかったのだ。

岸田総理事件は「SNS」や「ウェブサイト」

 そして、“安倍事件”の報告書が作成された8か月後に起きた岸田総理襲撃事件。その報告書には…。

(記者リポート)「岸田総理の事件に関する報告書を読んでみると、『SNS』や『ウェブサイト』というキーワードがかなりたくさん出てきますね」

 岸田総理襲撃事件の報告書にも「SNS」や「ウェブサイト」といったインターネットに関連したワードが13回も使われていた。

【警察庁が公表した報告書】『SNSにおいて本件演説会が告知され、本部警備課において当該告知が認知されていた。自由民主党本部のウェブサイト上において、本件演説会を実施する旨の告知がなされていた』

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