360億円もの負債を抱え、経営再建に乗り出すことが明らかになった山形屋について、全国の百貨店事情をよく知る信用調査会社は「地方百貨店は消費者行動の多様化で逆風にさらされている」と分析しています。
この土日の客の反応や地元経済の受け止めなど取材しました。

“県内唯一の百貨店が経営再建へ”というニュースが出て以降、初めての週末。ふるさとのデパートには多くの買い物客が訪れていました。

(客)「思い出はいっぱい。この指輪も(亡くなった夫が)結婚記念日に山形屋で購入し、プレゼントしてくれた。夫が亡くなってから山形屋に来るときは指輪をつける」

(客)「昔は地下も客でごった返してすごかったが、最近は減ってきた。鹿児島県の一番のデパート。ぜひ頑張ってほしい」

(近くの野菜販売店)「客は減っている。高齢化が進んでいるのは間違いない」

山形屋グループは全部で24社あり、従業員数は1500人余りです。山形屋や関係者によりますと、山形屋グループは経営悪化を受けて、去年12月、私的整理である「事業再生ADR」の手続きを申請。今後は、一般社団法人「事業再生実務家協会」の関与のもと、金融機関などと債権整理などを行うとしています。

負債総額はおよそ360億円で、債権を持つ金融機関はメインバンクの鹿児島銀行を含め17社です。

(帝国データバンク鹿児島支店 日比生秀一支店長)「全国的にも百貨店の事業再生ADR申請ということで、非常に大きなニュースになった」

信用調査会社の帝国データバンク・日比生秀一支店長です。郊外の大型商業施設とのしれつな競争やコロナ禍で広がったネット通販の拡大など、地方百貨店は今逆風にさらされていると言います。

山形屋のここ40年間の売上高です。1996年のおよそ680億円をピークに減少傾向となり、2021年はコロナの影響で312億円に。しかし、2022年は352億円。翌23年は367億円と、2期連続増収と持ち直していました。

(帝国データバンク鹿児島支店 日比生秀一支店長)「都市圏の百貨店はコロナ禍以降、回復している。でも地方圏は引き続き売上は微増にとどまっているのは、購買の動線が変わっている」「洋服を試着しないで買う世代も増えている。人と会いたくない、店に行きたくないとか。購買層の考えが変わってきているので、売り手のほうが考えるサービスがサービスじゃなくなってきているところはある」

鹿児島市商店街連盟によると、山形屋の物品販売の売り上げは天文館地区全体の3割で、地域経済をけん引してきた存在だと言います。

(鹿児島市商店街連盟 有馬勝正会長)「天文館地区にとっては核店舗、中心になる店舗。少しでも陰りが見えるというのは良くない」

コロナ前の水準に客足が戻らない中、商店街全体が連携して人を呼び込むための取り組みを続けたいと話します。

(鹿児島市商店街連盟 有馬勝正会長)「街が良くなれば、山形屋も良くなる。山形屋が良くなれば天文館への客も増える。相乗効果なので、一緒に大型商業施設の動向も踏まえて頑張りたい」

地元からはエールの声が上がっています。

(南日本銀行 田中暁爾頭取)「鹿児島県の老舗の百貨店であるし、地域になくてはならない企業だと認識している。地域金融機関として可能な限り、精一杯支援したい」

(鹿児島市 下鶴隆央市長)「鹿児島市の中心市街地の活性化を図るうえでも非常に重要な百貨店。さまざまな再建計画を策定して取り組むということなので、動向を注視したい」

山形屋は債権を持つ金融機関に対し5年間の事業再生計画を提示していて、今月28日予定の債権者会議で合意が得られれば、実行に移されます。

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