2022年に大阪府堺市のマンションで、隣人男性を暴行死させた罪に問われている34歳の男。5月13日、大阪地裁堺支部での初公判で「人を死ぬような暴力を加えて殴ったことはない」と傷害致死の起訴内容を否認しました。被害者に対する常習的暴行、さらには“金銭搾取”の実態が裁判で明らかになるのか注目されます。

 ▼肋骨多発骨折による気胸で隣人が死亡 常習的に暴行か

 楠本大樹被告(34)は2022年11月、堺市中区のマンションで、隣人の唐田健也さん(当時63)に肋骨多発骨折が生じるほどの暴行を加え、両側性気胸で死亡させたとして、傷害致死の罪に問われています。

また死亡に至った暴行以外にも、その約1か月半前から、唐田さんに拳で腹部を殴るなどの暴力を常習的に振るっていたとして、暴行の罪にも問われています。

暴行容疑で警察に逮捕された際、楠本被告は「暴行と呼ばれるようなことはしていません。じゃれあうように手でする程度の認識です」と供述していました。

 ▼金銭搾取や暴行を区職員が黙認 ファミレスでの生活保護費手渡しも…

 この事件をめぐっては、楠本被告と唐田さんがいずれも生活保護を受けていた中で、堺市中区役所の生活保護担当職員らが、楠本被告の暴行、さらには金銭搾取を“黙認”していたことが判明しています。

堺市の検証委員会の報告書によりますと、当時の係長やケースワーカーと唐田さんとの面談に、楠本被告が同席することが常態化。さらに被告は、“唐田さんの親族の了解を得て、自分がお金の管理をしている”“自分のスマートフォンを唐田さんが壊したり、唐田さんの就職活動を自分が手伝ったりしているので弁償が必要”として、「弁済金」を要求していたといいます。

しかし係長やケースワーカーは、そうした「弁済金」要求を止めることはありませんでした。2人がファミリーレストランで生活保護費を唐田さんに手渡し、唐田さんがその場で半分以上を楠本被告に手渡したケースもあったといいます。

さらにマンションや区役所面談室での被告の暴行を、係長やケースワーカーも度々目撃していたにもかかわらず、警察への通報や上司への相談は行いませんでした。

聞き取りに対し、係長は「楠本被告の恨みを買うのは避けたかった」、ケースワーカーは「恐怖心があった」などの旨を説明しています。

 ▼楠本被告への生活保護費不正支給も…当時の係長が略式命令・懲戒免職処分

 加えて係長らは、楠本被告に生活保護費を不正に支給していたことも明らかになっています。

2022年6月、楠本被告が“就労のために自動車運転免許の取得が必要”という名目で、生活保護制度の「技能修得費」を申請した際、係長は就労予定が架空であるおそれを認識しながら、被告に内定通知書を“偽造”させて申請を受理。ケースワーカーや上司ら3人も“追認”した結果、楠本被告には約26万円が支給されました。

 この不正支給をめぐり、係長だった男性が、背任の罪で罰金30万円の略式命令(堺簡裁)を受けました。堺市はこの男性を懲戒免職にしたほか、ケースワーカーら残る3人(背任容疑で書類送検も不起訴)にも、減給や停職の懲戒処分を下しています。

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